2024年11月23日 東京都・町田GIONスタジアム
明治大、青学大、立教大、中大、法大が一堂に会するMARCH対抗戦は今大会で4回目。全4組で10000mのレースが行われ、各大学上位10人の合計記録によって優勝が争われた。中大からは21人が出走し、4組で大学記録を樹立した吉居駿恭(法3)をはじめとして、15人が自己ベストを更新。上位10人の平均記録は28分21秒71の大会新記録で初優勝を果たし、箱根駅伝に向けて転換点となる一日であった。
夕暮れ時、気温が徐々に下がる条件の中でスタートした1組には伊藤春輝(法2)、山﨑草太(文2)、池田慶次郎(経1)が出場。中でも伊藤は復帰後初めてのトラックレースとなり、復活への兆しを垣間見ることができた。
▲強い気持ちで臨んだ伊藤
「(他選手を)前に出させない、チームへの想いっていうのを自分で考えて意識的に走った」と熱い胸の内を語った伊藤は序盤、後方で冷静にレースを進める巧者ぶりを見せ30分02秒16でゴールした。一方、初の10000mとなった池田慶次郎(経1)は一時、単独走になる厳しい状況ではあったが、大崩れすることなく30分12秒04でまとめる。また、昨年に続く出場となった山﨑は中盤での失速が響き、30分09秒89に留まったものの、「来週の日体とか、記録会で良い記録を出してチームを盛り上げられるようにしたい」と次を見据えた。
▲初の10000mに挑んだ池田
28分台のペースでレースが展開された2組は阿部陽樹(文4)、田中伶央(文1)、荒井遼太郎(法1)、佐藤宏亮(文3)、折居幸成(法3)、永島陽介(法3)の6人が出走。
大石プレイングコーチがペースメーカーを務めた先頭集団では、阿部が終始前方に食らい付く意地の走りを見せた。箱根駅伝予選会、全日本大学駅伝と中大の屋台骨を支えてきた中で不調に悩まされてきた阿部だったが、8400mほどで青学大を大きく突き放すスパートを仕掛け、本来のキレが戻ってきたことを予見させた。レース後には「前半余裕を持って後半上げていくという自分の目標通りの走りができたかなと思います」と口にし、その状態の良さをアピールした。
▲復調をアピールした阿部
また、同レースでは田中、荒井、折居の3人が自己ベストを更新。
田中は「もう1回年末に10000mがあるので、次こそは28分台をマストで出せるように頑張っていきます」、荒井は「次は来週の日体大記録会、関東10マイルと年末もう一度10000mを控えているので、しっかりまとめ切って自分に自信をつけられたらと思います」とそれぞれ今後の展望を口にした。また、折居も「自分は結構登りが強くて、正直言えばトラックとかハーフのタイムだと全然16人に入れるレベルにはなっていないんですけど、山ってところでいったらチャンスは残っているので、最後まで諦めずに頑張りたいと思います」と箱根駅伝への思いを示した。中大の未来を担うであろう新鋭の活躍に今後も目が離せない。
▲年末でのリベンジを誓った田中
各大学の主力メンバーや次期エースが名を連ねる3組には田原琥太郎(文1)、吉中祐太(文3)、山平怜生(法4)、鈴木耕太郎(法2)、山口大輔(文4)、七枝直(法1)の6人が戦いに挑んだ。
レースは序盤から、田原を除く5人が前方に位置するという積極性を見せる。5000mを14分26秒ほどで通過し、5300m過ぎにペースメーカーが外れると鈴木、山平、吉中、山口の4人が大集団を引っ張る様相に。6000m以降、集団の人数が絞られると「勝負所を見定めて耐えて、ここで勝負するぞということができるようになってきた」と田原が徐々に前方へ浮上し、ラスト600mを前にして中大勢が上位を独占。抜きつ抜かれつのスパート合戦が始まる。最初に抜け出したのは山平と田原、そして吉中と鈴木も懸命に後を追う。元来ロードの適性があった田原だったが、「MARCH対抗戦までの1カ月間で十分にトラック練習が積めて、スピードにも自信がつきました」という言葉通り、残り200mで会心のスパートをかけるとそのまま逃げ切ってフィニッシュ。28分33秒54の自己ベスト、中大は2位の吉中から12位の山口までが自己ベストを更新する快進撃を演じた。
▲デットヒートを演じた田原(左)と山平(右)
