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【オフシーズン企画~縁の下の力持ち特集~】最終回・大塚豪(アナライザー)

2023年、春季リーグは5位、秋季リーグは3位と優勝には届かなかった中大野球部。ドラフト会議で指名を受けた西舘勇陽(法4=花巻東)と石田裕太郎(経4=静清)をはじめとする強力な投手陣が卒業する中、櫻井亨佑(商3=習志野)新主将のもとに新たな戦いがスタートしている。今回はそんな選手たちを陰からサポートするスタッフの方々の声を全4回に渡ってお届けする。最終回は大塚豪(文2=沼津東)。アナライザーとして日々、データを用いて選手たちにアドバイスを行う大塚。23年の春季リーグではエース西舘の癖を見つけ改善させるなどチームに貢献してきた。しかし大塚は選手出身のアナライザー。彼が中大硬式野球部初のアナライザーになるまでの道のり、そしてその「探求心」はどこから生まれているのか迫っていった。(取材・構成=髙梨晃世)

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──野球をはじめたきっかけは
「父親が野球をやっていて地元の少年野球のチームに入ったのがきっかけです。小学校2年生、7歳のときですね。父親とキャッチボールしてました」

──主に今までどんなポジションを
「基本内野手です。内野は全部やりましたね」

──高校野球の思い出
「そんな強い高校じゃなかったので甲子園とかは遠い話でしたけど2年の時から試合には出始めて、ベスト8、静岡大会で秋準々決勝まで行けたっていうのが1番の思い出かなと」

 ▲キャプテンを務めた高校時代の大塚(右)(写真は本人提供)

──高校時代つらかったのは?
「自分3年生の時にキャプテンだったんですけど、そのときに監督と練習のことだったりで合わなかった、うまくいかなかったことが辛いなって思いましたね」

▲「文武同道」を胸に高校時代を過ごした大塚(左)(写真は本人提供)

──自分が違うと思ったら監督にでも言えるタイプ?
「そうですね。自分が正しいって思ったことはあまり曲げないタイプですね」

──夏の大会終わってから勉強?
「そうですね。夏の大会終わってから勉強をしっかりやったって感じです」

──大学でも野球を続けようと思ったのは
「高校野球の監督が早稲田出身の人で、早稲田の練習会とか慶應の練習会とか夏の合宿で東大に止まったり、色々大学野球に関わる機会を下さったのでその時に大学野球やってみたいなと思いました」

──その際に他の大学の野球部を見て感じたこと
「行った大学は強くて伝統のあるチームで規律正しくて、ただ野球が上手い人たちじゃないなと思ったのを覚えてます」

──中大野球部に入って感じたこと
「入ってくる人の半分以上が甲子園を経験しているような選手ばかりでレベルの高さだったり、野球に対して絶対に負けないっていうプライドみたいなものを感じました」

──入ってすぐ印象に残った先輩は
「やっぱりプロに行った北村(恵吾=令5卒・現東京ヤクルトスワローズ)さんと森下(翔太=令5年卒・現阪神タイガース)さんはバッティングとか、西舘さんの投げるボールも速かったですし、石井(巧・文4=作新学院)さんはすごい守備が上手いなっていう風に思いました」

──アナライザーになったきっかけは、いつ
「アナライザーになったのは1年の春のリーグ戦終わるぐらい、入れ替え戦のときで、リーグ戦で日大であと1勝すれば入れ替え戦回避っていうのが4試合続いて1回も勝てないで入れ替え戦まで行ったんですけど、そのときに日大のデータ班が結構優秀で中大のピッチャーの癖を見抜いてたっていう話を聞いて、自分も中大で選手としてやっていくのはかなり厳しいなとちょうど実感しているときで、中大にはデータ班もアナライザーもいなかったので自分が中大に貢献できるというか、あと4年間責任持って努めれるのは多分データ班だなという風に思って、春のリーグ戦が終わってから本格的にアナライザーっていう形になりました」

