新型コロナウイルス感染拡大に伴い、明かりが消えたスポーツ界。大学スポーツも開催予定だった各大会の中止や延期といった影響を受けています。4年間というタイムリミットがある大学スポーツ。このような出口が見えない状況の中、大学生アスリートたちはどのような思いで1日1日を過ごしているのか。中スポを通して、この1年を戦う選手・スタッフの皆さんの声をお届けできればと思います。第17回は陸上競技部長距離ブロック。主将の池田勘汰選手(商4)と副将の畝拓夢選手(法4)にお話をお伺いしました。
※この取材は5月上旬にZOOMにて行われたものです
▲3月上旬に行われた学内記録会で走る選手たち
――今の部の状況はいかがですか
池田 「大学側からも活動自粛を言い渡されましたし、3月末にタイミング的な問題もあり、各自で帰省するか寮に残るのかの判断を任されました。今は約半数が実家に帰省し、半数は寮に残っているといった形です。基本的に自粛期間となっているので、世間的に外出して練習するのはよろしくないです。そのため、まとまって練習することはせずに各自がそれぞれ個人で走る状況です」
――練習で意識していることはありますか
畝 「各自練習でも、それぞれ時間をずらしたり、朝など人の少ない時間帯を中心にやるようにしています。またやり方ではないんですけど、考え方として僕達のチームのコンセプトが『他人に興味を持つ』というものがあるので、自分のやった練習をみんなに共有して、みんなの状況を確認し合うというのをやっています」
――選手間のコミュニケーションの一環としてミーティングなどは行っているのですか
池田 「できるだけバラバラの所にいても、お互いが全く分からないような状況になるんじゃなくて、少しでもお互いのことが分かるようにzoomやライン電話などを使ってミーティングも週一回最低やるようにしています。それ以外でもメンタルトレーナーの方が来られた時に学年でミーティングを行ったりしています」
――現状苦労してることは何かありますか
畝 「試合がないので、モチベーションの維持、なんのために練習しているのかっていうのが曖昧になっている選手がでてきてもおかしくないと思います。正直、自粛期間が始まるまでチーム的にも上手くいってる部分も多かったので、今の状況がもったいないなと思います。でも、より自分で練習する意図を考えたり、それこそ今までは監督コーチに指示してもらってやるって感じだったんですけど、自分で目的に合わせてどういう練習が必要かっていうのを考えるきっかけになったのは、考える力がつくって意味では良かったのかなと前向きに捉えています」
――監督から何か指示は出ていますか
池田 「監督はずっと(寮に)います。強制は出来ないので各自練習といった感じですが、大体朝、午前、午後と各自の選手が練習する時間帯には玄関にいて、出入りする選手とはコミュニケーションをとったりしてます」
――今までみんなで練習することが当たり前だったと思います。今は各自に任されている状況ですが、みんなで走ることに関して何か思うことはありますか
畝 「単純に寂しいという想いはあります。個人練習になったぶん責任が重くなりました。みんなで走れることが当たり前じゃないんだなと」
池田 「ポイント練習も一人で行っていて、紙にタイムとか書いたり練習のサポートを今までは女子マネージャーがやっていてくれていました。そういった、女子マネジャーがやってくれていたことに対するありがたさなどを今実感しています」
――関カレが延期となり、全日本大学駅伝の予選会がどうなるかなど、今後の試合日程の見通しが付いていない状況です。そこに対してモチベーションを維持するために心がけていることなどはありますか?
池田 「箱根の中止は決まってないので、チームとしては箱根3位という目標を掲げてる以上、その目標は消えないと思うのでチームで(目標達成のために)向かっていく、個人でもそれに対する目標っていうのはぶらさずに、ひとつのモチベーションとしてやってます」
畝 「僕は試合がないことは残念ですが、ある意味色んなことに挑戦できるチャンスだと思ったりしています。僕自身怪我した時以外はモチベーションが下がったりしないので、今は走れてるので元気にやってます(笑)」
▲今年の箱根駅伝5区に出走し、ゴール時には悔しさをにじませた畝。今年はその悔しさを晴らしたい
――池田主将は主将として意識していることはありますか
池田 「うまくいかない面や不安も多々ありますが、コロナじゃないと感じられないこともあると思います。箱根で結果を残すことに向けて今の期間が無駄じゃないことを証明できるように、自分の役割としてはチームをまとめたりとか、当たり前のことを当たり前にやって周りに姿勢を見せることを意識しています」
――最後にチームを代表して、お二人の今後の意気込みを教えて下さい
畝 「試合がなくてもやることは変わりません。自分の目標に向かってやるのは当たり前ですが、副主将として、チームメイトとコミュニケーションをとって他のメンバーが競技に集中できるように池田をサポートしていきたいと思います」
池田 「3年間箱根を走ってきて、最後の年にこんなことになるとは思っていませんでした。実際無くなったらショックですが、箱根がなくなったからといって自分の陸上が終わるわけではありません。ただ箱根を一つのステップとして強くなりという思いがあり、箱根という大きい舞台で活躍することが今後の競技人生に関わってくるので、なくならないで欲しいというのが素直な想いです。箱根があると信じて練習し続けます。学生として競技をするのは今年が最後なので苦しい状況ですが、チーム一丸となって協力してやっていきたいです」
▲今年のチームスローガンを掲げる池田主将。2月下旬、田母神一喜元主将(阿見AC)と池田主将の新旧主将対談を行った際に撮影した一枚です
今回オンライン取材という形で、部を代表して池田主将と畝副将から正直な想いを語っていただきました。苦しい状況下のなか、ご協力いただきありがとうございました。再びチーム全員で、笑顔で走れる状況が来ることを切に願っています。
記事・写真:「中大スポーツ」新聞部