春季は全日本覇者・青学大との一騎打ちに敗れあと一歩、優勝には手が届かなかった中大野球部。しかし表彰選手に5人が選出されるなど、快挙も達成した。春の雪辱を果たすべく、夏の練習で弱点を克服して迎える秋。
ラストシーズンを迎える4年生をはじめ、中大の躍進を支えた選手たちが持つそれぞれの特別な思いを全11回に渡ってお届けする。
最終回は、清水達也監督です。あと1勝で優勝を逃した昨シーズンの捉え方、今季台頭が期待される選手、ラストシーズンを迎える4年生に対しての思いなどを伺いました。名門中央が再び優勝旗を手にするために、清水監督の東都に対する熱い思いが垣間見えたインタビューとなりました。(聞き手、構成:松岡明希)
▲スタンドを見つめる清水監督
──春リーグを振り返って
「最後の最後でね、勝った方が優勝というような展開になって負けてしまったから悔しさしか残っていない。そういう悔しさ残るシーズンでしたね」
──最初の節、駒大戦を第3戦までもつれたものの、勝ち点を取ることができたということはメンタル的にも大きかったですか
「そうですね。そこは毎回リーグ戦をするにあたって早く勝ち点取るというのは戦い方としては絶対そうなってくるから。最初のカードでとれたというのは大きいですね」
──対青学大3戦目、監督が試合前にかけた言葉とは
「とにかく勝った方が優勝だから、勝ちたい気持ちが強い方が勝てるし、勝つだろうし。とにかく思い切ってやってくれというように」
──試合後にはどのような言葉をかけられましたか
「この春もそうだったし、前の秋のシーズンも1勝差で優勝を逃しているので。1勝の差、そこの大きさを。秋に向けて練習しようということを確か言ったと思います」
──監督としては青学大に競り負けた印象なのか、それとも大きな差があると感じたのか
「競り負けたというか、ここのところ青学さん何シーズンか続けて優勝しているんで、選手の中にも余裕があるとか。そういう舞台で力を発揮できるような力がついている。うちはまだ勝ちたいとか、勝たなきゃとかそういう気持ちがあったから力むとかして。そういう差はあるかな。思い切ってプレーしてくれと今も同じようなことを言っているんだけどもそこの中に一つ心の余裕とかがあれば、また違うプレーができると思うので。ただ単に思い切ってやるだけじゃなくて、少しそういう余裕を持ちながらできるように今はやっています」
──この春のキーポイントとなったシーンは
「駒澤のところ初戦落として、2戦目の先発の今村(拓哉=文4・関東第一)が序盤の3回を抑えておいて、その後東恩納(蒼=商1・沖縄尚学)が投げて抑えたんだけど。あのゲーム、序盤を2点で抑えて点をとれたということが大きかったと。それがさっきの自信というか。展開的に、また先にとられたらガタガタと行ってしまうような試合だったから」
──以前、投手陣の穴埋めが必要だとおっしゃっていた。投手陣をどのように評価されているか
「先ほどの今村の2戦目の先発もそうだし、そのあと抑えた東恩納。あそこを考えてもその2人プラス子安(秀弥=経1・東海大相模)とか。山口(謙作=商3・上田西)もそうだな。それはすごく去年から比べたら、あまり実績がなかった子たちなので。西舘(勇陽=令6卒・現読売ジャイアンツ)とか石田(裕太郎=令6卒・現横浜DeNAベイスターズ)とか岩本(大地=令6卒・現セガサミー)とか大栄(陽斗=令6卒・現トヨタ自動車)とかが抜けちゃったんで。その点ではそういう子たちが頑張ってくれたかなと」
──初めてリーグ戦を経験する選手も多かった。声かけはどのように
「こういうオープン戦の時から、東都というのはこういうもんだよという話はしているし。ここでどれだけ緊張感を持って練習できているかということにつながってくると思うので」
──継投のタイミングはどのようなことを意識して
「早めにというか。あまり後ろから出ていく選手に負担をかけないように。その時その時の状態もあるから出ていった子がしっかりと準備をしていくのが大切かなと」
──日大3回戦では綱川(真之佑=経3・健大高崎)選手の代打タイムリー、対亜大2回戦では代打佐藤豪(経3・藤代)の逆転打など、代打で結果を残す選手も多くいた。代打起用の意識としては
「その時その時の好不調とか、相手ピッチャーとの相性だとかそういうのもいろいろあるけども。その子とかも性格もあるし。その時その時で考えてですね」
──この結果にはいろいろなスタッフ、アナライザーであったり、学生コーチであったりの貢献もあってこそかと思います。彼らの活躍をどう見られていますか
「データ班も大塚(豪=文3・沼津東)と齊藤(弘幸=商3・三池)とが中心になって、それでメンバーには入れなかった子、1年生とかも含めてやってくれているし。今回なんかずっとゲリラ豪雨みたいなの続いているから。うちは土のグラウンドでさ、今日も朝早くからメンバー外の子が整備してくれているわけだけど。本当に連日連夜の雨だからね。彼らがちゃんとしてくれるからゲームができているわけで。本当だったら中止になっちゃうような状態だったんだけど。一生懸命やってくれてるんで、メンバーたちには感謝しなさいよと言っていますけど」
──応援も今季すごかった。感じたところは
「そういうところがね、一体感が出てきてると思うので、そうなっていくことが本来のチームだと思うから。ここでどれだけみんなで切磋琢磨できるかと思うんでね」
──1年生野手の橋本(航河=文1・仙台育英)選手、新妻(恭介=文1・浜松開誠館)選手、熊谷(陽輝=経1・北海)選手も活躍。彼らをどう見ているか
