「準備の徹底」を今夏のテーマに強化練習に励む長距離ブロック。今年は全日本大学駅伝への出場権を獲得し、全日本8位・箱根5位の目標を掲げている。
夏の強化期間も終盤に差し掛かる中、藤原正和駅伝監督と選手5名に上半期の振り返り、強化練習の現状、駅伝シーズンに向けての抱負を取材した。(聞き手、構成、写真:若林拓実)
▲取材当日のポイント練習は25kmの距離走
藤原正和駅伝監督
──今夏のチームテーマは?
昨年が「ハードリカバリー」をテーマに強化をしました。これを踏まえて今年は、「準備の徹底」をテーマにやってきました。練習に入る前の準備はもちろんですが、去年に引き継ぎリカバリーの意味を理解して準備のところをきっちりとやっていく。練習前、jog前のトレーニングをすることで、走りの効率化を目指すところも含め、全てにおいて準備を徹底していくという意味を込めて「準備の徹底」が今年のメインテーマです。
──夏の強化練習も終盤となりました。チームの状態はいかがですか?
今年は箱根駅伝の予選会と全日本の間が2週間、個人で10000mの記録を狙うレースが11月は入ってきます。1ヶ月間で2本ないし3本大事なレースが入ってきます。そのため、夏は強化期間を長めにとって秋口以降しっかりと体を維持できるようなベース作りを徹底してやってきました。おおむねやりたい強化は進んだと思っています。特に1年生と2年生の強化が進んだと思っています。2、3年生に故障者が出ているので、そこが非常にもったいないところではありますが、箱根の本戦に向けて立て直していきたいと思います。4年生が終盤になり1、2回ポイント練習を休んだ選手もいましたが、おおむね4年生も練習を積めました。やはり箱根の予選会は4年生が引っ張っていかないと厳しい戦いになると思いますので、4年生たちの引っ張りに期待をしたいです。
──今夏は強化期間を大きく3つに分けています。それぞれ強化の狙いは何でしょうか?
1次強化練習、個人強化期間、2次強化練習という流れです。1次強化練習の方はまず脚を作るということですね。アップダウンを使って足腰のベースを作ることがメインの目的です。それを達成できたのち、少し解散期間をはさんで個人強化期間に入りました。その期間は、実業団の練習に行ったり、帰省先で単独の練習をして、自分で押していく力を養いたいというのが目的です。2次強化練習はもう一度みんなで集まってどれくらい力がついているか確認する意味で練習の強度を上げてスピードに徐々に移行していくような段階に入っています。
──強化練習で例年と変化させたところはありますか?
例年よりも強化期間は1週間~10日延ばしています。走行距離は劇的に増えたということはありません。ただ、全体的に質感は上げてきているのでその辺りは変化をつけていると思います。
──強化期間中は一日あたり走行距離はどのくらいですか?
ならして30kmぐらいですかね。
──距離走は多くて何kmぐらい走りますか?
基本30kmぐらいまでしかやっていないです。一昨年は35kmや40kmを夏にやっていましたが、身につく練習というと30kmくらいだと感じているので、30kmまでにしています。ペースは徐々に上げるようにしています。
──トラックシーズンの結果をどのように捉えていますか?
去年、ある程度持ちタイムが良かったのですが、「本番力」、「強さ」がないことが箱根で出てしまいました。今年はタイムを狙うレースにたくさん出ていくわけではなく、冠大会をしっかり戦うことを重視しています。さらに、体が重い状態でレースに出場し、自分の本当の実力はどのくらいなのかをつかんで、持ちタイムが先行することがないように上半期は取り組んできました。その中でホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)に出場したメンバーは基本2連戦することが目的でした。1本目で13分台に突入した選手がいたことは良かったですが、2本目まとめられた選手が遠征したメンバーの半分くらいしかいなかったので、まだまだ本当の強さは備わっていないですね。
──疲労を残した中で、どれだけ高いパフォーマンスができるかということでしょうか?
