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【特集・菅平合宿から】「頂点を目指すチャレンジャー」として 三大駅伝、大躍進へ

▲菅平合宿のようす

2022年9月 長野・菅平高原

今季すでに10年ぶりの三大駅伝出場を決めている中大。例年とは違い、6月の全日本大学駅伝選考会や10月の箱根駅伝予選会へ合わせる必要のない夏を迎えた。今夏のテーマは「ハードワーク&ハードリカバリー」。主力の多くが実業団合宿に参加する中、中間層を見てきた藤原正和駅伝監督は青学大や駒澤大に対抗しうるために「そこのもうひと伸びが必要不可欠」と話す。(記事:杉浦瑛俊)

取材は9月14日に行いました。

予選のない夏

9月中旬。まだまだ暑さの厳しい東京から新幹線と車で約2時間半。標高1200mを数える菅平高原で中大は夏の最終合宿を行った。

「例年は予選会があって、ピリピリとした雰囲気があったのですが、それがなく和やかに過ごせているのかなと思います」

若林陽大主将(法4)はチーム状況の変化を感じ取っていた。自身の入学時と現在とでは選手の意識が大きく変わった。高い目標を持つ選手が増えたという。「監督についていくという意識が高くなったというのが一番大きいですかね」。

1月3日、芦ノ湖。3年連続、6区で若林主将に託された真紅の襷は、シード権獲得の知らせとともに大手町に戻った。と、同時に中大にとっては10年ぶりとなる三大駅伝出場が決まった。

▲1月3日。箱根駅伝6区を走った若林主将(左)(©関東学連/月刊陸上競技)

「シード権獲得」の躍進は、今夏の強化期間の組み立てに余裕を生んだ。「箱根駅伝の予選会などがあった場合は7月の中旬から走り込みに入っていましたから、そういう意味では予選会が無いということを気楽に捉えて、強化のスタートに余裕がありました」

藤原監督が話すように、5月の関東インカレ、6月の男鹿駅伝、7月のホクレンとチームとして波をつくり山をもっていくには、選考会や予選会を経ないことは非常にポジティブとなった。

主力の伸びと中間層の“もう”ひと伸び

「仕上げも通して、夏は高地あるいは準高地でやりたいとずっと思っていた」

テーマは「ハードワーク&ハードリカバリー」。今夏は志賀高原から蔵王などを経てこの菅平合宿に入った。就任から7年目にしてようやくそうした思いを形にできたことに、藤原監督は「非常にプラス」と話す。

部内の意識は高い。「ひとりひとりがチームの目標に貢献したいという思いを持って試合に出ている」(若林主将)。4年生と監督で、上半期で全員が目指せるものという意味も込めて「自己ベスト更新年間120回」のチーム目標を立てた。

▲関東インカレでの中野翔

箱根駅伝4区で好走した中野翔太(法3)は安定した記録をマークし、学生個人と関東インカレでは表彰台に立った。「トップは取れていないので、そこはまだまだ同じ組の中でトップで帰ってくる力はないかなと思っています」と貪欲にトップを目指す。それは箱根駅伝への思いも同じ。「(エース区間である)2区を目指さないといけない、僕が走らなければいけないというのはあるので、今のうちから準備をしていきたい」

関東インカレ ハーフマラソンで存在感を見せた山平怜生(法2)は「上半期は結果を思ったより出せた。同学年では阿部(陽樹、文2)が1番強いので、少しでも追いつけるように」と、同期の背中をとらえる。

▲上半期けがに苦しんだ吉居大

一方で「大学入って走れない故障は初めて」と振り返った吉居大和(法3)。春先からの故障明けとなったホクレン千歳大会で復調をアピールしたものの、再びけがに陥った。走れない期間で見えたのは「みんな頑張っているという感覚」だった。

「同級生の中野翔や1年生の弟(吉居駿恭、法1)、溜池(一太、文1)であったりは、トラックシーズンいい練習ができていて。合宿は中野翔であったり2年の阿部は練習自体もしっかりと消化できているのを見ていたので、駅伝シーズンが楽しみ」と、一歩引いて部内の状況を見つめていた。自身については「故障で感じたことを走りにつなげていければ」とし、「出雲駅伝には間に合いそうです。多分出雲は走ると思います」と話した。

主力が実業団合宿で練習を積み、部では中間層が走り込みを行う中で、藤原監督は1年生2人の名前を挙げた。

「吉居駿、溜池と抜け出しつつある中で、続く選手という意味では伊東夢翔(経1)がいい練習をずっとやってきています。もう1人は白川(陽大、文1)ですね。誰よりも練習はしていますので、いいタイミングでレースがあればかなり爆発力もあるのではないかなと思っています。1年生ではこの2人が夏の収穫ではあったかなと」

▲ホクレン千歳での伊東夢

伊東夢はGGNから関東インカレ、そしてホクレン千歳大会とコンスタントにレースを走ってきた。

「結果が伴わなかったことが上半期はたくさんあったかと思うのですが、作ってきた下地にしっかりと上積みをできるまでやってこれたということは、そういう選手は必ずどこかで化けるといいますか、変化を起こす時が来ますので、今年の秋が楽しみだなと見ています」と監督は期待を込めた。

三大駅伝、大躍進へ

「全体としては、今年は中間層を見てきて、そこに関してはやりたい強化はほぼできたかなと思っています。そして、そこがうちの今年のチームの鍵を握っているといいますか。その子たちが上にチャレンジしていくということを常にやっていけるような意識にしていかないと、次代の選手が育ってこないですし、青学大や駒澤大をはじめ、選手層の厚いチームに対抗しうるには、そこのもうひと伸びが必要不可欠ですので、それが達成されると練習のレベルをもっともっと上げることができますし、上の選手が危機感を覚えてもっとやらなきゃという部分が出てくると思います」

▲藤原監督は「まだまだチャレンジャー」と話す

「夏前の状況より力をつけてこられたのは間違いない」。そう自信をのぞかせた監督。中間層の底上げと主力の力を掛け合わせ、厚い選手層を実現させる。

「頂点を目指す発展途上のチーム、まだまだチャレンジャー」というが、出雲駅伝に関しては「どんなオーダーを組んでも5番以内は目指せるのでは」と話す。三大駅伝、大躍進へ─。全日本、箱根ともに3位以内をつかみ取るために、まずは確実に初戦の出雲駅伝を取りに行く。

(取材、写真:杉浦瑛俊、二村沙羅、松本あゆみ)

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