• Twitter
  • facebook
  • instagram

「新たな逆境を跳ね返す力をつけて、その力が優勝につながる」シード権逃すも10人の思いつなぐー第100回東京箱根間往復大学駅伝競走 復路

2024年1月3日 神奈川・芦ノ湖~東京・大手町

▲大手町へ帰ってきたアンカー柴田

「総合優勝」を掲げて1年間戦ってきた中大は往路を13位で終えた。「エントリーメンバーの16人中14人が体調を崩していた」(藤原監督)と実情が明らかになってから一夜。苦しい戦いの中で、復路はシード権獲得を狙い一斉スタートでの幕開けとなった。5人の選手の襷(たすき)はつながり大手町には13位でのフィニッシュとなった。個人としては浦田優斗(経3)が初の箱根路にして区間5位の好走。吉居駿恭(法2)は7区で中大記録を更新し区間賞を獲得した。

往路記事はこちら

(記事:小幡千尋、松本あゆみ、写真:井口縁、遠藤潤、大日方惠和、片岡芹菜、桑沢拓徒、琴寄由佳梨、志水恒太、髙橋若夏、高梨晃世、中島遥、日向野芯、日原優、二村沙羅、藤本佳野、山口周起、要明里沙)


◆大会結果◆

往路
①青学大 5時間18分14秒
②駒大 5時間20分52秒
③城西大 5時間21分31秒
⑬中大 5時間30分35秒

復路

①青学大 5時間23分12秒
②駒大 5時間27分09秒
③東洋大 5時間27分28秒
⑬中大 5時間31分23秒

総合
①青学大 10時間41分25秒 大会新
②駒大  10時間48分00秒
③城西大 10時間52分26秒
⑬中大 11時間01分58秒
6区 20.8㎞ 浦田優斗(経3) 58分37秒   区間5位
7区 21.3㎞ 吉居駿恭(法2)1時間02分27秒 区間1位=中大新記録
8区 21.4㎞ 阿部陽樹(文3)1時間08分54秒 区間22位
9区 23.1㎞ 白川陽大(文2)1時間11分14秒 区間16位
10区 23.0㎞ 柴田大地(文1)1時間10分11秒 区間9位

▲区間5位の好走を見せ、来年にも期待がかかる浦田

6区は今シーズン、度々山下りへの思いを口にしてきた浦田優斗(経3)が出走。「集団の先頭で行ってやろうという思いで」と強気でスタートし、同じく一斉スタートとなった法大の武田とともに前を追い、5㌔通過地点ではトップとの差を12分03秒に詰める快走を見せた。「下りは人に合わせるよりも自分のペースで行ってしまった方がリズムを作りやすいので、武田選手とはお互いに利用しながら引っ張り合って途中まで走ることができた」と話し、9㌔手前でも武田のスピードアップにくらいつき、二人で区間賞を狙う走りを繰り広げた。後半13㌔手前で武田とは間を離されるも、スピードを維持し見た目の順位では9位で7区へと襷(たすき)をつなぎ、結果は区間5位。「目標タイムのペース(57分45秒)から1分近く遅れてしまったが、前半はかなり勢いに乗っていけたので、体調をもっと整えたりだとか、スタミナ面の練習を多く取り入れていえば、来年は目標タイムを十分狙っていけると思う」と冷静に振り返った浦田。6区に対して「もう一度」と闘志を燃やし、「来年は区間賞を取る」と力強く目標を語った。

▲兄、吉居大和(法4)から給水をを受ける吉居駿

「重要区間となる」と藤原監督が話した7区は吉居駿恭(法2)が当日変更で出走。浦田から託された勢い溢れる襷(たすき)とともにスタート後から快調に飛ばし4人を抜き8㌔過ぎには見た目順位5位に浮上。「最初に突っ込んだのできつかったが、なんとか足を動かしてというところで粘り切った」と振り返った。後半に入っても勢いが止まることはなく、平塚中継所手前では東洋大をも交わし、見事な5人抜きで襷(たすき)をつないだ。往路からの流れを払しょくする快走で区間賞を獲得。7区の中大記録更新ともなり、まさにチームに光明を投ずる区間賞となった。

▲箱根では初めて平地区間を担った阿部

8区を任されたのは箱根では一年次から2年続けて5区を任された実力者の阿部陽樹(文3)。今年こそは「区間賞の走りを」と意気込んで臨んだ3年目の箱根であったが、区間22位の苦しい走りとなった。8㌔過ぎまでは東洋大の後ろにつき順位を維持したものの、遊行寺の坂に入り失速。「1月1日に発熱があったが、今日のコンディションはアップの時点では悪くなかった。だが、スタートして中盤くらいで咳が出て」と体は万全の状態ではなかったことを明かし、「本当に悔しいの一言」と気持ちを話した。しかし、不調ながらも険しい8区を耐え襷(たすき)をつないだ。今シーズンは春先の貧血で思うように練習を積めず、出雲、全日本も納得のいかない走りの中で、「箱根で借りを返す」と意気込んでいた阿部。今回の走りも重なり苦しいシーズンとなったことは間違いないが、「この借りをここでしっかり返せるように戻ってきたい」と話し、来シーズンを力強く見据えた。

