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総合12位でシード権獲得ならずも復路3位 実感する駅伝の流れの重要さー第97回東京箱根間往復大学駅伝競走(復路)

1月3日

神奈川・箱根芦ノ湖~東京・大手町

2日の往路を19位と厳しい結果で終えた中大は、シード権獲得に向け、復路に一縷(いちる)の望みをかけて挑んだ。1万㍍の平均タイムが出場校中4位と、実力は十分にありながら試合の流れをつかめなかった往路。一転して復路は5区間全てが区間一桁順位と本来の走りで流れを取り戻し、復路順位は3位。総合では箱根芦ノ湖から19位でスタートした順位を、12位まで押し上げた。シード権内まで4分16秒あった差を2分7秒まで縮めるも、9年ぶりのシード権奪還はかなわなかった。

悪い流れを断ち切り、逆襲の口火を切ったのは6区若林陽大(法2)。11月に自己ベストを更新し、調子が上向いていた若林は2年連続の山下りに挑んだ。昨年は序盤から区間上位に食い込むも、後半に失速。大きく成長した今年は終盤、箱根湯本からの残り3㌔で攻めの走りを見せ区間5位。山下りのスペシャリストとしての片鱗(へんりん)をのぞかせ、好スタートを切った。

 

良い流れでのタスキリレーとなった7区は、箱根初出走の中澤雄大(経2)が任された。1万㍍で28分台に迫る走りを見せ、予選会では58位と好走。1年間で最も成長した中澤は、箱根路でも力強さを発揮し順位を17位に上げた。序盤から積極的に飛ばし、果敢に前を追う攻めの走りはチームに勇気を与えたに違いない。中大に勢いをもたらしたのは、6区若林、7区中澤とこれからの中大を担う2年生二人だ。中澤自身もロードでの強さが光り、来年へとつながる箱根デビューとなった。

 

8区に出走したのは、今季着実に結果を残している三浦拓朗(商3)。昨年は3区に出走するも、区間12位と本来の力を発揮できずに終わった。今年こそはと闘志を燃やす三浦は、6.7㌔の茅ヶ崎地点での区間順位は1位。持ち前のスピードと攻めの姿勢を遺憾なく発揮し、とにかく最初から攻めの走りを貫いた。しかしその後はペースが落ち、中盤から失速。それでも区間7位と役目をしっかりと果たした。名前にちなんだ“サンタクロース”からの恩返しとなる区間賞は来年へと持ち越し。3年生Wエースである三浦の走力を考えれば、8区7位は悔しい結果に違いない。最終学年となる来年の箱根では、流れを変えられるチームの大黒柱となってくれることを期待したい。

 

9区手島駿(商3)は、3年目にして念願の箱根出走となった。予選会でも存在感を発揮し、復路のエース区間に抜てき。「復路全員で逆襲」と、強い思いを持ってレースに臨んだ。7.7㌔の権太坂通過地点での区間順位は4位と、序盤から勢いに乗る。その後もシード獲得圏内である10位との差を50秒近く縮める好走を見せた。ロードの強さとスタミナを武器にする手島は、疲れが出る後半にもペースを維持。区間7位で初めての箱根を終えた。順位も二つ押し上げ、12位で最終10区に望みをつないだ。

 

アンカー10区を任されたのは、今年が最後の箱根であり、競技人生ラストランとなる川崎新太郎(経4)。昨年は2区に出走、今年は2年ぶりの10区となった。レース前、「これまでやってきたことを信じて楽しみながら全力で走る」と意気込んでいた川崎。序盤は区間12位となかなか調子が上がらなかったが、中盤から終盤にかけて自分の走りを貫き、5位に浮上。「脚が動かなかった」とラストの疲れを口にするも、粘り強い走りで最後の箱根路を駆け抜けた。レース終了後に池田と抱き合った川崎の表情からは清々しさが感じられた。

 