そうですね。あとは1本目でピーキングがうまくいって2本目そのピークがどれくらい維持できるのか、移動した中でどのようなケアをしなければいけないのかなど自分と向き合うために良い時間だったと思います。
──夏の強化期間で特に成長した選手、秋以降の活躍に期待したい選手はいますか?
2年生の中野(翔太・法2)が吉居(大和・法2)と遜色ないくらい良い練習ができていますので、そこは非常に期待をしています。あとは1年生が特に阿部(陽樹・文1)を筆頭に東海林(宏一・経1)、山平(怜生・法1)、佐野(拓実・経1)、矢萩(一揮・法1)が非常に良い練習を継続してできています。ハーフマラソン対応もできているのでその辺りは新しい力の伸びに期待しています。
──全日本大学駅伝の選考会後、大エースの育成が課題と言っておられました。その辺りは夏の強化期間を通じてどのような手応えをつかんでいますか?
吉居と中野が2枚看板になりそうな手応えがありますので、それを秋に証明したいですね。
──他に大エース候補はいますか?
大エースと呼べるかとなるとその二人だと思っています。他はエース格の働きをできるように夏の強化を頑張らせたいところです。
──中間層の底上げについては夏の強化期間でどのような手応えをつかんでいますか?
新しい戦力でいうと、1年生が非常に伸びてきたことは間違いないので、いま名前上げた5人(阿部、東海林、山平、佐野、矢萩)が非常に期待が持てると思っています。あとは関東インカレのハーフマラソンを戦ってくれた倉田(健太・商4)、湯浅(仁・経2)、田井野(悠介・文3)にも地力がもう一段上がったなと思っています。中間層のレベルアップはその者たちの力が上がってきたことで全体のボリュームアップができていると感じています。
──駅伝シーズンに向けて目標をお願いします。
全日本は区間変更もあり中大としては初めてのような状態です。箱根は近年、悔しい結果が続いているのでリベンジをしたいという思いはみんな強いです。今年の学生たちは目標を全日本8位と箱根5位に置いていますので、それを上回れるようにマネジメントをやっていきたいと思います。
▲練習では常に先頭を走りチームをけん引する井上主将
井上大輝主将(法4)
──ホクレン以降、状態はいかがですか?
4年間で一番順調に走れていると思います。自分自身、強度の高い練習を継続するというスタミナ面に課題があったのですが、そういった部分もなくなりました。合宿も一回も離れることなく終えられているので、4年間で一番順調だと感じています。
──トラックシーズンを振り返ってどのように感じていますか?
全日本選考会の10000mに出場することが最大のターゲットだったので、悔しさもありました。ただ、同じ日にあった5000mで自己ベストも出せたので、(全日本選考会に)出ていても、出ていなくても、自分の成長や強さをアピールすることはできたと思うので、そのような面では良かったと思います。
──練習では常に先頭を走っています。
そうですね。キャプテンという立場でやっていますが、結果的に自分にも良い効果を生んでいる感じです。前に行く要因としては4年生だからです。
──主将として心掛けていることはありますか?
チームのコミュニケーションは一番大事にしているところなので、学年に関わらず各学年とコミュニケーションとったり、雰囲気づくりは最低限心掛けています。
──主将として普段の生活で意識しているところはありますか?
競技者として走る時以外も誰に見られてもいいように手本になるような行動をしようとしています。どんな場面を見られても4年生としてキャプテンとして、しっかりやっているところは見せたいと思っています。
──チーム全体として状態はいかがですか?
良いところ、悪いところ半々と捉えています。チームの一体感や練習で離れる人がいなくなったところなど、チームの底上げやタフさは出てきたのですが、主力の故障もあるので半々というところです。
──主将から見て、この夏で最も成長した選手、秋以降に期待したい選手はいますか?
