新型コロナウイルス感染拡大の影響で、紙面上での7月号(第160号)製作を行えないことが決定致しました。そのため変則的な形ではありますが、この中大スポーツWEBにて、7月号製作に向け部員が執筆してきた連載記事や、この時期にふさわしい記事を選別し公開することとなりました。
今回の記事は、毎号連載しているコーナー「人生いろいろ」第121回です。
各界で活躍するOB・OGを訪ねる「人生いろいろ」。第121回は山岳部監督を務める猪熊隆之氏(50)です。中央大学法学部卒業後に天気予報士の資格を取得し、現在は山の天気予報を専門に発信する株式会社「ヤマテン」の代表取締役を務めています。平23年から山岳部監督に就任し部員の指導を行っている猪熊氏に山岳の魅力やコロナ禍の状況など語っていただきました!
ーーコロナで活動が制限されていますが、どのような状況ですか
部員とオンラインミーティングをして「今できることは何か」模索しながら活動をしています。私自身、2度の滑落事故の経験や交通事故、病気で4回死にかけたことがありまして、どんなことにも意味があると思っています。このような困難な状況にも何か意味があるのではないかと思って向き合いながら活動しています
ーーなぜ4回も困難な状況から生きてこられたと思いますか
「まだお前は社会のためになってないんだろ」って神様が言っていたんだと思います(笑い)。滑落してなかなか助けが来なかった時は、厳しい訓練の記憶を思いだして「これよりも辛いことがあった。あれを乗り越えられたから今回は大丈夫」と思っていました
ーー監督に就任した経緯を教えてください
監督就任前は山岳部のコーチをしていましたが、けがで山に登れなくなってしまって、部屋に飾っていた山の写真も捨ててしまうほど山と距離を置きたい時期がありました。当時の監督や部員にその気持ちを伝えようと思い「辞めたいです」といざ話そうとしたときすでに彼らは家族のような存在で、自分の居場所は山しかないんだとわかりました。そこからコーチを続け、お声がかかったので監督に就任しました
ーー監督に就任して大変なことはありますか
自然と戦いなので活動が死と隣合わせだということです
ーー監督をしていてやりがいを感じることはありますか
若い人たちに関わることは大きいです。会社には20代が一人しかいませんし、若い人の考えていることことを聞くのはとても楽しいですね
ーー山岳の活動にとってのやりがいはなんですか
達成感や充実感、高揚感で山を無事登り終えて日常に戻ると何をしていても幸せに感じます。全てが当たり前じゃないんだなと。また、山に登る際は計画を練って、本当に大丈夫かと何度も計画を練り直し、実行するという作業をします。この作業は登山だけでなく、社会に出ても役に立ちますね
ーー中大生へのメッセージをお願いします
もっと挑戦をしてください。「失敗は成功の近道」。どんどん挑戦して、失敗を経験してほしいです
〈猪熊隆之氏・プロフィール〉
なまえ:いのくま・たかゆき
生年月日:昭和45年8月1日
出身地:新潟県
趣味:マラソン・登山・雲を見ること
座右の銘:人のために火をともせば我がまへあきらかなるがごとし
写真:猪熊氏提供 構成:西尾波留子