パラリンピック特集企画第一弾はパラカヌー日本代表瀬立モニカ選手です!高校生の頃からパラカヌーを始め、リオデジャネイロパラリンピックでは8位入賞、他にも数多くの世界大会に参加するなど日本のパラカヌー界の未来を背負う存在です。今回はそんなモニカ選手にパラスポーツについて自身の見解を語っていただきました。
(取材は10月中旬にzoomで行いました)
ーーパラカヌーを始めたきっかけを教えてください
東京2020のパラカヌーが私の地元である江東区でやるかもしれないということで、江東区が区の税金を使って区民からパラカヌーの選手を発掘しようという取り組みが始まりました。私はカヌーを経験していて、足も怪我していたし、年齢も若く、三拍子が揃っていたので区の方から声をかけていただいた形で始めました。
ーー高校生の時に深刻な怪我をしてしまったということですが、その時の心境は
自分ごととして受け入れないことで自分の気持ちを保ちました。あまりにも生活の変化が激しかったです。今まで普通に歩いて何も考えずにどっかに行っていたのが車椅子を使って生活をしなくてはいけないってなった時には、自分自身高校一年生でまだまだ若かったので、大きいショックでしたね。
ーーそのあとリハビリ期間が1年間ありましたが、モニカ選手にとってそれはどんな期間でしたか
東京2020のパラリンピックが決まった時というのはまだ入院中でバットの上でした。もちろん開催するということは知っていたが、その時はスポーツどころではなかったです。自分が半年くらい高校を休んでしまって、差が開いてしまったので勉強を頑張らなくてはいけないと思った。あとは自分の生活の変化です。朝電車に乗って学校に行くみたいなあたりまえにやっていた生活を送るのが本当に大変で慣れるのに時間がかかった。ですのでスポーツどころではなく、スポーツのスの字もでないほどだった。
ーーリハビリ期間で1番辛かったこととは
勉強が遅れてしまったということも自分にとってはショックでした。あとは自分が得意だった体育の授業で車椅子のため、何ができるできないを聞いてもらえず、車椅子=見学という扱いをされたことですね。そういうことを授業で経験したりして、自分自身は何も変わってないのに車椅子に乗っているということだけでそういうふうに判断されてしまうということが、人間こんなに変わってしまうんだなと思い
ーーパラカヌーの魅力はどんなところですか
水上はバリアフリーという言葉があります。私たちが車椅子で生活していると陸では階段や段差があって行けないとか、不可能な部分があります。しかし水上に出てしまえば階段とか段差はないので、他の人と同じようにいろんなところに行けて、同じように競技ができるのはとても魅力だと思いますね。注目してもらいたい点はスピード感ですね。カヌーは水上のF1とも呼ばれています。最初船が完全に止まったところから一気にスピードが上がるのは生で観るととても迫力があります。
ーーコロナウイルスの影響でパラリンピックが延期となり、モチベーションを保つのは難しかったと思われますが、どう工夫されていましたか
目標を作ることを常に意識していました。延期が決定してから2週間後くらいに時差でモチベーションが上がらなくなってしまった時期がありました。じゃあどうしたらいいのかと思った時にまずは1日の中での目標を立てることから始めて、それができたら次は1週間の目標を立てることを意識してみて、そこから1ヵ月先、そしてパラリンピックと自分のビジョンが明確になった時に今自分がやるべきことが自分のなかにストンと落ちて、モチベーションというものを保てるようになったと思います。
ーー現在はどんなトレーニングを行っていますか
石川県の小松市の木場型カヌー競技場というカヌーのナショナルトレーニングセンターで練習をしています。普段の練習はカヌーを漕ぐ水上練習の他にウエイトトレーニングと有酸素運動を鍛えるために手で漕ぐ自転車をやっています。あとは体の軸を作るためのフィジカルトレーニング。おもりを持たないでバランス感覚を養ったりしています。
ーーパラスポーツにかける想いを教えてください
自分自身がパラスポーツをやる意義は社会と繋がるきっかけを見いだすためでした。パラカヌーを始めてから練習場に行くのに電車を使ったり、カヌーをする時にコミュニケーションをとったりだとか、今ではパラカヌーをすることでいろんな人と繋がることができる。あと、最近ではたくさんの人がパラスポーツを話題にしてくれていますが、私たちのようにパラリンピック選手として外に出れている人ではなく、まだ外には出れていない障害を持った人がこの世にはたくさんいます。なので私たちがパラスポーツをやることでそういう人たちが外に出るきっかけにもなってほしいし、健常者の人たちにはこういう人たちがいるということを知ってもらいたいです。
ーーパラスポーツの凄さとは
オリンピックの選手はゼロから頂点を目指していくと思いますが、パラスポーツの選手はハンディを持っているのでマイナスからスタートして100を目指している。そこの振り幅に魅力を感じます。基本的にパラスポーツの選手たちはできないとか無理という言葉は使わず、どうやったらできるのかということを考える精神力がある。そのようなタフさは実際関わってみると分かるし、そういった面が多くの人に伝わってほしいと思いますね。
ーーパラリンピックが来年に開催されますが、どんな想いで臨みますか
やはり生まれ育った江東区で、パラカヌーが開催されるということもあって今までお世話になった方々に自分がここまで成長したんだよという姿を見せたい。そして、地元で皆さんと一緒に最高の時間をメダルをとって共有したいという想いがあります。目指すは金メダルしかなく、現在それがモチベーションとなって練習をしています。
ーーありがとうございました!
◆お知らせ◆
次回は東京2020パラリンピック出場を目指す、パラカヌー高木裕太選手です!お楽しみに!