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【OBからエール】ブリヂストンサイクル今村駿介氏、インカレトラック大会優勝の後輩へ祝福とパリ五輪挑戦への強い思い/インタビュー

現在ブリヂストンサイクルにて活躍を続ける今村駿介氏がインタビューに応じた。自身の現状、パリ五輪に挑むこれからの2年10ヶ月、そしてインカレで躍動した後輩への称賛とエールを送った。(聞き手、構成:辻市雄大)

 

▲腕を組む今村氏〈写真提供=ブリヂストンサイクル〉

創部66年の長い歴史で初めて成し遂げたあの快挙は、まだ記憶に新しい。2019年のインカレ総合優勝。今村はチームの主力として4㌔チームパーシュートで学連新記録をたたき出した。この記録は破られていない。中大自転車競技部のレジェンドであり、現在はブリヂストンサイクルで日本の自転車競技界の未来を背負う選手として期待されている今村氏。今回インカレでのトラック大会総合優勝を成し遂げた後輩たちの活躍は耳に届いていた。

 

ーー後輩たちの活躍を聞いてどうですか。

今村氏 高校の頃の成績でメンバーを毎年選んでいるので、基本的には実力がある選手が揃っています。少数の人数の中で優勝を目指していく上で強いメンバーが成績を出して、それが優勝って形になっていると思うので、他の大学の力を考えても、上位には行くだろうなとは思っていました。特にトラックでは。

 

ーー4年生は今村さんが中大在籍時にも交流があったと思いますが。

今村氏 やっぱりインカレっていうのは大学の中で1番大きい大会で、OBとかも含めて総力を挙げて勝ちにいく試合でありますし、4年間の中で先輩の姿を見て育っていくというところがあるので、最後の4年生として一番上級生で、集大成じゃないですけど勝ちたいって気持ちがどれだけ強い下級生がいても勝てませんし、気持ちの持ちようが違うのかなと思います。

 

ーーただロードでは大きな課題が残る内容になりました。

今村氏 そうですね。やっぱりトラックメインの方に力が偏りがちっていうのはあったので、僕が在学していた時もそうだったんですけど、ロードはもちろんトレーニングをしてはいるんですけど、やっぱり他の大学はロードが強くて。その分トラックで差をつけないといけないっていうのがあるので。しっかりロードレースでも加点して戦うっていうのは、インカレでは大事だなって毎年感じます。

 

ーー中大は人数が少ない分トラックとロードを両立しないといけません。ただ今村さんはプロ入り後も両立しています。難しさはありますか。

今村氏 はじめの頃は難しさを感じていたのですが、トレーニングをする上でトラックのトレーニングがロードに生かせるし、ロードの持久力的な部分もトラックに生かせるので。両立というよりは基本的に大学生の場合は、競技場とか競輪場に入って練習する機会がなかなかないので、ロードがメインになってトレーニングしていくのですけど、難しさはもしかしたら大学生を感じているのかもしれないですけど、基本的に中距離選手とかロードとかはロードでのトレーニングがメインになってくる。トラック選手だからロードが苦手じゃなくて、両方同じように苦手意識っていうのはなくしていくべきだなと感じています。

▲2018年全日本学生選手権チーム・ロード・タイムトライアル大会で本紙の撮影に応える今村氏(前列左)と山本(前列右)

トラックとロード両方の練習が大事だと語る。そんな今村は中大在校時代の寮での思い出が忘れられないという。

 

――大学時代に楽しかった事は何ですか。

今村氏 やっぱり寮に住んでいたので、寮のドアを開けると目の前で他の部員が料理作っていたり、雑談していたりっていうスペースがあって、そういう空間がすごい大学の頃は良かった。毎日やっぱり他の部員と接したりご飯食べたりするので、それは仲間意識というか部員は特に少人数なので仲の良さっていうのはあったかなと思います。

 

ーー仲の良さが中大の良さと語る選手は多いですが今村選手もそうだと思いますか。

今村氏 そうですね。やっぱり過ごしやすい環境、空間っていうのが大事だと思うので、当時は後輩に接しやすいような環境にしているつもりでしたし、先輩後輩って言う最低限の上下関係の中で、ある程度作り上げた人間関係というものがうまい具合にできているのかなと思います。

 

そんな今村を慕い、中大、そしてブリヂストンに加入し背中を追う選手がいる。山本哲央(経4)だ。

 

ーー山本選手はトラックで2冠されましたけど直属の先輩としても嬉しい部分はありますか。

今村氏 そうですね。一緒にトレーニングしたりすることもありますし、レース会場とかレースにいく時に色々話しをすることはあります。今年プロツアー(群馬CSCロードレース5月大会)の方で一勝したっていうのは、彼自身にも自信にはなっていると思います。大学にいる頃から力はあることは分かっていたのですけど、大きい大会で一緒に走ったりする事によって自信がついたり、あと僕がトラックメインでやってたってのもあるので、自分のことを目指して(トラックを)一緒にやってきてくれたっていうのも言っていたので、僕も負けられないところはありました。山本選手自身も追いつきたいと思って戦っていると思うので、やっぱり僕が先にブリヂストンに入ったっていうのも良かったと思いますし、一緒に過ごしてく中でブリヂストンに入って、どういうことができてどういう風に生きるかっていうのを示せたかなと思います。学生の頃からブリヂストンの方に入ってレースができるっていうのはインカレとか大学の方にもプラスに働くし、選手自身にとってもプラスに働くかなと思います。

 