──大塚さんが中大にアナライザーを作った?
「そうですね。監督から『選手としては厳しい』とずっと言われていて、春のリーグ戦が終わるとリーグ戦オフっていうのがあって家に一回帰れるんですけど、その時に家族に『やっぱり選手として花を咲かせるのは厳しい』という話をして、親とも話して、そういう裏方の道だったり、アナライザーとかでチームに貢献できるのであれば、『自分のことを活かせる道を選びな』と言われて、監督にアナライザーになると言わせてもらいました」

──監督にはなんと言われた?
「ずっと裏方とかもやって欲しいと思っていたという風に言われて。自分が最初に監督に将来は高校野球の顧問になりたいと言っていて、監督に『高校野球の顧問やるならいい経験になるし裏方とかやるのはいいことだぞ』という話をされたような気がします」

──大塚さんは将来高校野球の監督になりたい?
「今はちょっと迷っていて。教職は一応取ってはいるんですけど、社会人野球の野球を都市対抗とか何試合か見に行って、大学野球の選手でも一握りしか行けないプロや社会人の世界にも入ってみたいなと最近思い始めていて。プロにも社会人にもアナライザーの仕事はあるので、それを続けるのが自分にとって有意義になるのかなっていう風に思っているところです」

──具体的にどんなことをしているのか
「例えばブルペンでピッチャーがピッチングするときに『ラプソード』っていう機械があるんですけどラプソードをブルペンに置くと球速だったり回転数だったりを測れる機械で、データに関わる本を読んで自分で勉強してラプソードで出た数字を基にピッチャーにアドバイスをしたり、試合の結果をまとめてリーグ戦期間中だったら相手バッターの苦手な球種だったり、コースだったり打球方向とかで配球考えたり、ポジショニング考えたり相手ピッチャーの動作の癖を見たりっていう感じです。動画撮ってって頼まれたら選手の動画撮ったり練習の手伝いしたりそんな仕事をしています」

──ラプソードはいつから中大に?
「2年前からあって、2年前導入されたときはまだデータ班がなかったので使う機会がなかったんですけど自分がアナライザーになってから本格的に毎日使い始めたっていう感じです」

──リーグ戦のときはどこで試合を見てる?
「自分はバックネット裏で試合を見る感じです。パソコン持ってデータを打ち込みながら」

──プレーをする選手を見て自分もまたプレーしたい気持ちが沸いたりは
「プレーする選手を見て羨ましいなとかかっこいいなって思う時はいっぱいあるんですけど、最初からマネージャーとかアナライザーじゃなくて一回選手をやって自分でここで選手としてやっていくのは厳しいっていう風に思えてアナライザーになったので、確かに神宮でプレーするの羨ましいって思いますけど、自分がもう一度大学野球の中でプレーしようとは思わないですね」

──春のリーグで西舘選手の癖に気づいたのは
「結構重要な問題だったので他に何人か選手呼んでビデオ1時間ぐらい見てみんなで『やっぱここだよね』って感じで気づいたという感じです」

──どういう風に西舘さんに伝えたのか
「1回投手コーチと監督に伝えて動画見てもらって『本当だ』となったのでそれを直接西舘さんに伝えたという形です」

──その結果秋で西舘さんが活躍したが
「今年の秋は西舘さんも調子良かったんですけど、キャッチャーが野呂田(漸・文2=秋田中央)に代わって、野呂田が結構ビデオとか見るの熱心な奴で、今自分が野呂田と同じ部屋なんですけど、一緒に夜テレビで遅くなるまでビデオ見て相手バッターの苦手な球種だったり苦手なコースとか、配球一緒に考えたりして、1試合目終わったらビデオ見て2試合目挑むみたいな、そういう生活をリーグ戦中ずっとしていて、西舘さんのボールがすごいのは、もちろんなんですけどキャッチャーの野呂田の頑張りもあったと思います」

──アナライザーとしての楽しさ、やりがい
「相手バッターの苦手な球種だったりコースをキャッチャーと話して、その配球通りにピッチャーが投げて三振だったり、ピンチで抑えたした時はアナライザーやっててチームに貢献できて嬉しいなという気持ちになります」