中大勢による終盤のデットヒートについて聞くと、吉中は「僕の思っていた以上に田原も余裕があって、最後刺しきれなかったという感じです」と振り返った上で「ベストを更新できたので良かったですが、1年生の田原に負けて悔しい気持ちがあります」と胸の内を明かした。「レース前はお互いに応援の言葉を交わしたり、逆にレース後には称え合うなど、そういった部分がチームの士気を高めていると思います」。山平が語ったように上級生も下級生も互いに刺激を与えあう、競争力の中にある結束力が中大再興のカギになるに違いない。
▲自己ベストを更新した吉中(左)と鈴木(右)
今大会において、最も注目が集まった4組には各大学のエースが集結。過去3大会を大きく上回る高速レースが展開され、学生長距離界のレベルの高まりを感じさせるレースとなった。
最初の1000m、2000mを2分45秒ほどで通過するハイペースで展開される中、岡田開成(法1)、吉居駿恭(法3)、並川颯太(法1)、本間颯(経2)が集団前方で落ち付いた走りを見せる。一方で佐藤大介(文1)、藤田大智(経2)も後方でペースを刻み続ける。
5000mを14分00秒前後で通過し27分台への期待が高まると、各大学のエースが意地をぶつけ合う、至高のマッチレースが展開されることとなる。5600m過ぎ、まず最初に先頭集団に揺さぶりをかけたのは本間。「ゆとりがあったのと、自分が前の選手に足を何度も当ててしまったのもあり、思い切って前に出ようと思いました」という頼もしい言葉通り、軽快なスパートで大きなリードを形成する。本間の勇壮には吉居駿も「チームにとって勢いになる、気迫の飛び出しだと感じました。自分にはその勇気がなかったので、姿勢を見習いたいです」と大いに刺激を受けた心境を明かした。
▲4組は出走メンバー全員が自己ベストを更新した
本間は6800mほどで後方の集団に吸収され、青学大4人と本間、吉居、岡田に勝負が絞られると、続く1周で白石(青学大)、8000mを手前にして岡田が遅れ始める。残り2周を黒田、鶴川(共に青学大)、吉居と本間の集団が通過すると、白熱したスパート合戦が展開される。残り2周で本間がトップに躍り出ると、「鶴川さんとたたき合いをして、エースとしての気合をチームに示したいと思っていた」と吉居駿が応戦する。最後の直線に差し掛かったところで鶴川の猛スパートに後塵を拝したが、吉居は27分44秒48、本間は27分46秒60と溜池一太(文3)が保持していた中大記録を更新した。さらに岡田、藤田、佐藤と並川も自己ベストを塗り替えてゴールするなど、復活の狼煙を上げるレースとなった。
▲青学大勢に果敢に挑んだ本間(左)と吉居(右)
なお、1組から4組にかけての上位10人の平均タイムは28分21秒71、過去3回いずれも優勝していた青学大を大会新記録で下した。
藤原正和駅伝監督はレースを振り返って「1組は伊藤が久々に公式レースに復帰し、上々の走りでした。2~4組については各々が箱根メンバー選考のプレッシャーの中、必死になって走ってくれたと思います」と評価し、「一人ひとりがこのチャンスに懸ける思いはよく伝わってきました」と各選手のアピールを受け止めた。
▲中大は初優勝を手にした
競争力と結束力を高めて目標の7位へ。中大の快進撃はここから始まる。
◆大会結果◆
男子10000m
1組
⑨伊藤春輝(法2)30分02秒16
⑩山﨑草太(文2)30分09秒89
⑪池田慶次郎(経1)30分12秒04 初
2組
①阿部陽樹(文4)28分43秒30
④田中伶央(文1)29分12秒10 PB
⑦荒井遼太郎(法1)29分21秒67 PB
⑰佐藤宏亮(文3)29分39秒22
⑱折居幸成(法2)29分40秒12 PB
㉖永島陽介(法2)30分09秒58
3組
①田原琥太郎(文1)28分33秒54 PB
②吉中祐太(文3)28分34秒93 PB
③山平怜生(法4)28分35秒45 PB
④鈴木耕太郎(法2)28分39秒24 PB
⑫山口大輔(文4)28分58秒86 PB
⑲七枝直(法1)29分31秒40
4組
②吉居駿恭(法3)27分44秒48 PB
③本間颯(経2)27分46秒60 PB
⑥岡田開成(法1)28分08秒51 PB
⑧藤田大智(法2)28分29秒98 PB
⑨佐藤大介(文1)28分32秒14 PB
⑩並川颯太(法1)28分32秒15 PB
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