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さあ行こう!93回目の箱根路へ~東京箱根間往復大学駅伝競走予選会展望~

いよいよ明日に迫った箱根駅伝予選会。多くの学生ランナーが箱根駅伝出場を目指し、予選会が行われる立川を駆け抜ける。

予選会は各校12人までが出走でき、その中から上位10人の合計タイムで争われる。今大会は昨年の記念大会から枠が1つ減り、10校が本戦への出場権を獲得する。中大にとっては7年連続の予選会出場となる。今回も前回の全日本予選会展望に引き続き、明日の予選会での戦いについて中大を中心に徹底的に分析していきたい。▲今年も笑顔であふれる「中大モリモリ」が昭和記念公園で見られることを期待したい

まず、今大会は何と言っても今までの箱根を彩ってきた伝統校の出場が目立つ。中大を始め、早大、日大、明大、日体大と、この5校だけでも95回を数える箱根駅伝で総合優勝回数は半分以上の50を超える。さらに大東大や山梨学大、神奈川大など優勝経験のある大学が予選会に集まる。まさに近年の『戦国駅伝』を象徴する混戦と言っても良いだろう。▲箱根駅伝優勝回数2回以上の大学一覧。白抜きになっている大学は今回の予選会出場校。

中大は今回、予選会出場校で唯一エントリーメンバー14人全員の1万㍍参加資格タイムが29分台と、選手層の厚さを誇る。試練の夏を超え、先日行われた中大記録会で多くの選手が自己ベストを更新した結果が反映されているようだ。去年は堀尾謙介(現・トヨタ自動車)や中山顕(現・Honda)といったダブルエースに頼ることが多かった中大。しかし今年は大エースはいなくとも、チーム全員で93回目の箱根本戦出場権を掴み取る布陣はできた。▲エントリーメンバー1万㍍のベストタイム比較表。上位10人のベスト平均タイムは29分16秒15

予選会は去年から、従来の20㌔からハーフマラソンの距離に相当する21.0975㌔で競う。約1㌔伸びたことにより、選手の真の力がより顕著に結果に現れるようになった。さらに予選会のコースは公園内に入る後半にアップダウンがあるため、レース終盤で選手や大学の順位が目まぐるしく変わることが多い。これも予選会の大きな特徴の一つと言える。

1万㍍上位10人の参加資格平均タイムは早大、明大に次ぐ3番目の29分23秒。参加資格タイムとは2018年1月以降のトラックでの公認記録である。舟津の1万㍍自己ベストは2017年の11月に八王子ロングディスタンスで出した記録であるため、今回の参加資格タイムには反映されない。▲予選会出場校の1万㍍上位10人参加資格平均タイムランキング *秒以下は切り捨て表記。赤線は予選会ボーダーライン

しかし予選会と同距離に相当するハーフマラソンのベストタイムに目を向けると、余裕を持つことはできない。チームは舟津彰馬駅伝主将(経4)の62分台を筆頭に63分台が2人、64分台が6人となっている。

当日の気象条件等もあるが、参考に去年の個人100番目の選手のタイムが64分34秒だった。「チームの10番目の選手が100位以内なら上位通過、120位以内なら通過はほぼ確実」という『予選会の法則』があるだけに、3位以内での通過を目指す中大にとってはなんとか10番目の選手が65分切り、あわよくば64分半程度でゴールしたいところだ。▲エントリーメンバーのハーフマラソンベスト比較表

中大は予選会3位以上での突破を目標に掲げているが、今回の予選会で特に上位での突破が予想されるのは東国大、明大、早大か。この3校は全日本予選でもトップ3で通過した大学だ。

東国大は1年生留学生のイェゴン・ヴィンセントや、今大会唯一のハーフマラソン日本人61分台を持つ伊藤ら力のあるランナーが多い。明大はエースの阿部や中島といった上級生を欠くも、総合力は高い。早大も太田智や中谷、千明など世代を代表するランナーがチームを引っ張るだろう。他にも虎視眈々(こしたんたん)と上位を狙う大学が多い中、中大はどう立ち向かっていくのか。期待が高まる。全日本予選で、早大の主力である太田智(右)と千明(左)としのぎを削る森凪

出走選手全員の好走が予選会突破の鍵ではあるが、中でも今回チームの中心となるのは舟津、池田勘汰(商3)、森凪也(経2)、三浦拓朗(商2)の4人だろう。

「自分としては日本人トップを争うくらいの練習はできていると思うので、そこに向かってやっていきます」と意気込みを語る舟津。先頭集団はどのようなレース展開となるだろうか。去年は留学生の走りにも引けを取らない塩尻(順大・現富士通)や片西(駒大・現JR東日本)、堀尾、浦野(国学大)、阿部(明大)ら各校の名だたるエース達が日本人集団を形成し、高速レースが展開された。▲去年の予選会の先頭集団の様子 右から塩尻、浦野、堀尾、片西

しかし今年は明大の阿部が予選会を欠場するなど、誰が集団を引っ張るのか予想しづらい。互いに牽制しあいスローな展開になれば、留学生ランナーを起用する大学にとっては有利になる可能性は高い。誰かが果敢に留学生に食らいつくのか、それとも東国大の伊藤、早大の太田や中谷、専大の長谷川、さらには舟津がレースの主導権を握るのか。各校の指揮官やエース達による思惑がぶつかりあいそうだ。▲去年圧倒的な強さで予選会トップとなった桜美林大のキサイサ

舟津にとって、箱根予選会は苦しみと喜びの両方を味わった大会だ。最上級生唯一の出走メンバーとして、プレッシャーは相当なものかもしれない。しかし、田母神一喜主将(法4)をはじめ4年生の想い、さらにはチーム全員の想いを背負い、最後の立川決戦に挑む。▲インカレ表彰台での舟津。舟津の笑顔が見られることを期待したい

3年生エースの池田にとっては今シーズン前半、悔しさを味わった。全日本予選では思うような走りが出来ず、落ち込むときもあった。しかしその借りを箱根で返すべくこの夏は人一倍走りこんだ。その取り組みの一つにマラソン練習があったという。「箱根の2区を走りたいと思ってて。そうなったらハーフの力だけでは走りきれないなというのがあり、監督と相談して30、40㌔走をしました。これが自然とマラソンにもつながるのかなと思います」(池田)。去年以上にスタミナのついた池田の走りがチームを上位へ導く。▲副主将として池田はチームを引っ張る

他校のエース達と勝負に挑む三浦と森凪。三浦は去年に引き続き2回目の予選会。森凪にとっては初めての予選会出走だ。「去年最後失速してしまったのでそこを粘れたら」と三浦が言えば、「ハーフに絶対の自信はまだないですが、控えめに言ってチャレンジする感じで頑張りたいです」と2人は中大記録会後、予選会に向けて意気込みを語ってくれた。

2年生は井上大輝(法2)と手島駿(商2)の2人もエントリーメンバー入りを果たした。「個人として主要大会でチームに貢献したことはないので貢献したいです」と、井上も中大記録会後に意気込みを語ってくれた。今後の中大を担う2年生の走りにも注目だ。▲去年終盤に失速してしまった三浦。あれから1年、成長した姿を見せたい

先日行われた出雲駅伝で初優勝を飾った国学大や2位の駒大も去年は予選会に出場。2校の共通点はそれぞれ予選会を4位、1位と上位で通過したことだ。予選会校でも数年後に強豪へと躍進を遂げるケースは少なくない。「3位以内の通過」を果たし、今大会が古豪復活の足掛かりとなるか。まずは危なげなく予選通過することを祈るばかりだ。

記事・写真:「中大スポーツ」新聞部