──大変なこと
「リーグ戦は中大以外の試合も見ないとなので中大が1試合目やって勝っても負けても神宮でその後の試合見続けないといけないので、それは大変かなぁと思います。
あとは春はもしかしたら入れ替え戦いっていたっていう状況だったじゃないですか。なんで2部の専修とかの動画もずっとリーグ戦中は見ていて、選手には入れ替え戦は意識させたくないので2部のチームの動画を見てる自分の姿は見せないようにしてました。そんぐらいですかね練習とかは大変なこととかはないので」

──選手にバレないように2部の試合を見てた?
「動画をもらえるので練習試合の動画とかを結構交換し合ったりするんですよ。携帯でみたり、自分の部屋で見たり、パソコンで見たりしてたって感じですね」

──普段の練習ではなにを
「ブルペンでラプソード使ってみたり選手の動画撮ったり、練習の手伝いしたりっていうのがメインですね。あとはバッターのスイングスピードだったり球速測ったりっていうのをやってます」

──何か気づいて選手に伝える?
「そうですね。癖とか伝えたり、あと最近ピッチャーが投げてる球の『回転数が上がってきてるよ!』とか、『球速最近落ちてきてるけど肩肘痛めてるの?』とかそういう会話をしたりします」

──前キャプテンの中前(祐也・法4=浦和学院)選手と同部屋でしたが
「中前さん2つ上なんですけど、入ったときからずっと練習相手だったり仲良くしてもらっていたので尊敬というかどっちかというと友達感覚で、帰ってきて『マリカーやろーぜ』って感じですごい過ごしやすかったです」

──参考にしているデータの本は
「慶應大学の助監督の林卓史さんという方がいてそ、の人が出した本で『スピンレート革命』っていう本があって、自分がアナライザーになって1番最初に読んだ本がこの本で、今まで野球をやっていて感覚でしかわからないものが最近は機械を通して数字で見ることができるので、今までデータとか詳しくなくて0からのスタートだったので、この本が自分のアナライザーとしての原点かなという風に思います」

  ▲大塚のアナライザーとしての原点と語る本(写真は本人提供)

──この本にはどんなことが書かれている?
「ラプソードの使い方、ラプソードを見た上でピッチャーにどんな風に換言するかっていうのが書いてあって、こういうボールを投げるピッチャーにはこういう球種を覚えさせるといいとか、こういうボールを投げるピッチャーはプレートのどっち側を踏んだ方がいいとか、データと根拠があって、この本が自分の原点だと思います」

──この本を選んだわけは
「自分がデータ班になるっていうので1からのスタートでなんでもとりあえず本を読もうと思って『野球 データ』とか『野球 ラプソード』とかで探して1番最初にヒットしたので買ったような気がします」

──今も本を読んでいる?
「今は高校生なら誰でも140キロ投げれるという、『革新的投球パフォーマンス』っていう高島誠さんが出した本なんですけどこれはデータというよりかは体の使い方だったり、ウエイトトレーニングだったりストレッチだったり、ピッチャーのパフォーマンスを上げるための方で、これを少し読んで、自分も体を実験台にしてやったりしてみて、いいなと思ったのは選手に伝えたり、そんなことをやってます」

▲現在の大塚の愛読書(写真は本人提供)

──常に本を読むようにしてる?
「いつもというわけではないんですけど、今はいろんな情報があって、社会人野球やプロ野球でアナライザーをやりたいなという風にも考えているので、とりあえずいろんな情報が欲しいなっていうので本を少しずつ読むようにしてるという感じです」

──教職を取られてるという話でしたが野球部との両立は
「朝練があって大体5時に起きてグラウンド行って教職って4、5限が多いので夜の7時ぐらいに5限が終わって寮に帰って夜ご飯食べて、色々洗濯とか、課題とか次の日の準備とかしてたら11時ぐらいに寝てまた朝5時に起きてみたいな、ずっとそういう生活なので、選手みたいに動いていないですけど、睡眠時間は多少短くなってて疲れる時はありますけど、それでも全然大丈夫です。高校の時は自分1時間半ぐらいかけて通ってたのでそこら辺の体力は全然、あまり苦にはならないです」