3年生の田井野は強いなと思うので、この夏から秋にかけては大会でも結果を出してくるだろうと思います。
──駅伝シーズンに向けて目標をお願いします。
個人としては一つ一つの大会、一日一日が最後になるので、スタートラインに晴れ晴れと立って、自分の持っている力を出し切れるようなシーズンにしたいと思っています。
チームとしても、他大学の成績や調子などは気になりますが、これまでの箱根などを見ても力を出しきれずに終わってしまう場面があります。日頃から強豪校を意識しながら、最後は自分たちの力を出し切りたいと思っています。
三浦拓朗(商4)
──夏の強化練習も終盤となりましたが、状態はいかがですか?
あまり自分の状態がつかめていないですが、やっと終盤にかけて調子を戻してこれている状態です。この後も強化期間はあるのでそこでしっかり夏の分を取り返していきたいです。
──夏の序盤のほうは故障をされていたのですか?
そうですね。2次強化練習に入ったぐらいからです。全日本予選までは調子は良かったのですが、疲労などもあって故障してしまいました。
──ホクレンの5000mで13分41秒05を出しました。そちらの結果はどのように捉えていますか?
まだまだ行けるところだったとは思いますが、一つ大きな結果を出すことができたので、下半期に向けてもそれを自信につなげていきたいです。
──駅伝シーズンに向けて目標をお願いします。
やはり駅伝は団体で戦うものですが、自分が個人で結果を出さないとつながらないところだと思うので、自分が学年の中でもトップを取る勢いでレースに挑んで行きたいです。
▲中野は夏の強化練習を順調に消化。シード権奪還のキーマンとなりそうだ
中野翔太(法2)
── ホクレン以降、状態はいかがですか?
いい状態で来ています。けがもなく、練習は積めているので良いと思います。
──ホクレンでは5000mで13分台に突入し、高3以来の自己ベストになりました。
とりあえず13分台が出たことは一つ上のステージに上がったというか、戦うレベルが上がってきていると感じています。ただ、まだ50秒台なのでこれから40秒台、30秒台と記録は伸ばしていけると思っているので、まだまだこれからだなという思いもあります。
──7月の中大記録会では3000mで中大記録を樹立しました。狙って出したタイムでしたか?
8分切りは狙っていましたが、中大記録は知りませんでした。走り終わって中大記録と言われて初めて知ったので、中大記録を狙ったというよりも8分切りを狙った結果、中大記録も出たという感覚です。
──大学2年目で成長を感じている部分はどこですか?
練習をしっかり消化できるようになったところです。去年はケガを何回もしてしまって練習を積めなかったので、そこは成長できていると思います。
──けがを防ぐために取り組んだことはありますか?
負担のかからないような動きをするためのトレーニングをたくさん行ってきました。
──箱根駅伝関連の雑誌では、一番力を発揮できる区間に5区を選んでいます。その気持ちに変化はありますか?
上りはみんなよりも得意な方だと思うので、上りがあるような区間で勝負をしたいと思っています。
──この夏、山対策は行いましたか?
みんなと同じく山を上る練習をする時もありますし、上りをメインでやる人たちで上りのトレーニングを行うこともあります。
──駅伝シーズンに向けて目標をお願いします
駅伝は個人的に好きなので、そこでしっかり結果を出し区間賞を狙って順位を一つでも上げられるような走りをしたいと思っています。
吉居大和(法2)
──夏の強化練習も終盤となりましたが、状態はいかがですか?
今年の夏は、去年以上に練習を積むことができて、量、質ともに昨年以上で、故障もなく継続できているので、非常に良い手応えがあります。
──この夏で成長を感じた部分はどこですか?
距離走の距離を伸ばしてもしっかり走ることができるという面では、少しずつ量を増やして、さらにこの合宿で量を増やすことができていると思います。
──距離走はどれぐらいまで距離を伸ばしていますか?
25kmをやることが多かったのですが、今は30kmまでできるようになって、回数も昨年よりも増えていると思います。
──トラックシーズンの結果はどのように捉えていますか?
思い描いていた結果ではなかったですが、自分としては新しい発見もあって、次につながるトラックシーズンになったと思います。
──具体的に新たな発見とは何ですか?
