今季は出雲駅伝3位、全日本大学駅伝7位という結果の中大。三大駅伝はとうとう箱根駅伝を残すのみとなった。「総合3位以内」という悲願に向け、勇往邁進。大会を直前に控えた選手たちは何を語るのか。
第3弾は今や中大の大黒柱の一人にして学生トップクラスの選手の一人に成長した中野翔太(法3)。入学直前の記録会でいきなり1万㍍28分台をマークしながらも怪我に苦しんだ1年目、怪我が癒え主力としてチームに大きく貢献した2年目を越えて、迎えた3年目は春から主要大会で大車輪の活躍。1万㍍では中大記録をマークするなど、大きく飛躍を遂げた。出走すれば自身2回目となる新春の箱根路。2大エースの一角として円熟の走りが期待される中野翔の心境と現状に迫った。(取材は12月1日に行いました)
▲学生個人選手権では5000㍍で準優勝
飛躍のシーズン、芽生えた自覚
——今シーズンの総括から。前半のトラックシーズン、絶好調だったという印象が強いのですが、振り返ってみていかがですか
「前半はトラックで結果を残せたので、そこはよかったかなと思います。」
——前半の中でも印象に残るレースは
「ホクレン網走大会でのレースが一番印象に残ったかなと思います。」
——1万㍍で中大記録(28分00秒86)を出されたレースだと思いますが、そのレースでは平林選手(国学大)のようなエース級の選手に先着しました
「組の上位で走れたので、しっかり自信にしていきたいなと思えたレースだったなと思います。」
——続いて後半の方を振り返っていきたいと思います。本格的に駅伝シーズンがスタートして、出雲ではエース区間を走って、全日本は出られずという形でしたが、箱根直前ですが振り返ってみていかがですか
「7月頭の5000㍍で自己ベストを更新できたのですが、出雲はそんなに上手くは走れなくて、そこは悔しい部分があったので全日本はしっかりと合わせていこうと思ってたのですが。あまり状態上がらずに走ることができなかったので、これから箱根に向けて良い状態を作っていけたらなと思っています。」
——全日本大学駅伝ではさまざまなメディアで二大エースと吉居大和(法3)(以下吉居大)選手と中野翔選手を称していたように感じますが、そのように呼ばれていることについてはどう思いますか
「トラックでは1万㍍で記録を抜かしたのですが、駅伝という面では彼の方が結果が出ていると思います。二大エースと呼ばれているので、恥じないような結果を駅伝でも出していかなきゃいけないなという思いがすごくありますね。」
箱根駅伝を晴れ舞台に
トラックだけでなく駅伝も恥じない結果を。吉居大に並びエースと呼ばれるようになったプレッシャーの中で迎えた出雲駅伝では、満を持してのエース区間を走ったが3区で区間7位と自身が満足する結果は残せず。悔しさをぶつけようとした全日本大学駅伝では状態が上がらず、出走もできなかった。だからこそ、99回目を迎える正月の箱根路にかける中野翔の思いは強い。12月19日に行われた記者会見で希望区間は1から4区と語った中野翔だが、中でも花の2区への思いは特別なものがある。昨年の箱根路の振り返りとともに、現在(12月1日時点)の調子を尋ねると昨年の時点では出ていなかった事実も明らかに。
▲前回は4区を走った中野翔(©Getsuriku)
——前回の箱根駅伝は往路を走られて4区5位という結果でした。好成績で走っているのに順位を落とすという難しい展開だったと思うのですが、大会が終わった後で自分のレースを見直されたりしましたか
「いやー、あんまりみてないですね。」
——見たくない感じですか
「そうですね、抜かされたので(笑い)」
——5区の当時1年生だった阿部陽樹(文2)選手に勢いをつなげるような走りができたと個人的には思うのですが、中野翔選手としては悔しいという思いですか
「そうですね。区間5位という結果だけ見たらうれしかったのですが、中大としてみれば順位を落としてしまったので…、悔しかったですね…。」
——吉居大選手が1区区間新記録を出していたというのも関係があるかなと思います。4区を走られる前に見ていらっしゃったと思いますが、走りを見てどう感じられましたか
「中継所から宿舎が近かったので、吉居が走り終わってから宿舎を出たのですが、観ててすごいなあという言葉しか出てこないぐらいすごかったので、負けたくないなという思いで走りました。」
——さまざまな思いの中でも収穫があったレースだと思いますが、区間賞の嶋津選手(創価大)や区間2位の石井選手(順大)といった他大のエース級の選手と走った経験から今大会で意識したいことはありますか
「前回大会は嶋津さんが後ろにいたので、ついていこうという思いで自重してしまったというか、待ってしまった感じがあるのですが、今回は最初から攻めていきたいなと思っています。」
——明日で箱根駅伝までちょうど1ヶ月前(取材日:12月1日)になりますが、全日本の前で調子を落とされた後、ここからさらに上げていく途中だと思います。今の調子はどうですか
