1月3日 神奈川・芦ノ湖~東京・大手町
2日の往路を13位で終えた中大が勝負の復路に臨んだ。8年ぶりのシード権獲得を目指し大手町を目指したが、結果は総合12位に終わった。それでも、タイムに目を向けてみると昨年よりも大幅に短縮し、中大記録を更新。10区間中、7区間で区間新記録が樹立されるなど『超高速化』した箱根駅伝で勝ち切ることの難しさをチームが痛感した2日間となった。
復路スタートの6区は若林陽大(法1)に託された。若林は下りの適性を見出され、1年生ながら特殊区間を出走。序盤は区間上位に相当する走りを見せるも、次第に失速してしまう。しかし、初駅伝で中大がこれまで苦手としてきた山下りを区間10位でまとめた。▲初の箱根で結果を残した若林
順位を一つ落とし14位でタスキリレーとなった7区は、今季エース級の活躍を見せてきた森凪也(経2)に任された。しかし、12月以降は不調に陥っていた森凪。「調子が上がってくると信じていました。でも無理やり調子を上げようとしてしまって、フォームが崩れて足を痛めたりと悪循環がかなり続いてしまいました」(森凪)。懸命に前を追うもシード権ボーダーラインの10位との差は縮まらず、悔しい区間12位に終わった。▲7区を激走する森凪。この悔しさは来年晴らす
森凪からタスキを受け取ったのは矢野郁人(商3)だ。去年も8区を走り区間8位と好走した実力者。しかし、なかなか矢野のペースは上がらなかった。矢野本来の力を発揮できずに順位を一つ下げて14位でのタスキリレー。9区の同級生、大森太楽(文3)へとタスキをつないだ。
▲遊行寺付近を走る矢野 本来の実力を発揮することはできなかった
9区の大森は今シーズン大きな成長を遂げた選手の一人だ。直前の学連記録会でもベストを更新し、調子は上向きだった。自身の持ち味である「ペースを作って押していく走り」を体現し、徐々に順位を上げていく。伸びやかな力強い走りで区間10位にまとめた。▲応援に応える走りを見せた大森 チームに良い流れを作った
アンカーを任されたのは二井康介(文4)。長年不調が続いていた二井だが、最初で最後の箱根でこれまでの苦しさを晴らす魂の走りを見せた。13位で貰ったタスキだが、順位を一つ押し上げ12位で大手町に帰ってきた。
「舟津と田母神がゴールにいたところはちょっと泣きそうになりました」(二井)。ゴールにはこれまでチームを支えた田母神一喜主将(法4)と舟津彰馬駅伝主将(経4)の二人が二井を待っていた。田母神と舟津は最後の箱根で出走することはかなわなかった。二人にとっては相当な悔しさ、葛藤があったはずだ。しかし、アンカーの同級生である二井を笑顔で出迎えた。二井は区間6位、さらには中大10区新記録を樹立し最後の箱根に花を添えた。▲最初で最後の箱根駅伝出走を果たした二井 ゴールに駆け込んだ
▲大手町のゴールにて二井を笑顔で迎える田母神と舟津
総合12位、シード権ラインである10位東洋大とは4分28秒差と昨年よりも順位、シード権までのタイム差が広がった形となった中大。激戦と化した箱根駅伝だが、来年以降中大がシード権奪還、そしてその上の順位で終えるには何が必要なのだろうか。
「運営管理車の中で覚悟ができた。人数が少ない中、これまではケガを恐れて強度の高い練習を多く積むにはリスクも大きかった。しかし、そういったこともこれからはやっていかないと勝てない時代になってきている。選手たちと練習面で意見交換をしながらも、これからはもっと距離も踏まなければいけないと感じた」(藤原監督)。
「1区、2区のところでエースが必要であることを実感した。区間上位に食い込むような爆発力のある選手が出てこないとシード権は難しい」(花田コーチ)。
「ゲームチェンジャーが今年は(中大に)いなかった。そういったなかでどうしても後手後手になってしまったかなと思う。今までの努力ではシード権獲得は厳しいことを痛感させられた」(山本コーチ)。