ーー山本選手は今村さんの背中を見て学んでいると仰っていました。

今村氏 大学4年の時は特に一緒に団体追い抜きでインカレを勝ったんですけど、どうしても団体種目っていうのはインカレの中で1番重きを置かれると思っています。そこに関しては紙に、色々トレーニングの仕方だったり、団抜きの意識っていうのを全員に配ったりしてっていうことをやったり。僕も大学にいることが多かった訳では無いので、色々質問だったりを受けた時は全員で勝てるようにって意識して教えたりはしていたんですけど、大学の頃はそこまで一緒にトレーニングはできなくて。ただやっぱり一緒にいることがあれば強さも分かっているし、僕も負けられないっていうのはあるので、一緒に相乗効果というか、良かったかなと思います。

 

師弟関係でありながらもお互いライバルとして刺激し合える存在。それはこれから先も続いていきそうだ。

ただそんな山本も来春には卒業し、新体制としてまた再びインカレで王座奪回を目指さなければならない。そんな後輩たちに今村はエールを送った。

 

ーー今後の中大にOBから激励をお願いします。

今村氏 下級生は4年生がどういう風にチームを作り上げて、トラック総合優勝を成し遂げたっていうのを見てきたと思う。やり方も分かっていると思うし、チーム作りも分かっていると思うので、その辺を参考にしながら、同じようにするのもいいですけど、別の形で新しいものを取り入れたりしてどんどんどんどん7種目含めて強化して欲しい。人数が少ない分全員でカバーし合えるようなチーム作りをして来年以降もっともっと連覇を繋げて行けるように頑張って欲しいなと思います。

▲オンライン取材でCマークを作り撮影に応じる今村氏

 

後輩の活躍にOBとして刺激を受ける部分もある。

 

ーー上半期を振り返るとどんなシーズンでしたか。

今村氏 東京五輪に選ばれなくて、でも代表選手とトレーニングする機会を与えてもらったので、同じように五輪までの過程を味わうことができたのは、パリ大会に向けていい思い出になったと思います。ロードレースにもトラックにも参加して、自分の走力が去年に比べて上がってきているのも感じてきてはいるので、9月末はロード戦があるのでその中で優勝できるように。

 

ーー直近の群馬CSCロードレース9月大会で目指すのはもちろん優勝ですか。

今村氏 そうですね。自分でも狙っていきたいですし、チームメイトの勝てる展開っていうのを作っていきたい。誰が勝負しても勝てるチームに今年はなっているので、どんな展開でも勝てるように自分も含めて積極的にレースしていきたいなと思います。

 

東京五輪で代表落選も学ぶことが多かった上半期。これから進むべき道筋はもう見えている。

 

ーー五輪が最大の目標。

今村氏 そうですね。やっぱり高校の時にジュニアの大会(UCI世界選手権大会ジュニア・トラックのポイントレース)で勝てて、そこから五輪でも勝ちたいって思いました。五輪が1番大きい大会と思っているので、そこでメダルを取れるように強化していきたいです。

 

ーーやはりジュニアの世界大会が自身の転換期ですか。

今村氏 そうですね。ただ同期に出場していた選手たちっていうのは、今世界のトップチームで戦っているので悔しいなって思いが大きいです。

 

世界への挑戦。強い意志の背景には自身の経験だけでなく、今夏列島を湧かせたライバルの存在もあった。

 

ーー梶原悠未選手が東京五輪のオムニアムで銀メダルを取られましたが、見ていてどうでしたか。

今村氏 僕がジュニア大会で勝った時に彼女は2位で、そこからの悔しさっていうのもあって今回の銀メダルがあると思います。同期ですし5年前6年前から一緒にナショナルチームでやってきて、練習の取り組み方っていうのにも自分との違いがあったりとか、積み重ねてきたものがあの銀メダルだったと思うのでこれからも参考にはしていきたい。同級生としてもちろん男女っていう面で全然違うんですけど、悔しいので負けないように頑張りたいと思います。

 

ーーパリ五輪に向けて2年10ヶ月。今までで最も短い周期で五輪が来ます。

今村氏 そうですね。毎年毎年強くなるために強化していくという点では、常に右肩上がりに上がっていく必要があるので、4年を一塊っていうスパンを僕はそこまで重く考えてない。2年後には五輪に向けたポイント争いっていうのが始まり、世界の中でも出場できる種目数っていうのが限られてくるので、まずは国内でトップになって代表に選ばれるっていうところがまず第一。今やっていることを色々積み重ねて行けたらなと思います。

 

ーー最後に今後の目標、意気込みをお願いします。

今村氏 目標はパリ五輪のオムニアムでメダルを取るっていうのが1番なので、それに向けて毎年毎年しっかり強化して、世界でしっかりと戦っていけるようにトレーニングを積み重ねていきたいと思います。

 

飽くなき向上心と終わりなき夢を忘れずに日々自転車を漕ぎ続ける。中大やブリヂストンサイクルで経験した全ては3年後、夢の舞台に繋がる轍になると信じて。

 

◆今村駿介(いまむら しゅんすけ)

平成10年2月14日、福岡県出身。2015年ジュニア世界選手権自転車競技大会、日本人中距離で初めての金メダル。その後中大を経てブリヂストンサイクルに加入。2019年はJプロツアーロードレースでプロ初勝利。2020年チームパーシュートで日本新記録更新。

 

9月21日発行の9月号1面では第76回全日本大学対抗選手権自転車競技大会を取り上げております。今村氏のコメントも掲載!