昨シーズンは、走れば記録が出るような感覚だったのですが、上のレベルにあがるにつれて、わずかにタイムを上げることや、少し前に行くことのその一歩が大きいことに気づきました。そのためには一回一回の練習をどれだけ大切にできるのかが重要になると感じました。
──実業団トップクラスの選手が集う日本選手権に出場して得たことはありますか?
人生で2回目の日本選手権だったのですが、勝ち続けることだったり、活躍し続けることはそんなに簡単なことではないと感じました。昨年3位に入れたのですが、もう一度3位入賞、さらに上に行くためにはもっと努力が必要だと感じました。
──下半期は駅伝の方にシフトしていく予定ですか?
そうですね。基本的には予選会だったり駅伝をメインに考えています。
──駅伝シーズンに向けて目標をお願いします。
故障せずにチームのエースとして、チームを引っ張れるような走りをすることが自分の目標です。駅伝と予選会はしっかり狙っていきたいと思います。
──予選会の前には全カレ(日本学生陸上競技対校選手権大会)があります。
昨年優勝することができて、今年も同じ種目でエントリーしました。上半期うまくいかなかった5000mではあるのですが、駅伝シーズンに流れを持っていくためにも、しっかり準備してレースに臨みたいと思っています。
▲中距離種目で全カレに出場するメンバーは別メニューで調整
谷澤竜弥(経4)
──夏の強化期間も終盤になりましたが、状態はいかがですか?
自分は一週間後に全カレの1500mに選んでいただいたので、みんなと同じ流れではないですが、この10日間の強化期間もしっかり走り込めています。疲労はありますがこの10日間は自分なりに充実したものにできたと思っています。
──トラックシーズンの結果をどのように捉えていますか?
4年目で何か結果を残したいという気持ちと箱根に向けてあと1年という残された期間で、距離も意識しながら取り組んでいました。その中で春先に出場した1500mで高校生以来の自己ベストを出したときに学生個人(日本学生陸上競技個人選手権大会)の標準も突破できました。そこで可能性を感じて監督・コーチの方にお願いをしました。自分で選んで出た大会で結果を出すことができて、ひとつ自分の殻を破れたというか、競技者として陸上をやる最後の年だったのでその中でしっかりまとめられたと思います。
──現在は中距離に特化した練習をしているのですか?
ここ二週間くらい前から少しずつ練習の量を落としてスピードを上げて質を高めるようにシフトチェンジをしています。
──1次強化練習は駅伝に向けた練習をしていたのですか?
みんなと同じ練習をしていました。上半期は1500mを中心に取り組んでいたので、全体と流れが違うところもありました。夏合宿は距離を踏むことに関して覚悟を持って、みんなよりもプラスしてできるように考えてjogをしていました。
──1500mで培ったスピードが長い距離に生きてくる部分はありますか?
ハーフマラソンや10000mでは1500mのスピード感は出ないので、スピードを追うにつれてスピード練習の気持ちや前で勝負する姿勢が短い距離にシフトチェンジしたことで得られたことだと思います。そこは自分の中で短い距離からアプローチしたことが良かったと思っています。
──今年度は寮長に就任されました。意識や行動に変化はありますか?
後輩と仲が良いところが自分の強みだと思っています。仲の良さからいろいろと聞き出して言いにくいことがあったら、みんなの意見を聞いて主将や副将に上げていきたいと思っています。
──全カレの目標をお願いします。
初めて中大の対校選手として選んでいただくので、点数を取ってきてこそだと思います。入賞が一つ目標にしているところです。
──駅伝に向けてはどうですか?
今まで家族だったり監督、コーチ、先輩、同期、後輩、友達が見てくださってここまで大学4年間やってこられたと思っています。自分自身のためでもありますが、支えてくださった人たちの思いに応えられるように結果を残していきたいです。あと4カ月という短い期間ですが、頑張っていこうと思います。