10月の箱根駅伝予選会では、過酷なコンディションに苦しみながらも6位に入り出場権を獲得。11月のMARCH対抗戦では多くの選手が自己ベストを更新し、優勝を果たした。この勢いを箱根路で発揮なるか。選手たちの思いを連載でお届けする。
最終回はいよいよ明日に迫った本選に向けた展望をお届けする。多くの期待を背負って臨んだ前回大会ではまさかの13位。直前期の体調不良に苦しみ、強豪校とは別の道を歩む結果となった。それでも彼らは貪欲な姿勢で競技と向き合い、ついに10000㍍では全大学で1番の平均タイムを保持するまでに。他を圧倒し下克上を起こせるか、「新紅の挑戦」最終章、いざ開幕。
全体展望
2025年が幕を開けた。明日東京大手町で217.1kmの熱戦の号砲が響き渡る。国学大が大学三大駅伝全てを制するか。青学大が「あいたいね大作戦」を発動し、二連覇するか。駒大が昨年獲れなかった頂を奪還するか。「箱根の魔物」を味方につけた大学が下克上を成し遂げるのか。
昨年を知るランナーが7人も残った青学大。当時アンカーを任されていた宇田川瞬矢(3年)は今回スターターに抜擢。またMARCH対抗戦で27分43秒33の青学大記録をマークした鶴川正也(4年)を駅伝一の景勝地3区へ登録。後半の上り坂と強風への対策がカギとなる。さらに黒田朝日(3年)、黒田然(1年)は兄弟揃ってのエントリー入り。陸上生活最後の大舞台に山道を選んだ若林宏樹(4年)の走りにも注目だ。2年連続総合優勝へ余念がない。
▲青学記録を更新した鶴川
昨年は三大駅伝2年連続三冠を目指し、惜しくも最後の頂を獲れなかった駒大。鈴木芽吹(トヨタ自動車)の抜けたエース区間には篠原倖太朗(4年)を起用。全日本大学駅伝では8区を走った山川拓馬(3年)とともに連続区間賞を達成し、表彰台圏内へとチームを押し上げた。彼らのゲームチェンジャー性が今回も見られるのか。さらにルーキーながら三大駅伝フルエントリーを叶えた桑田駿介(1年)と上尾ハーフで1時間2分5秒の好記録をマークした谷中晴(1年)の起爆力にも注目が集まる。「箱根の借りは箱根で返す」王座へ返り咲く準備は万全だ。
▲鈴木を継いでエース区間を任された篠原
今年の駅伝界を席巻している国学大。すでに昨年からの勢力図を大きく変貌させ、出雲・全日本で二冠を達成。エース平林清澄(4年)は2区に登録され、区間3位の走りで8人抜きと好走した昨年を超えた走りを見せるか注目だ。また全日本で見事なスタートを見せた嘉数純平(3年)と区間賞を成し遂げた野中恒亨(2年)は箱根デビュー戦を飾れるのか。虎視眈々(こしたんたん)と王座を狙う。
▲主将としてエースとしてチームをけん引する平林
エース+中間層の相乗効果が要
▲昨年の雪辱を晴らし、シード圏内を狙う中大
昨年の箱根駅伝では直前期に蔓延(まんえん)した風邪の影響もあり、13位と落ち込んでしまった中大。駒大、青学大との三つ巴を予想されていただけに「魔物」からの仕打ちは手痛かった。
あれから1年。チームは新体制として箱根のリベンジを図り、10月の箱根予選会では6位通過で本戦への切符を掴んだ。そして12月29日の区間エントリーではエース級の選手と中間層の選手、ルーキーを織り交ぜた布陣を公開した。
すでにエース区間の2区には溜池一太(文3)を据えており、他大のエースらとのデッドヒートが期待される。また直後の3区にはMARCH対抗戦で10000㍍の自己ベストを27分台まで更新した本間颯(経2)が控えており、溜池で作られた流れを持続させる役割を担うと予想される。
昨年終盤9区で順位を下げてしまった白川陽大(文3)は4区で登録された。「試合展開が大きく変わる区間だと思ってるので、そこで自分が決めたい」と思いを口にしており、前回のリベンジに燃えている。
山の区間にはトラックでの結果だけではなく、ロードの適性や経験値を要求される。豊富な実績によるペース配分に長けた園木大斗(法4)や98、99回大会で出走した阿部陽樹(文4)のような経験者が担うと予想されるが、10月のレガシーハーフにて1時間3分34秒の好記録でロード適性をアピールした田原琥太郎(文1)も視野に入ってくる。
6区は前回驚異の山下りで上位に食い込んだ浦田優斗(経4)が再抜擢。「57分台の区間賞を狙う」という目標を述べた。また8区には全日本でシード圏内での粘走を見せた佐藤大介(文1)を起用。夏の男鹿駅伝での活躍を足がかりに急成長した佐藤大が「憧れていた大会」と語る箱根でどんな走りをしてくれるのか期待したい。
また控え選手の起用も注目されている。予選会ではチーム2位、また初の全日本で区間6位と好調さを発揮した岡田開成(法1)。その安定した走りは前後半どこへ配置しても結果を残すオールマイティプレイヤーとして活躍が期待できる。さらに吉居駿恭(法3)をどの区間に配置するのかも気になるところ。1区で他を先行する走りを見せるのか、または後半、昨年自身が区間賞を獲得した7区でスパートを担うのか。彼らの起用にも目が離せない。
エース級の選手へ委ねる走りではなく、「誰がどの区間を走るのか、最後まで絞れない」と言われるほど強固となっている中間層の選手たちがともに好走する相乗効果が中大に下克上をもたらすだろう。
「自分を熱くさせてくれるような、このためだったらすべてをささげて努力できるもの」
そう箱根への思いを語った佐野拓実主将(経4)。再起を図るところから始まり、時に試練に当たる場面もあった。しかしシーズン後半多くの選手が自己ベストを更新し、MARCH対抗戦では初優勝を飾るなど、上り調子に成績を向上させてきた。箱根のために努力してきた1年、その答え合わせは明日から始まる217.1㌔の道のりで果たされる。
捲土重来。彼ら無くしてこの言葉を表現できる者はいない。若武者の健闘に幸多からんことを。
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(構成:大日方惠和)
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