▲試合中の田村氏(写真提供=いわきFC)
サッカーは「人生そのもの」
選手として、チームスタッフとして、そして監督として長くサッカーに関わっていらっしゃるなかで、サッカーとの関わり方や意識は変わったそうです。
──プライベートとサッカーは切り離すのか
監督をやって少し変わりましたが、監督をやっていると24時間365日サッカーのことを考えています。今こう話していても、頭のどこかではあの練習どうだったかとか、朝見たあの動画どうだったとか考えているから。それはもう職業病かもしれないですね。休まるとは何なんだろう、オフとは何なんだろうとちょっと思ってしまうけど、ずっと考えているからもうこれが当たり前です。別に会社に行かなくても、今の時代は作業はできるし、いろんなことを見れるし、SNSをやるといっても、どちらかというとサッカーの映像見たくてやる感じ。それこそオンとオフができたらいいとは思いますが、基本的に能力がないから追いつかない。自分でずっとスイッチを入れとかないととは思っているし。
──しんどくならないか
いや、しんどいんじゃない?(笑)でもそれがそんなに嫌だなと思わないのは、好きだからなので。いい練習をしたいし、選手にいい言葉かけもしたいし、いい指導者にもなりたいし、結果も残したいしと思ったら、人がやっていないこともやらないといけない。とにかく時間は限られててみんな平等にしかないから、どこかでちょっと努力しないと、というのはあるかな。
―監督にとってサッカーとは
人生だな。大学生まではサッカーとはなにかと聞かれたら、田村雄三を作ったものだと言えましたが、今は仕事としているし、振り返るとサッカーによっていろんなことを学んできたしいろんな人と出会ったので、人生そのものだなと今は思っています。
常に学ぶ姿勢と夢へのプロセスを大切に
ここまでサッカーにかかわるお話を伺いましたが、最後に、中大生にとって今後の人生のヒントになるような気持ちの持ち方やメッセージをいただきました。
──普段から大切にしている言葉や考え方は
先ほども少し話したように、 できないことをできないと言えるのが自分のストロングかなと思っていて、年下の人にも普通に聞けるし、監督をやっているから自分が最高だとは思わない、常に学ぼうと思っている姿勢というのは、ストロングかなと思っています。
──失敗や挫折への向き合い方で意識していること
挫折とか失敗の繰り返しだけど、結局は自分だから乗り越えられると思っていて、乗り越えられる人にしか課題を与えないと思っているから、そういうメンタリティーです。ピンチがチャンスだと常に思っているので。
──大学時代にやっておくべきだと思うことは何か
まずは英語。英語と、取れれば資格を取った方がいいかな。例えば簿記とか、夢につながる資格を取れていたらいいのかなとは思うかな。
──英語はやっておくべきだと感じる瞬間は多いか
いまだに英語を学びたいなと思う。でも今だったらパソコンかな。パソコン、英語、自分が今大学生で、サッカーをやっていなかったら留学するかも。留学していろんな人に出会って、英語もそのうちに覚えてしまってとか。今までは1つの企業に勤めて退職までというのが流れだったけど、今は転職は当たり前だし、結局自分の能力が問われるわけだから、自分の能力を向上するということと人との出会いやどういうタイミングでどういう人と会うことは大事だと思うので、旅をしろというわけではないけど、SNS上だけじゃなくて外に出ることは1つ大きなことなのかなとは思っているかな。
──夢に向かう中大生に向けて何かメッセージをお願いします
誰でも夢は語れるけれども、 その夢を実現するためのプロセスをしっかり持っていることはすごく大事だと思うし、そのプロセスに向かって自分がどういう環境でどういう人に会うかはすごく大事だと思います。自分の夢を実現するのは、自分がなぜそうなりたいのかとか強い意志が大事だと思うので、そこから逆算してのプロセスを作っていくことが夢を叶える1つのヒントというか、近道になるのかなとは思っています。
──ありがとうございました。
▲Cポーズのリクエストにも応えていただきました
【番外編】
スタジアムでサッカーを見たことがない人、抵抗感をもつ人に対し、田村氏が考えるサッカー観戦の魅力や入り口を教えていただきました。
「Jリーグに関わらずだけど、別にルールは分からなくていいと思うし、内容も分からなくていいと思う。ただスタジアムに来たら、ご当地もののキッチンカーがあってスタグルがたくさんあって、アルコールもあるし好きなものを飲み食いできる。どっちの応援もせずに目の前で綺麗な緑の芝の上を22人が一生懸命走っているな、それでファンやサポーターの方がすごい応援をしているなという感覚から入ってもいいと思う。そんな難しく考えずに、気分転換も含めてそういう熱狂空間に触れるということでもいいのかなと思うし、試合を見に行く感覚は人それぞれでいいと思います。もちろんすごくコアでもいいと思うし。触れることがなにかきっかけにもなるのかなとは思っています」
実際に大学入学後に初めてスタジアムでJリーグの試合を観戦した部員に話を聞くと、「サッカーの知識はなかったけど楽しかった。点数が入ったり、惜しい瞬間のスタジアムが揺れる感じは、生観戦でないと得られない面白さだと思う」と満足度は高いようでした。
取材中、明るく笑い話も盛り込みながら、丁寧に質問に答えていただきました。勝利と育成のバランスが難しい中で、監督として一番のやりがいは、移籍という形だとしても選手の成長だというお話が印象的でした。いよいよ来月、Jリーグは2024シーズンが開幕します。J2リーグで2シーズン目を迎える、田村監督率いるいわきFCの活躍に注目です!
◆田村雄三氏プロフィール◆
たむらゆうぞう 1982年12月7日群馬県生まれ 中大在学時代は2003年、2004年に関東大学選抜に選ばれるなどの活躍をし、卒業後は湘南ベルマーレに入団。2010年に現役を引退すると、同クラブの強化部スタッフに就任。2017年にいわきFCの監督に就任。一度退任した後、昨年6月に約2年ぶりに復帰した。
◆いわきFCについて◆
福島県いわき市をはじめとする1市6町2村をホームタウンとしているJリーグクラブ。クラブ創設から6年でJリーグ参入を果たし、1年目でJ3優勝、2年目の昨年はJ2で18位という結果を収めた。ホームスタジアムはハワイアンスタジアムいわき、クラブハウスは日本初の商業施設複合型クラブハウスとなっている。
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