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「記者が捉えたベストゲーム」第3回 記事・辻市雄大

2年生記者8人が昨年度の取材の中でNo.1の試合を一人1試合ずつピックアップし、その試合を記者目線で振り返っていくこの企画。第3回は陸上競技部がシード権獲得を目指した箱根駅伝です

※以下学部学年役職などは昨年度の表記に準じています。

2020年1月2日、3日 陸上競技部
第96回東京箱根間往復大学駅伝競走 東京・大手町〜神奈川県・芦ノ湖

毎年多くの人が学生の走る姿に熱狂し、感動を覚える正月の風物詩、箱根駅伝。今年も沢山のスター選手が生まれ、日本中が歓喜の渦に包まれた。私は陸上競技部の担当として、この箱根駅伝を印象に残った試合として取り上げたい。

▲本紙の箱根駅伝特集号を持ち、笑顔を見せる舟津(左)と田母神(右)

中大は箱根駅伝で最多出場、最多優勝を誇る名門校。しかし近年はその栄光も影を潜め、昨年は立川予選会でギリギリの通過を果たすなど苦しい戦いを強いられていた。

そんな中でもチームを常に引っ張り、悲願のシード権獲得を目指してひたむきに走り続ける選手が印象に残った。田母神一喜主将(法4)である。田母神はこれまで中距離選手として結果を残していた学生トップランナー。しかし中大陸上部のため、そして悲願のシード権獲得のために箱根挑戦を決意した。

もちろん中距離から長距離への移行は容易なものではない。それでも人一倍の努力で着実にタイムを伸ばしていき、箱根駅伝の出走候補選手として名を連ねた。その姿はチームに大きな刺激を与えていた。

▲日体大記録会1万㍍にて自己ベストを大幅に更新し、喜びを爆発させる田母神

そして迎えた箱根駅伝当日。結果的に田母神は箱根を走ることは出来なかった。それでも、9区15㌔地点で大森太楽(文3)への給水という形で、約50㍍の箱根路を駆け抜けた。

大手町のゴール前ではアンカーで同級生の二井康介(文4)を、舟津彰馬駅伝主将(経4)と笑顔で迎えた。試合後、二井は「舟津と田母神がゴール地点にいたところはちょっと泣きそうになりました」とコメント。中大は総合12位で、目標としていたシード権獲得を逃してしまった。それでも田母神の存在は、中大の歴代総合タイム最速記録更新に大きく貢献した。

後日の取材で田母神は「仲間と共に何か1つの目標に向かって走ることは本当に貴重な経験」と箱根駅伝に全てを注いだ半年間を振り返り、一点の曇りもない晴れやかな表情を浮かべていた。

▲大手町のゴールでアンカー二井を迎える田母神(左)と舟津(右)

私たちはスポーツ観戦をする時、活躍した選手ばかりに目を向けがちになってしまう。しかしその裏ではどんなに努力しても報われず、メンバーに選ばれなかった選手が必ずいる。スポーツとは勝ち負けの世界であるがゆえ、時に非情で残酷である。

それでもこの箱根駅伝取材を通し、私は田母神を始め多くの部員たちの、チームを支え誰よりもシード権獲得を願う姿、そしてその想いを背負い襷を繋ぐ選手たちの姿に、スポーツの素晴らしさを教えて貰った。

今年は中大陸上部の創部100周年という節目の年。強力なルーキーも加入し、期待が高まる。田母神の強い情熱を受け継いだ後輩たちが、来年の箱根駅伝では悲願の9年ぶりシード権奪還、そして名門復活の狼煙を上げる姿に注目したい。

最後までお読みいただきありがとうございました。

記事:辻市雄大(文2) 写真:「中大スポーツ」新聞部