「前回と比べたら元々のベースも上がっているので、その点は前回の箱根よりはいいと思います。去年はあまり情報が出ていないのですが、11月に一週間ぐらい離脱があったので。それ込みでも今の方が状態がいいと思います。」
——前半シーズンが終わったタイミングでは2区希望ということでしたが、今も変わらないですか
「そうですね。僕の状態の上がり次第と他の選手の状態の兼ね合いとかにもよるのですが、一番いい区間配置を監督が考えてくださると思います。ここからはレースに出ずに箱根一本で、そこにしっかり合わせていくという感じですね。」
——2区では留学生やエースと渡り合うことになるかと思います。仮に2区で出走するとなると、表彰台を目指す上で前回大会以上に重要な区間となってきますね
「エースたちの中に自分も入るっていうことは、逆に考えれば他大からみれば自分も怖い存在になれるのかなと思うので、あまりビビらずに自信を思って走りたいなという思いで練習してます。」
——2区を走る際の目標は藤原正和駅伝監督(以下藤原監督)の持つ中大記録(1時間7分31秒)更新ですか
「はい。それはもう抜く気で行かないと全然走れないと思うので、それを目標にして走りたいです。」
——前回の2区は区間中位で67分台、区間賞の田澤選手(駒大)や留学生ランナーは66分台と、非常にハイレベルな記録が次々に出ているような状況ですが、監督の記録を自分なら越せるという自信はありますか
「これからの調子次第ですかね。しっかりと状態を上げることができたら全然射程圏内というか、出せるタイムではあると思うので、ここからしっかり状態を良くしていきたいなと思います。」
エースから見たチーム
今季、4年生では千守倫央(商4)の復活、2年生では山平怜生(法2)、1年生ではスーパールーキーの呼び声高い吉居駿恭(法1)(以下吉居駿)や溜池一汰(文1)などの台頭もあり、中大は1年生から4年生までバランス良く箱根駅伝のエントリーリストに名を連ねる。まさにチーム一丸となって表彰台を目指す現在のチームは中野の目からはどのように映るのだろうか。チームや他の選手の状態などを聞いた。
▲出雲駅伝では3区を走った
——出雲3位、全日本は調整が上手くいかない中で7位シード権を確保されましたが、箱根に向けての今のチームの雰囲気はどうですか
「全日本が3位という目標の中で7位という結果だったので、箱根はしっかりと全員が足並みを揃えて結果出すぞという気持ちがみんなにあって、それはすごく感じているので状態はいいと思いますね。」
——若林陽大主将(法4)のキャプテンシーは中野翔選手の立場からはどのように捉えられていますか
「若林さんはレースに出ても外さずに走り切り、安心感や信頼がすごくある人で、キャプテンに向いているなというか信頼があるなという印象です。」
——若林主将をはじめ、4年生にとっては最後の箱根駅伝になると思いますが、4年生世代への率直な印象は
「すごいみんな仲がいいというか、ずっと一緒に過ごしているようなイメージです。実際に一緒に過ごして、4年生の先輩たちには良くしてもらっているので、しっかりといい結果で4年生を送り出したいという思いがすごくあります。」
——1年生世代の筆頭は吉居駿選手そして溜池選手だと思いますが、1年生世代への印象は
「上2人はすごく力が抜けていて、レースでも外さずに1年生ながらしっかり主力といっていいレベルにいるのですごいなという印象です。2人以外の他の1年生も勢いのある子ばかりなので、負けていられないなという思いで練習してます。」
——それは中野翔選手自身が1年生の時怪我で走れなかったというのと重なったりしますか
「そうですね。1年生の時はすごく苦しんだので、重なる部分もあります。」
——吉居大選手、八王子ロングディスタンスで途中棄権されてましたが中野翔選手から見た現在の調子は
「普通に走れてますね。動きが崩れて豆ができたみたいな感じだったと聞いたので、そんなに問題はないかなと。箱根に関しては問題ないかなと思います。」
箱根駅伝、そしてその先へ
——改めて箱根駅伝への意気込みを聞かせてもらえますか
「大学駅伝を今まで走った中で順位を全部下げてしまっているので、そろそろしっかりと順位を上げて勢いをつけれるような、そういう走りをしたいなと思います。」
——最後になりますが、箱根駅伝で今シーズンは一区切りで、翌日から来季に向けてのシーズンがスタートします。来季シーズンの目標を聞かせてもらえますか
「1つは前半シーズンでしっかりと27分台を狙っていけたらなと思ってます。そこから夏合宿を経て、まだ決まってはないですけど三大駅伝、しっかりと駅伝で活躍できるように頑張りたいなと思います。」
今大会から再び沿道での観戦が可能になる箱根路には人々の活気が本格的に戻ってくる。前回は1区から爆走した吉居大の胸で真紅の襷(たすき)が揺れ続けたが、今年はもう一人のエースの胸で、真紅の襷(たすき)が喜ぶように揺れている、そんな映像が容易に思い浮かんだ。
(取材・構成:角谷優希)
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