藤原監督、コーチからの言葉通り、やはりチームに「エース」、「ゲームチェンジャー」の存在が必要ということを実感させられた大会となった。森凪、三浦拓朗(商2)、池田勘汰(商3)、畝拓夢(法3)、川崎新太郎(経3)らチームを背負って立つエース候補は数多くいる。しかし、もう一段階突き抜けた走力がエース、そしてゲームチェンジャーとなるためには必要なのではないだろうか。
レース後「エースになれるように頑張ります」と今後に向けて意気込みを語った池田。池田だけではなく、畝、川崎ら今の3年生世代を中心としたチーム作りはもう始まっている。
今大会の結果を振り返ってみると、区間一桁順位は畝の5区9位、そしてアンカー10区を走った二井の6位のみと寂しいものとなった。しかし、箱根駅伝特有の特殊区間である山区間は、昨年と比べて良い結果を残したと言えるだろう。
昨年は中山顕氏(現Honda)、堀尾謙介氏(現トヨタ自動車)といった頼れる大エースがいた。それでもシード権には届かなかった。箱根で勝つには「エースの存在」、「山区間の耐え」そして「大きなブレーキをしない」、この3つの要素が重要と言えるだろう。
優勝候補と言われていた東洋大でさえ、まさかのシード権ボーダーラインの10位に終わった。相澤といった大エースや、山で区間新記録を出した宮下、今西らを擁してもシード権ギリギリのラインとなってしまった。区間一桁順位で安定して走ることができる選手がどれだけいるかといった、エースを支える選手層の厚さも箱根で勝つには必要不可欠だ。
数年前までは、総合タイムで11時間を切ることは優勝争いをできる状況だった。だが、今はシード権を獲得するためには11時間を切らなければいけない時代となった。田母神、舟津らこの1年間先頭をきってチームを引っ張ってきた4年生が引退を迎え、3年生へと新たなタスキが受け継がれた。今回の12位という結果をどう受け止めるか。この受け止め方と今日からの取り組みが、来年の箱根の結果を左右するはずだ。
「強い中大」の輝きを取り戻すために、そして戦国駅伝を勝ち抜いていくために。今一度できることを深く考え、新たな試みを実行することで、来年大手町で選手たちの笑顔が見られることだろう。今年も立川の予選会からのスタートとなる中大。しっかりと予選を突破し、来年こそはシード権獲得となることを願うばかりだ。
◆コメント◆
藤原監督
「4年生をいい形で送り出したかったのですが、12位という結果になりました。それでも4年生の二井が頑張ってくれたと思います。この4年間、箱根では結果が出ていなくて、今回の箱根駅伝を見ていて覚悟を決めました。もっと距離を踏んだ練習をしないといけません。そういう練習をしないと時代に追いつきませんし、1500㍍を捨ててまでも長距離を踏まなければいけないと感じました。明日から選手たちにはまた一歩踏み出してほしいし、4年生には苦労をかけて頑張ってきたので評価していただきたいです。来年は駅伝の経験者も少ないので、まずは全日本大学駅伝に出て駅伝の経験を重ねていきたいと思います」
舟津
「最後の箱根駅伝は走れませんでしたが、今回戦ったのが現在のベストメンバーです。チームとしては結果は出せませんでしたし満足していませんが、強くなっていることを実感できたと思うのでこれからはそこを忘れずにやって欲しいと思います。最後に二井が『楽しかった』といっていて、そんな言葉を聞けて良かったです。(森凪との給水については)凪也は直近の後輩ですし、結構15㌔で厳しそうだったので、中大の歴史だけではなく復路の歴史を作って欲しいという思いで渡しました。今後はオリンピックを目指していかなければならないと思うので、それについて妥協せずにやっていきたいですし、世界というステージへ上がっていかなければならないので、応援していただいた方々に良い所が見せられるようにしたいです」
田母神
