今年の箱根駅伝1区で驚異的な走りを見せ、区間新記録を樹立した男、吉居大和(法3)。その弟、吉居駿恭(法1)が今春、中大に入学する。駿恭は中学時代から全国トップレベルで活躍し、1万㍍高校歴代3位の記録を持つ超高校級の逸材だ。二人が田原東部中から仙台育英高、そして中大へとステージを移して成長する過程の先に、彼らはどんな青写真を描くのか。
※「中大スポーツ」第170号1面の本文を掲載しております。
◇ ◇ ◇▲ことしの箱根駅伝で1区区間新記録を打ち立てた大和(©関東学連/月刊陸上競技)と今春中大へ進学する駿恭(カメラ・杉浦瑛俊)
貪欲に高みを
「藤原監督の下で強くなりたい」。駿恭は高校入学まもなく中大の練習に参加してそう決意した。この時、兄・大和はまだ伝統の「C」ユニフォームに袖を通していない。その思いは高校3年間でより深まった。
「陸上=人生」と形容するほど競技に強い思いを持つ18歳は、謙虚で高い志を持つ。大和と共に出場した2018年全国高校駅伝は7区・アンカーを走り、一騎打ちを制して優勝のゴールテープを切った。しかし、当時を振り返って「先輩たちのおかげでいい思いをさせてもらった」と自身の活躍には触れなかった。また、3年時に1万㍍で高校歴代3位の記録をたたき出した記録会についても、「走っている途中で27分台や高校記録が見えていたので、もったいないという気持ちがあった」と快挙を成し遂げてもなお、貪欲に高みを目指している。その飽くなき向上心の源泉は、「陸上が好き」という純粋な気持ちだ。
韋駄天の系譜
陸上一家に生まれ、幼いころから走ることが身近にあった。競技を始めた時期はほとんど同じだという二人の共通点について、大和は「陸上が好きな気持ちと強くなりたい気持ちはお互いにある」と語った上で、「どんなレースでも着実に結果を出せる」と弟の安定感に舌を巻く。駿恭も大和が指摘する点を自身の走りの強みとしていて、「駅伝になると自分のような調子の波が少ない選手はチームにとって安心できる存在だと思う」と力強い。
仲むつまじい兄弟はシューズを履くと家族の枠を越え、選手としてお互いを認め合う。それぞれの活躍について、「弟には負けたくない気持ちがあるし、弟が記録を出せば自分も出さないといけない」と大和。一方の駿恭も、「兄の活躍に対してうれしい気持ちはあるが、自分も競技者なので負けていられない」とお互いの活躍を自身の力に変えている。
世界見据えて
兄弟が今春、中大にそろい大学長距離界の勢力図を大きく変えていくことは間違いないが、二人の意識はすでに世界に向いている。大和が「いつか一緒に世界大会に出られたら」と語れば、駿恭も「二人で世界と戦える選手になりたい」と大学4年間を世界で勝負するための土台にしたいと考えている。
これまで世界に挑んだ日の丸ランナーたちの中には、兄弟で学生時代から切磋琢磨(せっさたくま)してきた選手が数多くおり、吉居兄弟はそれに続き、そして超える勢いを持つ。今季、大和は米国・オレゴン州で開催予定の世界陸上5000㍍の出場を狙う。ルーキーイヤーとなる駿恭は中国・成都で開催予定のユニバーシティゲームズ1万㍍の出場を目指す。「中央から世界へ」を合言葉に学生界にとどまらない活躍を誓う。
(記事:若林拓実、写真:©関東学連/月刊陸上競技、杉浦瑛俊)
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