▲初の三大駅伝出走となった白川

9区は当日変更でハーフの実力者でもあり、「(9区は)長い距離の練習を夏からずっと継続してきて自信がある」と話していた白川陽大(文2)が初の箱根路に臨んだ。「シードを狙わないといけない状況だったので最初からつっこんでという感じだった」と襷(たすき)を受け取ったときの心境を振り返る。シード権獲得まで17秒という状況のなか懸命に前を追うも、後半はペースを上げ切ることができず順位を一つ落とし総合13位で襷(たすき)リレー。「コンディション的には70%くらいだった。ここでチームを助けないといけないと思ったんですけど、助け切れずでした」と悔しながらにレースを振り返るも、1時間11分台に収め最長区間を走り切った。

▲「前半から自分のリズムで押していくレースをした」という柴田

10区のアンカーは夏を経て徐々に頭角を現したルーキー柴田大地(文1)が出走。「合宿あたりから状態が良くて、そのままいければ走れるかなというところで発熱してしまって。一度はもう諦めるというか、気持ちが切れてしまったタイミングもあったんですけど周りの方々のサポートもあり、覚悟を決めてスタートラインに立った」と出走前の状況を明かした。襷(たすき)を受け取って間もなく、20秒の差があった国士舘大を捉え集団でレースを進めた柴田。「チームの結果が決まるアンカーなので1つでも前の順位でゴールすることだけを考えて走った」と最後までペースを落とすことなく懸命に大手町まで襷(たすき)をつなぎ、区間9位と意地の走りで初の大学駅伝を終えた。「1年目で(箱根を)経験させてもらいましたし、今後もまずは走りでチームを引っ張っていけるようにしたい」とこの経験を糧に来季への更なる成長を誓う。

総合優勝を掲げて1年間練習に取り組んできた中央大学。一時は棄権も考えたという中でのレースは総合13位とシード権を逃す厳しい結果となったが、困難な状況の中でも10名の選手たちはチームの思いを胸に懸命に箱根路を駆け抜けた。

主将としてチームをけん引し、箱根でもチームを鼓舞する走りを見せた湯浅仁(経4)は「本当に自分たちは日本一の練習をしてきたという自信があったので、それだけを信じて」箱根に挑んだと話す。今大会を「運を味方につけることができず納得する結果では終われなかったですけど、4年間自分たちは一生懸命やってきたので前向きな方向で捉えています」と冷静に振り返り、「後輩たちもこの悔しさを持って次また戦ってくれると思うので、個人としてもチームとしてもこの1年間やってきたことを次につなげられるように頑張っていきたい」と率直な思いを口にした。また、「4年間本当に監督やコーチにお世話になり、4人の方々に感謝の気持ちがあるので卒業後競技を続ける中で恩返ししていけたら」とコーチ陣への思いも語った。

▲懸命に戦った10名の出走選手

また、山本亮コーチは大会前のチーム状況について「最初(体調不良者が)2、3人出始めたときは全員の頭に棄権というのがあって、その中から万全ではないけどなんとかスタートラインに立てそうだという、このチームの集大成を箱根の舞台で表現できそうだというところに向かっていくようになった」と明かしたうえで「(選手は)もう本当によくやってくれた。4年生が来て中大の強くなっていく流れが一段と加速したところはあるので彼らには申し訳ない気持ちもあるが、間違いなく今回の走りも含めて後輩たちに引き継がれると思うので彼らの思いの分も来年取り返してあげたい」と選手へ労いの言葉を送った。また、花田俊輔コーチも「最悪の状況のなかでは最善の結果だった。選手の、襷(たすき)を繋ごうという思いと、最大限できることをやろうと努力してくれた結果だと思うので全て受け入れていかないといけない」と覚悟を示し、「逆境を乗り越えてきた藤原体制なので、また新たな逆境を跳ね返す力をつけて、その力が優勝につながると思うので信じてやろうという気持ち」とCの再燃を誓う。

常に頼もしい背中を示し続けた4年生世代。彼らの存在はチームの再躍進に多大なる影響を与えたに違いない。そんな4年生の背中を追い求めてきた下級生たちが彼らの思いを胸に、次なる中央大学の新時代を担う。箱根路で味わったこの雪辱を果たすべく、そして中大駅伝の強さを証明すべく、チームは再び高みを目指して突き進む。

公式X(@chudaisports
Instagram(@chuspo_report