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パラリンピック特集企画第二弾 後編 パラカヌー高木裕太

中スポと明スポが協力し、様々なパラアスリートを取り上げていくパラリンピック特集企画。第二弾は男子パラカヌーの高木裕太選手です。2017年からパラカヌーを始めると、短期間で成長を遂げ、2018年には日本代表として海外のレースに参加するなど期待の選手です。そんな高木選手に過去の経験やパラリンピックにかける思いなどを熱く語っていただきました。

※記事は前編と後編に分かれており、今回は後編の記事となります。なお取材は11月にzoomにて行いました。

▲zoomにて行われた取材での高木選手

――2016年にパラカヌーを初めて、2017年には日本選手権で優勝していらっしゃいますが早く結果を出せた要因は何でしょうか。

自分自身が負けず嫌いであること、あとは周りのサポートのおかげですかね。カヌーは一人では練習できません。誰かに船を持ってきてもらわないと自分は船に乗ることができないので、サポートをしてくれている方にはとても感謝しています。一人でできないスポーツという点に対しては自分の中ではすごく苦い部分もありますが、サポートしていただいていたり、アドバイスをくださる方も多くいらっしゃるので、その人たちのおかげで速くなっているということを感じています。

 

――世界大会の中で感じたことはありますか。

海外との差はかなりあります。自分が始めるよりも何年も前から始めている選手も多くいるので、その中で結果を出すのは凄く難しい。カヌーは見ている分には簡単そうに見えますが、実際にやってみると深く、すごく難しいスポーツです。パドルを水中で早く動かす点一つとっても、ただ単に力をつけるだけではなく、パドルの角度・その入水の深さ・力の入れ方など意識すべき部分がたくさんあります。さらに自分の障がいのことも理解しながら体を動かしていかなくてはなりません。すごく頭も使うスポーツだと思っています。自分もこのように体を動かしていると思っていても、周りの方から見たらそうは動いていないということが続いていました。最近は自分の頭の中で思っている自分の体の動く範囲と客観的に見た実際に自分が動かしている範囲がマッチしだしてきたのでタイムも縮まりました。やっと自分の体のことを理解できてきたかなと思っています。

 

――今年度の世界大会はどうなりましたか。

世界大会が5月に開催予定でしたが、延期になったため、来年の5月に開催予定です。

 

――その大会を勝ち抜くとパラリンピックの出場が決まるのでしょうか。

そうですね。その大会での結果次第です。

 

――新型コロナウイルスの影響でパラリンピックの最終選考が延期になりましたが、どのようにモチベーションを保ちましたか。

多くの選手と比べて僕は競技を始めて浅いので、僕からしたら時間が延びたことはありがたいことでした。時間が足りず試せないことがあったり、あの時のまま挑んでいたら後悔することもあったと思います。今は延びた時間をうまく利用できていると感じています。僕にとってはこの期間がプラスに働きました。

 

――パラリンピックにかける思いを教えてください。

思いはかなり大きいです。今は競技だけでご飯も食べさせていただいていて、応援してくれる方々もいます。そういった方々に結果という形で恩返ししていきたいと思いますし、自分がやると決めたパラカヌーで結果を求めていくことは必然的なことなのでしっかりと勝っていきたいです。

 

――今の目標を教えてください。

まずは「パラリンピック出場」ということが目標になっています。来年の5月に出場可能な10カ国が決まります。今は6カ国6人の選手が内定しているので、残りの4枠に入れるように今は練習に取り組んでいます。

 

――現在は岐阜に拠点を置いているということですが、普段はどんな練習をされていますか。

基本的には朝から水上練習できるところに行って練習し、その後はウエイトトレーニングをしています。昼食後、また水上でトレーニングをしています。実際に船に乗っている時間は1時間〜2時間ほどですので、その時間の中で負荷をかけて追い込んでいます。

 

――食事面で気をつけていることはありますか。

パラカヌーを始めてから栄養面でもサポートしていただいていて、定期的に食事の写真を送って、フィードバックをいただいています。以前と比べて自炊の回数も増えて、栄養面では気を使うようになりました。

 

――このコロナ期間で練習は満足にできましたか。

3月の中旬までオーストラリアで練習していて、帰国後は2ヶ月程度自粛していました。水上は使えなかったので、エルゴという陸上でやるカヌーの機器があって、それを使って練習をしていました。もちろん水上が使えないので満足いく内容ではないですが、最低限のトレーニングは出来ていたかなと思っています。

 

――高木選手ご自身を一言で表してください。

「自由」ですね。結構周りから言われます。自分が自由に動き回ることが多くて、周りが合わせてくれています。(笑)

 

――パラスポーツの魅力とはどんなところですか。

健常の方がパラスポーツをやることで障害を持っている人との垣根を無くして、新たな接点が生まれるのがパラスポーツの魅力だと思いますね。自分は健常者の方にもパラスポーツを体験していただきたいです。車いすバスケなどは健常の選手もいますし、一つの新しいスポーツのようなかたちで考えて欲しいと思っています。また、同じ障害の人はいないので1人1人が自分にどう向き合って、スポーツに繋げているか。パラスポーツは同じに見えてそれぞれが全く異なるので1つ1つ個性が強いところも魅力だと思います。

〈高木裕太選手〉

インフィニオンテクノロジーズジャパン所属。元々野球をやっていたことから車椅子ソフトボールも経験。パラカヌーではKL1男子の種目で2017年の日本選手権優勝。その後日本代表として世界大会にも出場。現在は岐阜に拠点を置き、パラリンピック出場に向け練習に励む。

 

写真:つなひろワールド 記事:「中大スポーツ」新聞部