いよいよ明日、全日本大学駅伝予選会が行われる。会場は先月行われた関東インカレと同じ相模原ギオンスタジアムだ。
全日本大学駅伝とは、出雲・全日本・箱根といった大学三大駅伝の一つに数えられ、毎年11月初旬に愛知県名古屋市から三重県の伊勢神宮までの総距離106.8kmを8区間に渡って襷で繋ぐ大会であり、通称「伊勢路」と呼ばれている。
正月の日本の風物詩となっている箱根駅伝は関東学生陸上競技連盟に加盟する大学しか参加することができない。そのため、全国の地区からの代表校が出場する全日本大学駅伝は正式な大学駅伝日本一を決める大会であるが、この事実を知らない人も多い。中大が最後に伊勢路に出場したのは2012年と7年も昔にさかのぼる。中大7年振りの伊勢路出場に向けて、今回は明日の予選会の展望を徹底的に分析していきたい。▲相模原で歓喜の輪が広がることを願う
今回の予選会では参加20校のうち伊勢路への本切符を掴み取るのは上位5校と狭き門だ。例年の予選会では上位8校が本戦に進むことができた。しかし去年から全日本のシード枠が6校から8校へ、さらに箱根で全日本シード圏外の上位2校が全日本シード推薦枠として出場権を得るため、今年の予選会通過校は5校のみとなった。
全日本予選会は各校から8名が2名ずつ4組に分かれて1万㍍を走り、その8名の合計タイムで競う。例年後半の組になるにつれて各校のエースが出場するケースが多いが、どの組にどの選手を配置させるかは各大学の戦略によって異なる。全日本予選は箱根予選とは異なり一人でも棄権をするとその大学は失格となってしまうという危険をはらんでいる。
近年でいえば、昨年中大が1組目で関口康平前主将(卒1)が脱水症状のため1組目のラスト1周を手前にして無念の途中棄権をし、中大の伊勢路出場は早々に潰えてしまった。去年のエントリーメンバー上位8選手の平均タイムは中大がトップだっただけに、部全体としても悔しさが残った予選会となった。3年前には3組終了時点で予選通過圏内にいた神奈川大が、最終組で当時2年生の山藤篤司(現トヨタ自動車)が脱水症状の影響でラスト400mで棄権してしまい、あと一歩のところで本戦出場を逃すといった波乱もあった。この全日本予選会開催時期は暑さとの戦いでもあり、最後の最後まで何が起こるか分からない厳しい戦いである。
予選会突破の一つの指標となる参加校の1万㍍上位8人の平均タイムを比較していきたい。
▲上位5校が出場を決める
表から分かるように平均タイムだけを見れば予選会突破は厳しいのが現実だ。しかし当日の天候やレース展開、選手のコンディションで順位は目まぐるしく変わる。その証拠に去年の予選会での上位8人の1万㍍の平均タイムランキングと大会結果を見ると一目瞭然だ。平均タイムでは11位と予選通過圏外であった法政大学が1位で予選通過をしたのに対して、持ちタイム1位の中大だけでなく4位の創価大、6位の拓殖大も予選会で涙を飲んだ。
▲去年の予選会の前評判と結果 紫で囲まれた大学は1万㍍上位8人の平均タイムランキングで本戦出場圏内だったが落ちた大学、オレンジで囲まれた大学は前評判を覆して本戦切符を掴み取った大学
中大が伊勢路に出場するためには、出走する全員が大崩れすることなく、バランス良く且つ随所で組上位で選手たちがフィニッシュする必要がある。
昨年は堀尾謙介(現トヨタ自動車)、中山顕(現Honda)といった1万メートル28分台をベストタイムに持つダブルエースがいたが、今年の中大には大エースと呼べる存在がいないのが現状だ。チーム内で28分台のタイムを持つ舟津彰馬駅伝主将(経4)は来週行われる日本選手権の1500mに出場するため今回は出場しない。二井康介(文4)も28分台のタイムを持つが、状態が思うように上がらずエントリー漏れとなった。さらには前回の予選会1組目で好走した安永直斗(経4)は昨年の箱根予選会後から不調にあえぎこちらもエントリー漏れ。箱根前までには調子を取り戻し復活を遂げて欲しいばかりだ。4年生のエントリーは岩佐快斗(経4)のみとなった。▲シーズン前半は1500mで勝負する舟津
▲昨年の予選会1組目で好走する安永
そのため今回エントリーされた13人のエントリーメンバーには28分台のタイムを持つ選手がいない。しかし三浦拓朗(商2)は昨年の学連記録挑戦会で、レーンをはみ出し失格となってしまったものの、28分台のタイムで走った。また先月の関東インカレでも5000mで各校のエースたちと互角に渡り合い8位入賞を決めるなど今回の予選会で重要な役割を担う一人であると言ってよい。▲関東インカレで力走する三浦
またラストのスピードが武器であり、ここ最近のチーム内で一番勢いに乗っている森凪也(経2)が関東インカレで見せたような躍動感溢れる走りを見せれば、伊勢路出場もグッと近くはずだ。5000m14分フラットのタイムを持つ池田勘汰(商3)やロードで安定したチカラを見せている矢野郁人(商3)、川崎新太郎(経3)らが確実に走ればチームも勢いに乗るに違いない。前回悔しい結果に終わった関東インカレ後に「最終組で走れる準備をしていきたい」と語っていた池田の復調具合がチームの浮沈に関わるだろう。▲予選会前に気合を入れて頭を丸めた池田。チームを引っ張る池田の走りに注目だ
学年でのエントリーを見ると4年生1人、3年生8人、2年生3人、1年生1人と圧倒的に3年生が多い。4年生で唯一エントリーの岩佐快斗(経4)が上級生の意地を見せることができるか。ルーキーで唯一のエントリーとなった助川拓海(経1)が新たな風を吹かせるか。箱根でも結果を残した3年生世代がどこまでチームを引っ張ることができるかが予選会突破の大きな鍵となるだろう。
予選会出場校で頭一つ抜けた大学として明大と早大が挙げられる。明大は唯一の1万㍍平均タイムが28分台であり、日本人学生ランナーでは唯一の27分台のタイムを持つ阿部弘輝(4)がいる。先月の関東インカレでは決して本調子ではなかったが、今回の予選会ではしっかり調子を合わせて確実に結果を残すはずだ。▲学生長距離界をけん引する阿部(明大)
早大も太田智樹(4)や中谷雄飛(2)など実力者が揃う。総合力といった点では各選手安定した強さを兼ね備える。▲安定した強さを見せる中谷(早大)
全日本予選会の特色として留学生ランナーの力は大きくチームの順位に影響する。前回も3組終了時点で予選通過圏外だった日大だが、最終組でワンブィが組トップの走りを見せ日大を伊勢路に導いた。今回は8人の留学生ランナーが出走予定。中大の選手たちはどう彼らに食らいついていけるかが勝負の分かれ目でもある。最終組の4組はハイレベルな争いが展開されるだろう。
伊勢路出場に向けた号砲が明日鳴る。去年の全日本予選の借りは今年の全日本予選で返す。7年ぶりの出場へ選手たちの熱い戦いがいよいよ始まる。
▲全日本予選エントリーメンバー