10月の箱根駅伝予選会では、過酷なコンディションに苦しみながらも6位に入り出場権を獲得。11月のMARCH対抗戦では多くの選手が自己ベストを更新し、優勝を果たした。この勢いを箱根路で発揮なるか。選手たちの思いを連載でお届けする。
第9回は藤原正和監督。チーム目標である『箱根駅伝総合7位』へ向けて、エースの成長・チームの底上げを図ってきた。「佐野世代」の集大成となる箱根駅伝へ向けてどのようにチームを作ってきたのか、今シーズンを振り返っていただきました。(取材は12月1日に行いました。)
—今シーズンを振り返って
上半期は想定通りの強化ができたかなというところではあるんですけど、下半期、駅伝シーズンに入ってやっぱり主力の足並みがなかなかそろわなくて予選会を一年生5人、若手中心で戦ってその中ではよくやってくれたと思うんですけど、全日本のつまずきが今年の4年生を象徴しているかなというところです。チームの立て直しという意味でこの1か月やってきて、先週のMARCH対抗戦とか今日の奥多摩駅伝とかハーフTTもそうですけど、箱根に向けてやってやるぞという雰囲気づくりはできてきているのかなというところですかね
▲一年間チームを引っ張った4年生
—新体制になってからの印象
力のない世代と言われている分、非常に輪を作ってチームをまとめようとしてくれていたので、そこはいい意味で上半期はうまく働いていたのかなと、1・2年生、3年生も含めてのびのびとできていて全体的にもうまく回ったのかなと思いますね。逆に、結果が出た組織ってすごく一体感があったとか、輪ができていたとか言うんですけど、「輪から作りにいくと、ろくなこと起こんないぞ」という話を常々していたんですけど、そこがちょっと理解できなかった。もっと言うと4年生が締めるべきところをできなかったり、指摘するところを指摘できなくて自分たちが甘い方に流れてしまったのが駅伝シーズンだったので11月からはそこを徹底して、こちら主導で動かしていって立て直しをさせていったのと、佐野(拓実・経4)キャプテン、髙沼(一颯・経4)あたりには厳しいことを言ってですね、チームの立て直しというところに尽力させていますけども、それが残り一か月どう出るかっていうところですかね
—昨年の代との違いは
学生スポーツなので今年の4年生の引っ張り方、去年は湯浅の世代の引っ張り方があったので、それに対して去年が正解とかはないと思うんですよね。去年は去年の引っ張り方、まとめ方。今年は今年なりのやり方があるのでそこに対して結果が自分たちで示せないなら、やっぱりまとまりを作って泥臭いことを自分たちが率先してやるということをやらないといけないんですけど、やっぱり今の若い子ですよね、泥臭いことをやりたがらないのでそこをやらずに見栄え良くというか、スタイルよくやってしまうというかね、そこは違うっていう話をしていますかね
—昨年の流れとの違いは影響したか
いや、それは特になかったですかね。何年か前にも同じ流れやっていますし、そこに適応させられなかったのは半分僕らの責任だし、半分は彼らの甘さっていうのは11月の振り返りの時には伝えているので、本来なら泥臭い駅伝ができるチームだったのをできなかったというのが今回の全日本(大学駅伝)の一番の問題だったので、そこを徹底してやっているところなのでちょっとやればああやってタイムとともにチーム全体の勢いがつけれるわけですから「それをじゃあ駅伝でやれよ(笑)」という話なので、そこがうちのチームの甘いところですよね
▲MARCH対抗戦では本間颯(経2)㊧、吉居駿恭(法3)が従来の中大記録を更新
—MARCH対抗戦は練習の流れの中でもタイムが出た
本当に地力はあるんだよというのを自分たちで証明してほしかったところなので、そこをきっちりと出してくれたのは一つ彼らにとって大きな自信になったかと思いますけど、それ以上にやっぱりトラック走れるけどロードは走れないんじゃないかみたいなところが彼らの中にはあったので、今日はあえて同じように練習しながら「これも同じ、体重いけどちゃんとやるんだよ」というところでやれたので、最終的には泥臭いことをできてからだぞ、ということが伝わっているんじゃないかなと思いますね。調子が良いというよりも本来あるべき力をちゃんと出してくれているという、ただそれだけです
—「中間層」の底上げは
一年間かけて予選会を戦うチームで、上位では通過できなかったですけど、そういう目指していたチームスタイルには近づいていったのかなと思っています