「結果としては12番でしたが、過去一番早い記録となりました。それでもこの結果を出しても、シード権には届きませんでした。『このままではだめなんだ』という悔しさをこれからは(後輩が)持ってやってくれると思っています。このような結果になってしまったのは長距離ブロックの主将である私の責任でもありますし、申し訳ないという気持ちでいっぱいです。舟津をはじめ4年生には感謝しています。1年の時に予選会で敗退してから舟津が頑張ってきてくれました。舟津がいなかったらこの4年間は成り立たなかったと思います。後輩たちには今日の悔しさを絶対に忘れずに頑張ってほしいです」
4区 池田
――3年目の箱根を振り返っていかがでしたか
「3回目ということでだいぶ慣れました。本当にいつもの試合と同じような感覚で、特別緊張することもなく挑めました。でも毎回感じているんですけど、速くならないなって。自分達の力がついたのは間違いないというか自分の足で走りながら実感できたんですけど、それ以上に課題は力をつけないといけないと強く実感しました」
――事前に3年生と話したこと、腕に「エース」書いた心境について聞かせてください
「走りながらエースだったらどうするかなを考えながら走りました。でも試合が終わって、やっぱり自分はエースには足りないなと。エースがいないと勝てないし、エースって呼ばれる人間を2、3人育成して底上げしないとシードには届かないと思いました」
――同世代の川崎選手が2区走ったことについて感じることはありますか
「去年の2年次の箱根が終わってから2区をずっと走りたいと思っていましたが、結局4区を走ることになりました。川崎ならやってくれるだろうと自信をもって送り出しました」
――来年度への意気込みを教えてください
「エースになるしかないですね。気を引き締めて頑張ります」
6区 若林
――初めての箱根駅伝ですが振り返っていかがでしたか
「レース前は緊張していた部分とワクワクしていた部分がありましたが、レースが始まって走り始めたら自分の走りに集中できました」
――レース序盤は順調だったと思いますがどうでしたか
「自分の中では区間4位までいっているとは思っていなくて他の人が速いと思っていて、流れに乗っていった結果があれだったので『今日自分、動いてるな』と思っていました。前半は結構良かったのですが、12キロくらいから失速してしまい、足がきつくなってしまって最後全然足があがっていなかったので、そこは自分の走力が問題かなと思います」
――あと3回箱根のチャンスがありますが走りたい区間やこだわりはありますか
「特にないです。監督に任されたところで自分は走りたいと思うので、監督にもう一回行け(6区に)と言われれば走りたいと思います」
7区 森凪
――今日の走りを振り返っていかがでしたか
「調子が12月以降落ちていて、それでなんとかしないといけないと思っていました。調子が上がってくると信じていました。でも無理矢理調子を上げようとしてしまって、フォームとかが崩れてしまい足を少し痛めたりとかがあって悪循環がかなり続いてしまいました。練習の消化において、うまくいかないことが多かったことで調子が良くないなと感じていました」
――11月にオランダ遠征がありました。行った前後で調子の変化はありましたか
「それはあまり関係なくて、12月に入って(調子が)落ちたと言う感覚がありました」
――仲間からレース前何か言われたことはありましたか。また当初はやはり往路で行くことは自身の心の中にもあったのでしょうか
「10人全員走りたいメンバーが揃っていましたが、10人以外のメンバーも(箱根を)走りたい一心でこの陸上に打ち込んでると思います。往路で行きたいと言う気持ちはあったんですけど、ここまで状態が上がらない中でも自分を使って頂いたスタッフの方々、そしてメンバーのみんなには感謝というか、結果で応えたかったんですけど、うまくいきませんでした。調子を上げようという気持ちだったんですけど、最後も練習での消化具合が結果にそのまま出たんじゃないかなというのがあります。1年間順調にいっていた中で、ここで調子を落としてしまったので、来年からは1年の流れっていうのを通年で考えて、ちゃんと1月2日、3日にピークが持っていけるような状態にしないといけないなと思いました」
