2022年に創部初の2部降格を経験した中大ラグビー部。創部100周年という節目を迎え「一意奮闘」のスローガンとともに挑んだ今季のリーグでは、中大らしい粘り強いゲームを展開し見事2部優勝を果たした。
12月15日(日)に開催される1部・2部入れ替え戦を前に、監督、コーチをはじめ、中大ラグビー部の躍進を支えた選手らの思いを全5回にわたってお届けする。
第1回は、井上淳孝監督と山北純嗣ヘッドコーチです。監督、コーチから見た今年のチームの雰囲気などについてお聞きしました!
————————————————————————————————
<井上監督>(聞き手、構成:福田菜緒)
▲選手たちに指示と出す井上監督
———前任の松田雄監督の方から引き継いでる点や、反対に井上監督が新たに取り入れた練習や取り組み、精神はあるか。
「前任の監督って、(自分が)25、6年前、監督をやっていて、中大で、その教え子なんですよ、松田監督は。だから、いろんな経緯があって、(もう一度)監督を引き受けたんですけど、特に真新しいことはやってはないんです。そういえば、この5月からね、食事が変わったの。やっぱりラグビーって、体を作らなきゃいけないじゃん。だから、まず食事をちゃんとしなきゃっていうので、(監督に就任した)1年目からやったんだけど、なかなかこううまくいかない部分もあって。で、今年の5月に、キャプテンの要望もあってね。まだ試行錯誤の段階なんだけど、今日のお昼も、ボランティアのおばちゃんがいて。手伝いにきて作ってくれたりとか。俺、普段の仕事で農業もやってるのね。だから、お米も作るし。野菜も作るから、今日は大根とお米持ってきて。で、昼間にその人が調理してくれて。そこは変わったところかな。食事がちょっと変わった」
———リーグ戦では、山梨学院大戦で敗戦した後、5連勝を飾っていたが、敗戦した際に選手に対してどのような声かけをしたのか。
「最初の2試合目かな。山梨学院大とやったのは。選手もね、そこが結構山だと思っていたので、すごく落ち込むところはあったと思うんですけど、 始まる前からっていうかね、選手にはあまり言ってなかったんですけど、やっぱり、力が似通ったチームは4チームぐらいあったので。専修でしょ、うちでしょ。あと拓大、山梨学院。そこはもう本当、勝っても負けてもおかしくないような感覚で入っていたので。専修戦が結構ポイントで。そこで勝てたから、あと残りの3試合勝てたと思います」
———ターニングポイントとなったのはやはり専大戦か。
「そうですね。専修には去年負けてたんでね。もう負けたら2敗になっちゃってね、入れ替え戦が見れないんじゃないかなっていう感じだと思うんですよ。今回もほら、うちもそうだけど、上位の2チームって1敗しかしてないでしょ。だから2敗しちゃうと、もう駄目だっていう感覚がみんなあったので、山﨑キャプテンも、山梨学院に負けたときは、やっぱりね。チームとしてもこういうふうになった(落ち込んでしまった)」
———2部に降格されてから初の入れ替え戦となったが、これまでの中大にどのような強さがプラスされた結果、入れ替え戦進出を果たすことができたと考えているか。
「ラグビー以外の面で、 うちの部訓ってね3つあって、礼節とかね、あと時間的観念とかね、 清潔性とか、3つあるんですけど、ラグビーのことは全然うたってなくて。やっぱりラグビー選手である前に、うちの学生じゃん。だから、そういうところができてないと、人としてのあり方とか、コミュニケーションの力とか、やっぱりそういうものってすごくラグビーに求められるので。今でもできてるとは思わないんだけど、そういうところが結構、おざなりとは言わないけど、あまりうるさく言われてなかったみたいなところは、(監督に就任した)最初の1年目に感じたので。でも、今ができてるかって言ったら、ちょっと微妙。でもね、人数少ない分、みんなまとまってるところはあるので、 そういうところの強みっていうのかな。やっぱり強みを生かしてやってけば、いい結果が出ると思うので」
———吉田晃己(法1)選手というキックのいい選手が入ってきたと思うが、戦術で変えた点はあるか。