—4年生の全体の雰囲気をどのように感じているか
まあ一言でいうと「甘い」ですかね(笑)、流されやすい。僕らの競技って生活している人間が走って、走っている人間が競技中心の生活を送るべきですから、そこはやはり一緒ですよね。走りの面は甘い、スキが多いし、生活面も。どっちも甘さがありますけど、力がない分ね、優しさとか下級生までよく声を掛けられるっていういい部分もあるので、いい部分を生かしつつ最後自分たちの代でこのくらいの花を咲かせたいんだっていうのを示していけるように残りの一か月になってほしいなっていうところですね
—4年生が入学したときの想定から思い通りにいったか
かなり苦戦する代にはなるだろうなっていうところはあって、そういう意味では阿部・山平・浦田を中心にね東海林もね駅伝をしっかり走ってくれていますし、思っていたよりも戦力上は戦える戦力になってくれたのかなと。ただやっぱり、どちらかというとね後手に回った。どうしてもコロナでスカウトができなかった世代なのでそれでも志してうちに入ってきてくれた選手たちなので何とかしてあげたいなというところもありつつ、この四年で考えるともう一段上の成長させてあげられたんじゃなかったのかなというところもありますかね
—溜池一太(文3)と吉居の今季の活躍
駅伝シーズンは二人とも後手に回ってしまって、二人のエースのチームですからそういう意味ではそこがうまく稼働できなかったことが駅伝シーズンの苦戦にはつながっていますけど、とは言えトラックでは溜池も駿恭もエースらしい走りを出してきてくれているので、再三言っていますけど粘り強さみたいな、泥臭さをこの二か月で身に付けようとしている段階なので、まだそういう意味では折り返しというかね残り一か月ありますがもう一段注入して中大のエースってこういうものだよっていうところを発揮できるような残りの期間にしてあげたいなと。あとはやっぱりこの学年層が厚いので、白川(陽大・文3)・吉中(祐太・文3)を中心にですね伊東夢翔(経3)と佐藤宏亮(文3)がいますのでかなり充実した戦力の下ですね、その溜池・駿恭に追い付け追い越せで白川・吉中あたりがやってくれているので来年のこの世代が核になっていくんじゃないかなという風に思いますね
—白川はハーフに強いイメージがあるが
白川はやっぱりハーフディスタンスで安心感はありますよね。駅伝で使ってもきっちりと仕事してくれるなというのもありますかね。ただ一回のレースでの消耗が激しいというか、練習できてしまう分、一回ちょっと調子を崩すとなかなか上がってこないのでそこが今の彼の課題って言ったらいいんですかね、そこのタフさみたいなところを一生懸命磨いていってもらっているので、去年に比べるとだいぶタフにやってくれていますけど、もう一段4年生の代では年間通して稼働できるようにやっていってもらいたいというところですかね
—本間の活躍ぶり
夏に実業団の合宿から帰ってきて、というか実業団合宿の途中で足痛めて帰ってきて、怪我はすぐ治ったんですけど次は体調不良で走れなくてという期間があって、早々に8月の終わりくらいには予選会はもうないという話をして、もう一回走り込みっていう話で9月にみっちりと大石とマンツーマンでやってきてですね、その期間が彼にとって良かったのかグッと上がってきたという印象ですかね、やっぱりあの子もなんでもスマートにこなそうとやる子なので。最後にもがいてくるような場面がなかなか出せない子ですから、そうじゃない、というところを結構大石に注入してもらったので、ちょっと全日本はね後半遅れてしまいましたけど今回のMARCH対抗戦と今日のハーフもさらっとあれくらいでこれているので一段力は上がったなっていう印象はありますかね。十分に下地は作ってこれているので、もう一段階練習を積めばかなり箱根デビュー、面白い走りになるんじゃないかなとと思います
—1年生の印象
今の一年生世代ってお互いに良い意味でライバル視してて負けたくないっていう競り合いをずっと出してきている世代なので、それが非常にいいかなと。5月から今年の予選会をイメージしてGW中に合宿を入れていたんですけど、そこからより競い合う意識みたいなのがガチっとはまってきたので、これはちょっと続けていきたいなというところと、競い合う意識は本来2・3・4年生もあるはずなので2年生もそういう意識出てきていて、いいかなというところですかね。面白いチームになっていくかなと思いますね。やっぱり彼ら上級生にも食らいついていく姿多いですし、下級生だからといって負けちゃいけないっていうところはかなり持っているので今年上位10人の10000㍍が28分15秒とかですけど多分彼らが4年生なるころには27分台とかに乗ってこないと勝てないような状況になっているのでそういうところを意識して作っているところはありますかね
