9月13日 岐阜メモリアルセンター長良川競技場
陸上競技の花形種目・4×100㍍リレー。この種目を得意とする中大は昨年まで全日本インカレで六連覇という偉業を成し遂げてきた。前人未踏の大会七連覇と中大が2010年に樹立した38秒54という学生記録の更新を目指し今大会を迎えた選手たちだったが、その壁は想像よりもはるかに高かった。
▲表彰時の4人。その顔に笑顔はなかった(左上から飯塚、染谷、左下から宮城、大久保)
今年は中大を含めた3校が38秒台をマークするなど、予選から高速レースが繰り広げられた。昨年、中大が六連覇を達成した際のタイムが39秒15だったことを考えると、そのレベルの高さがうかがえる。「本当に予選のタイムは良かった」と第1走の宮城辰郎(理工4)は振り返る。そして、ついに訪れた決勝の瞬間。張り詰める緊張感の中、宮城がスタートを切ると、バトンを受け取った染谷佳大(法3)はエース区間で渾身(こんしん)の力を振り絞る。しかし、この時点で筑波大が優位に立ち、中大は追いかける展開に。続く3走の飯塚拓巳(法3)が加速し前を走る筑波大に迫るも、アンカーの大久保公彦(文4)がラストスパートで及ばず筑波大、順大に次ぐ3位でフィニッシュ。ゴール直後、静かに天を仰いだ大久保はこみあげる悔しさから頭を抱えてしばらく立ち上がることができなかった。
▲苦しい表情でゴールに飛び込む大久保
「誰が悪いとかではなくて、負けたのは実力不足」(宮城)。中大の決勝記録は38秒94と予選に続き昨年の優勝タイムを上回っていた。しかし、それでも3位という結果に終わった今回のハイレベルな決勝を大久保は「本当に恐ろしいレベル。僕たちが頑張っている以上に他大学も頑張っていた。決勝での走りは見事というしかない」と語る。それほど、この決勝は近年まれに見る一戦となった。
▲ゴール直後、バトンを手に腰を下ろす大久保
昨年の優勝時、4継メンバーにチームのことについて聞いてみると「和気あいあいとしていて最高のチーム」という声が返ってきた。そして、今年もその固い絆は変わらないどころか、それをしのぐほどの信頼関係を築いていたという。「チームがずっといい雰囲気だった」と染谷がいえば、大久保も「過去最高に仲が良くて、それが予選からタイムに出ていた。だから本当に負ける気がしなかった」と誇らしい表情を浮かべる。チーム間での揺るがぬ信頼が、彼らの強さにつながっていたのだろう。言葉をつむぐ際、大久保の目から流れ落ちる大粒の涙がそれを物語っているようだった。
全日本インカレ七連覇という記録を残すことはできなかったが、記憶に残るレースとなった今年の4×100㍍リレー。この雪辱を晴らす舞台は来月に行われる日本選手権リレーだ。今大会で最後の全カレとなった宮城と大久保も、もう一度中大のユニフォームを身にまとうことになる。4継メンバーの誰もが今回の敗戦を受けて、『このままでは終われない』という強い気持ちでいることは間違いない。「日本選手権リレーでは学生記録を狙いにいきたい」(宮城)。次世代へとバトンを渡す前に、また『最高』のチームで表彰台の頂を目指す。
◆コメント◆
宮城
「ブロック長の立場として、こういう結果となってしまったことは今まで連覇してきた先輩方に申し訳ないという気持ちです。自分の役割を果たしきれなかったのかなと思います。この大会に向けて特別なことは何もしていないですけど、リレーのバトンパスは力を入れて繰り返し練習してきました。僕は体の状態がずっと良くない状態で、それをだましだましやってきてしまいました。それでも、今回のレースは本当に後悔はなくて全部出し切れたと思います。日本選手権リレーとまだ個人の大会もあるので中大記録更新のために頑張りたいです」
染谷
「自分のエース区間で思うような走りができなくて、負けにつながってしまいました。2走でしっかりリードできれば良かったのですが、めちゃくちゃ悔しいです。気持ちも体も仕上がっていたのですが、それ以上に周りが速かったですね、力負けです。バトンパスは週に2回くらい4人で集まってやってきました。結構そこはしっかりできてたと思いますが、それよりも走力で負けてしまいました。自分は種目が200㍍なのですが、リレーは走る距離が100㍍。いっぱい大会があった中でちょっとまとめきれなかったと思います」
飯塚
「悔しいというよりあれだけ応援してもらって、スタッフやマネージャー陣のサポートもあったので最後笑って終われなかったのは本当に申し訳ないという気持ちです。七連覇という重圧はなかったですし、むしろ連覇してきた先輩たちに力をもらっていたという感じですね。3位という結果にうれしさは全くありませんし、1位以外は一緒。単純に走力がまだないので、もっと練習して他大学に負けない走りが今後できればいいなと思います。日本選手権リレーでてっぺん取って、4年生に笑顔で引退してもらいたいです。来年は僕たちの代なので歴史のスタートを切りたいと思っています」
大久保
「悔しくて言葉になりません。本当にみんな頑張っていたけど、とんでもないことが起きましたね。(筑波大の)大学院生の力は半端ないです、6年間の思いをぶつけられました。学生歴代4位の記録を出しても勝てないハイレベルなレースを全力で戦ったということに後悔はありませんが、やっぱりアンカーである僕がみんなを優勝に導きたかったです。自分は高校時代にインターハイに出ていないし、全く才能がありませんでしたが、努力して日本一を経験することができました。自分はこの大会で引退することを実は本気で考えていたのですが、日本一になれなかったので10月の日本選手権リレーでもう一度日本一を取るのが次の目標かなと思います」
◆お知らせ◆
次なる戦いの日本陸上競技選手権リレー競技大会は10月26日から27日にかけて福岡県北九州市立本城陸上競技場にて行われます
記事・写真:「中大スポーツ」新聞部