──高校のときから学業と野球を両立させてた?
「そうですね。高校の監督から勉強と野球は一緒で、できないことをできるようにするという。できることをやるのは簡単だけど、できないことにしっかり目を向けてできるようになるまで一生懸命やるというのは勉強も野球も一緒だと言われていて、監督は文武両道じゃなくて『文武同道』って言ってて野球も勉強も一緒だよという」

──それは今も大切にしている言葉?
「そうですね。ずっと高校時代から言われてきた言葉なので今も大切にしてる言葉です」

──昨シーズンを振り返って中大の課題は見えてきたか
「やっぱりバッティングかなと思います。4年生のピッチャーが良かったので来年の投手力が心配なことはありますけど、やっぱりバッティング、ここぞと言う場面で一本が出ないで、中大は残塁数が1位だったので。ランナーがいるプレッシャーがかかった場面で1本出せる選手が増えないと、来年のリーグ戦厳しい戦いになりそうだと思っているので、チャンスでの1本出せるバッティングっていうのが課題かなと言う風に思っています」

──大塚さんが期待しているバッターは
「もちろん、みんなに期待はしてるんですけど(笑い) 、、同じ部屋っていうのもあるんですけど野呂田には頑張ってほしいかなと思いますね」

──収穫はありましたか
「相手バッターの苦手なとこをついた配球だったりっていうのを事前に準備しておくことでチーム防御率も1点台に抑えられたのでそれは収穫かなと言う風に思いますね」

──今後のチームの優勝に必要なものは
「次のエースが登場することかなと言う風に思います。第一先発が西舘さん、第二先発が(石田)裕太郎さんっていう風に決まっていたんですけど、来年からはいないので、第一先発がコイツで第二先発がコイツだよねって言えるぐらいのピッチャーが出てくるのが課題かなと思います」

──現段階は?
「今なら三奈木(亜星・商2=浦和学院)と岩城(颯空・経2=富山商業)かなと思います。岩城は左で148くらい投げて体もどんどんデカくなってきて、ゆくゆくは150キロ投げる左ピッチャーになると思うので。三奈木はずっと抑えで、今年からも活躍してたんですけど、これからは先発だったり、ロングリリーフだったり、長いイニング投げてくれるようになるんじゃないかなと思ってます」

──この2選手が次のエースになるのに必要なものは
「正直ピッチング自体はすごくいいのであとは登板経験だけかなと」

──他にまだ試合出てないような選手でこれから来るな!って言う選手はいますか
「1年の平山(颯士・文1=水戸商業)っていう選手がいて、春はベンチ入っていたんですけど、秋はベンチ入っていなくて、体の線は細いんですけど球は強くて、結構曲がりのいいスライダーと(石田)裕太郎さんから教えてもらったシンカーを持っていて、これから伸びてくるのは1年の平山かなと思います」

──来年の1年生はどうですか
「期待できると思います。練習会にもきていて、来年の1年生はかなり豊作だと言われているので、下からどんどん突き上げてもらって、下級生が活躍できるチームになっていければいいなと思います」

▲アナライザーとしてチームを支えていく

──チームをこうやって支えていきたい!
「今はリーグ戦の時にキャッチャーと話し合うとか、ピッチャーのプルペン入ってアドバイスするぐらいなんですけど、もっとチーム全体に関わっていって、『大塚がそうやって言うんだったらそうだよな』っていう風に、自分が数字とかを基にアドバイスしたことが選手が納得できるようなアナライザーになれたらいいなと思います」

◎1月10日発行の中スポ1月号 連載「神宮で逢いましょう」で大塚さんを取り上げます!お楽しみに!

◇大塚 豪(おおつか・ごう)◇
学部学科:文学部・人文社会学科教育学専攻
出身高校:沼津東

Twitter(@chudaisports
Instagram(@chuspo_report