総合3位を目指し、この一年間ひたむきに練習を重ねた“新生藤原隊”。しかし結果は目標の3位はおろか12位と、9年連続でシード権を落とした。敗因は何だろうか。今回改めて実感したのは駅伝の『流れ』と、『単独走の重要性』ではないだろうか。

往路のメンバーは、これまでの中大陸上部を見ても過去最強メンバーとも言えた。1万㍍中大歴代1・2・5位の吉居大和(法1)、千守倫央(商2)、森凪也(経3)が名を連ね、持ちタイムは各大学と比較しても十分すぎるレベル。だが、駅伝は水物。高速化した往路では、一度歯車が狂うと、なかなか流れを取り戻せない。今大会も、1区の出遅れを取り戻すことが出来ずに、ズルズルと後方での走りが続いてしまった。

事実、前評判が高かった大学も、往路では流れを失うと軒並み崩れた。絶対王者の青学大や、優勝候補と目されていた明大も、往路はシード圏外に沈んだ。

また、不運にもタスキを受け取ったときに、近くに大学がいなかった場面が多かった。単独走を余儀なくされ、集団で前を走る選手よりも体力を消耗。焦りも重なり、本来の力を発揮できずにレースを終えてしまった選手も多いのではないか。

12月上旬、本紙に今日も箱根駅伝のテレビ解説を行っていた碓井哲雄氏が、こんなことを打ち明けてくれた。

――中大はタイムが良いですがその点について

「でも他も出てるんだから。早稲田なんか27分台二人も出てるんだから。青山なんかタイムでいったら7番目くらいだよ。だけど駅伝を知っているから。この間、原(監督・青学大)と話していたらやっぱり練習が違う。30㌔一人で走らせてるから。だから駅伝は一人で走れるんですよ。ついていく練習ばっかりやっているとラストの勝負だけでしょ。分からなかったら一人のペース配分ができないんですよ。予選会があるとそういう練習しかできないんですよ。予選会がなければ一人の練習が9月からできるわけです。だから予選会出るということはそういうハンデがあるということです」

事実、今大会の予選会組でシード権を獲得したのは、1位で通過した順大のみ。シード校は確実にシード権を守った。単独走でもしっかりと走れる『強さ』が、箱根で勝つためには必要と言える。予選会組という不利な条件を跳ね返すには、まずは駅伝で経験を積むことが重要だ。今年は不運にも出走がかなわなかった全日本大学駅伝。まずは全日本に出走し、駅伝の経験を積むことが来年に向けての鍵となるはずだ。

今大会、希望の光も多かった。復路では厳しい状況下でも、選手一人一人が最後まで諦めない攻めの姿勢を貫いた。出場がかなわなかった選手も、メンバーをサポートし、逆襲への雰囲気づくりを徹底。出走選手全員が区間一桁と安定感のある走りで、終わってみれば復路3位。苦しい状況下でも力を発揮し、「中大ここにあり」と言わんばかりの意地を見せた。

頼もしい4年生が卒業するも、来期は往路で3人、復路メンバーは川崎を除いた4人がチームに残る。次回大会までにさらに力をつけ、箱根路での快走に期待したい。出走できず悔しい想いを持った選手も大勢いるはず。「次の主役は俺だ」と名乗りを上げる新戦力の台頭が待ち望まれる。今回の悔しさを糧に、来年こそは10年ぶりのシード権奪回、そして白地に赤のCが箱根で輝くことを願うばかりだ。

 

◆大会結果◆

総合12位 11時間7分56秒

復路3位 5時間28分39秒

6区 若林     58分45秒(区間5位)

7区 中澤  1時間4分7秒(区間5位)

8区 三浦  1時間5分8秒(区間7位)

9区 手島  1時間10分8秒(区間7位)

10区 川崎  1時間10分31秒(区間5位)

◆お知らせ◆

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記事・写真:「中大スポーツ」新聞部