「特にね、山北ヘッドコーチ、あと、佐藤くん(佐藤りゅうせいBKコーチ)が見てるので。あと、学生。学生主体って言っちゃ変だけど、学生の意見を結構取り入れて、山北も練習とか組み立てたり、現場に立ったりしてるので、 結構ラグビーって真ん中の線っていうかね、HO(フッカー)とかLO(ロック)とか、あとNO8(ナンバーエイト)とかSH(スクラムハーフ)とか、SO(スタンドオフ)とかで、吉田(晃)の15番(FB・フルバック)。縦の線が結構いい選手いれば強いチームなので。中央はそういう面でも、いいチームだと思うしね。関東学院も、そこの縦の線、やっぱりいい選手がいるので。 だから、そういうところの潰し合いじゃないけど、そういうところにプレッシャーかけて、ほら、ラグビーって陣取り合戦だから。なるべく敵陣にいれば、 変な話、3対0でも勝ちは勝ちじゃん。で、点取れなくても、ずっと80分間ここ(敵陣)にいて、相手とやっていたら、0点かもしれないけど、相手も0点じゃん。だから、本当どこにいるかっていうのがすごく大切だから、 なるべく敵のエリアで勝負できるのがいいチームだし。どこのチームもそうなんだけどね」
———監督から見た各学年の印象は。
「やっぱり各学年特色があると思うんですけどね。4年生は4年生で山﨑キャプテンがよくまとめてると思うしね。全体的にやっぱりみんな大人しいから、俺の現役の頃から比べたら。 内輪では多分仲いいと思うんだけど、体外的なコミュニケーション力とか、あとはだんだん良くなってきてるけど、練習中に声出しあうとか、 そういうところが多分もっと密にできてくれば、もっと強くなると思う。まだまだ本当発展途上で。各学年の特色はなんだろう。よくわからない」
———監督から見て、リーグ戦を経て、最も変化した選手は。
「みんな、専修大学が終わってからは、もう本当1試合1試合負けたらもう終わりだと思って、やってたんで。だからみんな、プレイってよりも、意識の変化というか、勝つことによって、基本的な日常的なことの大切さとか、 それが出てるかどうかわかんないけどね。そういうところは意識をしてるのかな。で、ちょうど今年100周年だったでしょ。取材も受けて、色々ねありがたかったんですけど、そういうところで意識してる学生も多少いるのかな」
———入れ替え戦でキーマンになるだろうと考えている選手は。
「やっぱりさっき言った、キーマンとなる選手はライン。キッカーにしろLOにしろ、あと、キャプテンにしろ。 あと、SOの須田くん(須田龍之介・法2)とか、あとは吉田(晃)。
そこがやっぱりゲームを作る選手なので。あと、基本となるのは、さっきの陣取り合戦じゃないけど、セットプレーでさ。4つあって、それはもう決まった形からスタートするやつ。スクラムとラインアウトとキックオフ、あともうドロップアウトってあるんだけど、その4つ。ドロップアウトってそんなないけど、基本はスクランプとラインアウト。で、ちゃんとボールが取れてれば、ある程度ゲームで成り立つ。だからスクラムで押されちゃうとちょっと分が悪くなるし。さっきスクラムでペナルティー取られてタッチ切られると自陣になっちゃうじゃん。そうするともう陣取り合戦って負けちゃってるからさ。そういうことが多いと勝てないし、 多分みんなそういうのは、もちろんわかってるけど」
———入れ替え戦への意気込み
「当初の目標の1部に昇格というのは、キャプテン、みんな目標だったんだけど、山梨学院に負けたことによって、 入れ替え戦に本当に行けるのかなっていう雰囲気も流れてね。それで勝って勝って勝って良かったっていうのが多分終わった直後の感覚。でもここで勝たないと、今までやってきたことの目標が達成できないじゃん。だから、もう1回意識をこう締めるっていうか、もう1回、こう原点立ち戻って、ここで勝たないとダメなんだって、今度勝っても負けても1試合だしさ。で、負ける勝つじゃ大違いだし、だから、勝ちにこだわるんだよということは、みんな集中してやってると思うので、まだ、今日はちょうど10日ぐらいあるから、だんだん、だんだん、意識の緊張の度合いも増して、これからだと思うので。来週の1週間も大切だし、1日1日大切だから。そんな感じでやってます」
〈山北ヘッドコーチ〉(聞き手、構成:小林想)
▲選手に指示を出す山北HC(中)
───今日の練習前、選手にどのようなことを伝えてたか?
「今日はやっぱり、考えを繋ぐっていうか、自分たちが思ってることをより共有してプレーをしてほしいっていうのを伝えました」
「今ラグビーって色んな状況がその場で出されるんですけど、相手のディフェンスの状況だったり、そういう時にやっぱり1人の判断でやっちゃうと全部繋がらないんで、1番見えるポジションは外側なんで、外側のコミュニケーション・ボールキャリアに伝えてほしい、ボール持ってる選手を楽にさせてほしいって判断というところを伝えました」
───今日の練習の振り返ってどれくらいの点数が付けれるか?