――今後への抱負を教えて下さい
「もちろん今年も往路を予定していたので、往路で勝負ができるような選手になりたいです。今年は12月で(調子が)急ブレーキになってしまったので、通年で考えながら箱根にピーキングを持っていけるようにしたいです。往路でちゃんと走るって強い気持ちを持っていきたいと思います」
8区 矢野
――昨年と同じ8区でしたが、出走を振り返っていただけますか
「8区に確定したのは直前でした。遊行寺坂で、去年は上手く登れたけど今年は止まってしまって、そこでタイムも一気にガクッと下がってしまいました。前で走っている人と差があまり縮まらず、後ろから走ってきた人に抜かれてしまい少し焦りがありました」
――監督から言われた言葉はありますか
「去年も走っているので特に心配とかはされていなかったですが、(運営管理車から)『遊行寺坂から勝負』と言われました」
――9区で待っていたのは同級生の大森選手でしたが、どういった気持ちで走りましたか
「個人的には、自分が流れを変えたいなという思いが強かったんですけど、上手く走れなくて悔しい気持ちです」
――これからの1年はどういった年にしていきたいですか
「来シーズンは、隙を見せないような一年にしていきたいなと思います」
9区 大森
――9区を走ってみてどうでしたか
「苦しかったんですけど、一番楽しいレースになったかなと思います。(9区出走は)事前に早めに言われていたので心の準備はできていて、チームの中でもしっかり年間を通して練習をやれているという自負はあったので、23㌔を走り切れるという自信を持ってスタートラインに立ちました」
――事前の練習や大会でも調子を上げてきていたが、どのような練習をしていましたか
「人より少しプラスするというか、ジョグでも10分プラスしたり練習量を少しずつ増やしたり筋トレをしたりしてとにかく長い距離に対応することをテーマにこの1年はやってきました」
――3年生全体で何か話し合ったり意識したことはありますか
「特にないんですけど、みんなチームを引っ張る学年だということは分かっていたと思うので、今回はそれが見せられなかった部分はあったんですけど、来年は4年生としてもっと名実ともにチームを引っ張っていかなければいけないので、もう一回そこは学年で共有してやっていけたらなと思っています」
――予選会からのスタートとなりましたが、最後の1年どのように戦っていきたいですか
「自分たちの力も上がっているんですけど、箱根駅伝もどんどんタイムが高速化して今までの常識が通用しなくなっていて、今回の大会を基準に自分たちも考えないといけないので、普段の練習から質や量をもう一段上げていくことが必要だと思っているので、それを実行に移していけたらと思います」
10区 二井
――今日のレースを振り返っていただけますか
「最後まで楽しんで走ることができました」
――4年間さまざまなことがあったと思いますが最後の箱根駅伝はどのようなものでしたか
「ここまで支えてくれた部員、後輩先輩含め応援してくれた人たちの力を借りて、支えられて走ることができました」
――亡くなってしまったお母さんと歩んだ最初で最後の箱根駅伝でしたが
「いつもお骨をペンダントに入れてネックレスにしていましたが、それを今日はゼッケンに付けて走りました。少しはいいところを見せれたのかなと思います」
――ゴールテープを切った時の心境を教えてください
「舟津と田母神がゴール地点にいたところはちょっと泣きそうになりました」
◆大会結果◆
総合12位 11時間3分39秒
復路12位 5時間31分59秒
6区 若林 59分25秒(区間10位)
7区 森凪 1時間4分50秒(区間12位)
8区 矢野 1時間7分21秒(区間16位)
9区 大森 1時間10分5秒(区間10位)
10区 二井 1時間10分18秒(区間6位)
◆お知らせ◆
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記事・写真:「中大スポーツ」新聞部