「力がある子たちだから。まだ1年生だけどチームの中心に早くなってくれるといいよね。期待して育てていきたいと思います」
──繁永(晟=商3・大阪桐蔭)選手の海外での活躍をどう見ていましたか
「3年生なってね、昨日も練習やってるけど、毎日残ってこうやって自主練習やっているし。そしたら体も大きくなって力も、技術も付いて頼もしくなって」
──何か成長のきっかけとかがあったのでしょうか
「どうだろうね。大きくなるにつれ、しげだけじゃないだろうけど、ちょうど年ごろというのもあるかもしれないけど。3年生ぐらいになると伸びる子というのは。牧(秀悟=令3卒・現横浜DeNAベイスターズ)もそうだったけど大きくなるね」
──櫻井(亨佑=商4・習志野)選手は春リーグ苦しんでいるように見えた。どのような声掛けをしていたのか
「そうだね、やっぱキャプテンだから自分のプレーのこともそうだけど。チームのことを第一に考えてチームをまとめようとか普段からやってくれている子なので。どちらかというと言葉であーだこーだいうタイプではないので。自分の行動で、プレーで引っ張っていく子なので。すごく自分で打たなきゃとかそういう意思が強い子なのでね。プロ野球にも希望している子だから自分の結果も出さないといけないし。そういう点では苦しんだシーズンだったかもしれないね」
──櫻井世代と過ごす最後のシーズンになります。何か思いはありますか
「優勝経験がない代になっちゃっているのでね。4年間大学卒業する中で1回くらい、優勝というのを味わせて卒業してほしいなと思います」
──この夏、どのような計画を立てて練習を開始したのでしょうか
「リーグ戦春終わってから、9月9日開幕というのはわかっていたので。とにかくそこに向けて一人一人やるべきことを計画立てて取り組んでいましたね」
──監督ご自身の夏練習のテーマがあれば教えてください
「今回に限っては春あのような成績だったけど、やっぱり春のままではだめだと思うから。どこかで新戦力が出てきてほしいよという話の中で。メンバーじゃない子も計画立てて練習していますし。オープン戦とかは今年は早めに、7月からどんどん入れていたんで、いろんな子を実践の場でプレーさせたいと思って」
──今年の夏練習を通して目を引いた選手はいますか
「ショートの武井(仙太郎=商1・鎌倉学園)とかね。栗本(慎之介=経2・関東学園大附属)とか。佐々木(琉生=商2・健大高崎)とかね、あの子たちがそういう点ではこれから将来が楽しみ。」
──秋期待する選手は
「(偶然原崎選手が部屋に入ってきて)原崎(翔陽=文2・駿河総合)というピッチャーには期待してんだけどね(笑い)」
──長谷川(航汰=文2・札幌日大)選手も活躍されていますね
「今ピッチャーじゃなくて、野手でやっていてね。足が速いね。五十幡(亮汰=令3卒・現日本ハムファイターズ)クラスだね」
──熊谷選手今日投げられましたけど、二刀流起用も
「二刀流というかっこいいほどじゃないんだけど。まあ両方ともいいもの持っているんで。今のところ両方で」
──シーズンは長いと思うが、監督流元気の秘訣を教えてください
「元気じゃないんだよー。物忘れが多くなって。(笑い)野球を若い子たちと一緒に本気になってやって。怒るときは怒って、褒めるときは褒めて一緒になってやっているからね」
──硬式野球部のインスタに投稿されていた、還暦を記念して、赤い服を着ての写真撮影もありましたね
「ユニフォームだろ!みんなが渡してくれたんだよ。赤いグローブもね(笑い)」
──秋の展望を教えてください
「さっきの話と一緒で、初戦というのがすごく大事になってきますね。日大というのはそれこそ、市川(祐)というピッチャーもいるしね」
──選手起用については
「メンバーとメンバー外みんなで9月9日を目指そうとやってきたので。さっきの長谷川もそうだけど皆川(岳飛=経3・前橋育英)が外野を守っていたけど、皆川にも誰が外野守ってもおかしくないんだからという風に言って。本当に誰が出てもいいような準備をしているつもりです」
──東農大が1部に上がってきました。印象としては
「本当にこの前の入替戦も打線がつながってすごい打つなというチームで。ピッチャーも力がある。1部2部関係なくね、その時の調子とかにもよるけれども、どこも強いと思います」
──秋リーグのキーマンとしては
「ピッチャーで言えば、去年の西舘みたいな感じじゃないけど、岩城(颯空=経3・富山商業))も山口も今村も三奈木(亜星=商3・浦和学院)も、子安とかも。みんな今日みたいな感じで頑張れるかどうかだし、バッターも繁永が力をつけているし、4番打っている櫻井が核になって、松嶋(晃希=経3・浦和学院)や皆川も力つけてきているので。キーマンは本当に全員、全員野球なんだよね」
──チームの仕上がり状態は
「まあまあだと思いますよ。大きなけが人もいるわけではないし。気持ちの方も上がってきているような感じで。今日もオープン戦の相手チームの監督さんから気合入っていましたねと言われたし。そんな感じでいい状態で来ていると思いますよ」
──ここを見てほしいというところを
「うちは、明るさを、はつらつとプレーしているところかな」
──東都ファンにメッセージを
「レベルの高いリーグだと思うし、そこの中で戦わせてもらっているので、うちがちょっと優勝が何シーズンか遠ざかっちゃっているんで。名門中央で優勝を見せられるように頑張ります」
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