▲箱根駅伝予選会では一年生から5名が出走した
—1年生のハーフ実戦を見て
やっぱり練習と実践が違うぞっていうところは体感してくれて、粘りをやらないといけないっていうところを理解しながら11月の練習をしっかりやってくれたので、10000もそりゃ走れるよなっていう形できています。我々は人数がそんなに取れない大学というか、各学年9名から10名っていう大学なので、もう明確に、まずは怪我をしない体作りっていうところを4年間のテーマに置いて、トレーニングをした後にjogを入れるようにして、jogもしっかりと入れるような形で段階を踏んで強化を踏んでいるので、そのメソッドというかやり方が今の1年生非常にマッチしてきたというか、我々もある程度やり方をこういう風にすればいいなっていうところもあったので、重大なセットみたいなところが1つ確立できつつあるのかなっていう意味ではよかったかなと思います
—中大は往路志望が多い
もちろん良いことです。極論言うと、2区希望の選手が10名ぐらいいる選手になっていかないと、 やっぱり優勝っていうのは狙えないと思っているので。そういう意味では往路を希望する選手が多いっていうのはいいことですよね
—箱根駅伝で往路に主力を置くというのは流れを作るということか
間違いなくそうですね。1区から4区でしっかりと流れを作って優勝狙うチームは5区で 前で勝負という形ですし、シード権狙うんだったら1区から4区で中間部分で持っていって5区でジャンプアップするのか、逆に上位で1区から4区流れて5区は我慢の区間にするとか。やっぱり山がある分、変動が起きやすい駅伝でもあるので、そういう意味では1区から4区の流れは非常に重要になりますよね
—今年の注目
やっぱり1年生は勢い良いですから。岡田開成(法1)と佐藤大介(文1)の2人は結構、あと田原(琥太郎・文1)かな。この3人は結構ゲームチェンジャーになり得る存在になっていくんじゃないのかなと思うので、この3人は特に期待しています
—監督のプレッシャーは
いや、逆に全日本あれだけ大コケしたので、今年はもう下剋上だっていう形で学生たちとはやっていますけどね。 これがお前たちの力じゃないっていうのを自分らで証明していくんだっていうことをずっと話をしていて、そこはあの子たちもわかってくれていて、僕らはこんなもんじゃないっていうのはあんまりね、表には出さないですけど、しっかりと秘めて走ってきてくれてるのであの子たちらしいレースをさせてあげたいなっていうのが1番ですね
—往路の理想は
結構そうだな。なんて言ったらいいんだろう。幅が大きいと思うんですよね。上振れした時は本当に 3強にちゃんとついていっていて、山で勝負できていると思うし、1区から4区のどこかでつまずいてしまうと、おそらくシード争いになると思うので、 山で挽回をという展開になるでしょうし。その辺は12月の練習次第かなっていうところではあるんですけど、いずれにしろ7番っていうところを軸に、気軽にっていう言い方は変かもしれないですけど、上位チャレンジっていうよりも、まずは自分たちの力を発揮するんだっていう、そこに注力させていきたくて、そのための12月にしていきたいなっていうところですかね。本当に強い選手を揃えることができるかと、やっぱり1年間ここに向けて作ってきてるかどうかっていうのもすごく大事ですし、 山をどれだけ揃えられるかっていうところで大きく変動する駅伝なので、そこは結構 1年かけてやってきた部分でもあるので、ここに関しては僕らも楽しみにしているところではあります
—4年生への期待
やっぱり学生スポーツは4年生。これも常々言っているので、自分たちの代がどういう形でこのチームに爪痕を残せるか、貢献できるかっていうところをやっぱり走る子だけじゃなくてね、それ以外の周りの子たちが参加をしてあげられるような4年生だと思っているので、もう一段、冒頭に言いましたけど、甘さに流されるところを捨てて自分たちに厳しくやってほしいなと、とにかくそこですね
(取材、構成:遠藤潤)
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