「今日の練習、60点ぐらいですね(笑)はい」
───自分が現役の時と、今とでは練習方法や組織作りに変化はあるか?
「練習方法は全く違うんですけど、組織作りっていうところは昔は、今を悪く言うようじゃないんですけど、コーチ陣もそんなにラグビーがわからないっていうか学生主体だったんで、結構その中で自分らで考えてやってたんですけど。
今のラグビーって自分たちで考えるっていうところも限界があるような、結構入り組んで難しくなってるんで」
「学生と一緒に話をして『一緒にこういうことをやろうと、こういうプランでやっていこうと思うけどどう?』ていうのをまずグラウンド外でやって、寮でやって、それを持ってきて、あどでグラウンドで試してみるていうふうにしてますね。全て」
───ミーティングはどれくらいやられてる?
「スモールミーティング含めると、リーダーはほぼ毎日、全体は週4回くらいですかね」
───今自分が中大のキャプテンだとしたら、今の中大ラグビー部に入れ替え戦前どのような声を掛けるか?(HCは中大のキャプテンを務められていた)
「やっぱり総力戦だと思うんで。メンバーだけとかじゃなく、今日監督も言ってましたけど全員で何か1つ形にして、このチームを終えようっていう。
やっぱり4年生もね、あと2週間で終わるわけで。このチーム自体はもう2週間で解散なんで。限られた時間を噛みしめてじゃないけど、2度と戻ってこないんでそういう時間、大事にしようっては伝えますかね」
───東福岡(高校)やトップリーグでの経験を踏まえて、大学ラグビーの魅力とは?
「大学ラグビーは何なんですかね、大学ラグビーほど熱いものはないですね。
なんだろうね。何も考えずに、ラグビーだけに向き合ってできるのが大学ラグビーかな。社会人になったらね、やっぱ仕事っていうところもあるし。
高校生はまだそんなないんで。楽しくてやってるって感じ。大学ラグビーはチームのためにと。
みんなね、1つ屋根の下で寮生活してるんで、そういう仲間のためにみたいなところがすごいいいですね(笑)好きですね」
───HCの入れ替え戦経験を踏まえて、選手ではなくHCの立場でどのように挑む?
「そん時は僕ら上で。下から突き上げなんで負けられないっていう気持ちだったんですけど、 今は別に失うものないんで。自分たちのラグビー、山崎組っていうチームを表現してほしいなと。
それが結果に結びつくかなっていう。結果ばっか求めてもしょうがないと思うんで。勝負ごとなんで。勝ちも負けもあるし、やっぱ自分らが出せるベストを尽くしてほしい。それぐらいですかね」
───ずばり、入れ替え戦のキーになる選手は?
「FWはキャプテン、BKは10番と15番ですね」
───2部に降格してから初の入れ替え戦となるが、これまでの中大にどのような強さがプラスされた結果、入れ替え戦進出を果たすことができたと考えているか
「団結ですね。やっぱり当事者意識を持って、みんながやっぱ心の底からこのチームで勝ちたいって思うかどうか。そこがやっぱ3年間でキャプテンがそういうところをすごく言ってるんで、体で示してるとこもこう伝わってるんじゃないかなと思います」
───ラグビーのキャリア、どうして中大を選ばれた?
「なんすかね、なぜ中大。ユニフォームもかっこよかったし。中学の頃からラグビーやってたんですけど。もう中学の頃に中大っていうところを見て、ラグビーマガジンで。いいのかなって思ってて。
そしたら高校の方から話あったんで、大学の方からも話あったんで、じゃあ中大でって感じで」
───4年間の学生生活、部活の思い出は?
「3年生まで全部いい結果じゃなかったんですけど。4年生の頃はキャプテンやって、 1個ずつこう勝ってって、5連勝して、 優勝決定戦みたいになってたんですけど、そん時にスタジアムのスタンドっていうところ、1試合勝っていくごとにファンが増えてそれが嬉しかったですね」
───寮生活の思い出は?
「寮生活は少人数なんで。みんな仲いいんで。その当時は庭でバーベキューしたり。チーム行事は楽しかったですね」
───今のチームの雰囲気はいかがでしょう?
「いいんじゃないかなと思います。楽しそうだし、昔よりは上下関係ないですけど。
けどみんなキャプテンのためにとか、勝たせてやりたいとかいう思いが本心からあるんで。
誰もなんかチーム負けろとかも思ってないし。本当に心から勝ってほしいってみんな思ってるんじゃないですかね。1年から4年まで」
───最後にインカレの抱負を
「全員でね、最後1勝。泣いても笑ってもラスト1戦なんで、勝って終わりたいなと」