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【オフシーズン企画~縁の下の力持ち特集~】第3回・小林大也(学生コーチ)

2023年、春季リーグは5位、秋季リーグは3位と優勝には届かなかった中大野球部。ドラフト会議で指名を受けた西舘勇陽(法4=花巻東)と石田裕太郎(経4=静清)をはじめとする強力な投手陣が卒業する中、櫻井亨佑(商3=習志野)新主将のもとに新たな戦いがスタートしている。今回はそんな選手たちを陰からサポートするスタッフの方々の声を全4回に渡ってお届けする。第3回は小林大也。来季より学生コーチとして中大野球部、悲願の優勝に向けて新たなスタートを切る。学生コーチ転身を決意した理由、家族に伝えた言葉、ベンチから後輩の活躍をどのように見ていたのか。小林の「今」の思いに迫る。(取材、構成=松岡明希)

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──今年1年を振り返って
「今年は年始最初の1月くらいに『スタメンマスク』という目標を立てました。しかしキャンプ中にけがをした所が再発して出遅れてしまい、春は悔しい結果に終わってしまいました。夏のオープン戦でしっかり結果を残そうという思いがありましたが、なかなか思うようにいかず、ベンチに入ることはできたけれどもスタメンで出ることが出来ませんでした。総じて悔しい1年となりました」

──野球を始めたきっかけは
「小学2年生の時に、地元のソフトボールチームに兄が入ることになりました。その流れで私もチームに入ることになって、気が付いたら兄と一緒に野球をやっていました」

──ポジションはどこをされていたか
「小学生の時に、興味本位で捕手になりましたが、そこから捕手一筋です。小さいころから、祖父がジャイアンツの試合をテレビを見ていたことが影響から坂本勇人選手(読売ジャイアンツ)に憧れて、ショートをやりたかった時期もあります」

▲捕手として多くの投手の球を受けてきた小林(写真は本人提供)

──捕手のやりがいは
「試合に携わる機会がピッチャーと同じくらい多いところです。ピッチャーとうまく意思疎通を図って勝てた時にやりがいを感じます」

──ピッチャーとの意思疎通を図る際に苦労した部分は
「なかなかお互い人間で、自分のプレースタイルはあるから、そこで配球が合わず、打たれてしまったときにはやっちゃった、悔しいと思っていました。ピッチャーとコミュニケーションをとるときは苦労しました」

──意見が合わないときにはどのように合致点を見つけていくのか
「基本的には、試合を振り返って話し合いをする感じです。投手とお互いの意見を言って、『次からこうしよう!』と食い違いをなくすように意識していました。中大はブルペンでも試合を想定して練習しています。試合さながらの雰囲気で、捕手もサインを出して投手に首を振られると『今のはこうだ』といった話もしました」

──お手本にした捕手は
「結構多いんですよね。今パット思いつく選手は福井章吾選手(トヨタ自動車)です。体も私と同じくらいでキャプテンシーのあるプレースタイルが好きでお手本にさせてもらっていました」

──プライベートと野球は分けて考えるタイプか
「1人の空間で基本的には野球のことは考えないようにしています。寮ではなく、通いなので、1人の空間ではリラックスできるという点は大きなメリットです」

──高校野球の思い出
「普通の県立高校(福島県立郡山高校)出身なのですが、1年生の春の最初の試合から試合に出させてもらいました。そこで得たものが大きくて、先輩方にも助けられていろいろ経験させてもらいました。高校2年生の夏の福島商業戦は23年ぶりのベスト8をかけた戦いでした。毎年ベスト8の壁に阻まれていましたが、チーム一丸となってシード校に勝てたことは一番印象に残っています。その試合で今の4年生の学生コーチ、渡邊直紀(経4・福島商業)さんと対戦して、そこで勝って、同じ大学に入れたということもすごく縁を感じます。高校3年生の時はコロナで悔しい思いをしたので思い出というよりは悔いが残ることが多かったです。総じて自分自身成長できたのが高校野球をやっての思い出になります」

──中大に入ったきっかけ
「中大の指定校推薦があって、(中大は)野球も勉強も力を入れていて文武両道だから、そこに入学したいと思って入学しました」

──大学でも野球を続けようと思ったのは
「純粋に自分自身の力を試したいと思いました。高校時代は試合に出れていたけれども、全国レベルは経験したことがありませんでした。全国レベルに自分の身を置いたときにどこまでやれるのかを純粋に試してみたいというのが続けるきっかけになりました」

──不安はあったか
「だいぶありました。周りの選手を見ても甲子園に出場した名だたる選手も多くいて、本当にやっていけるのかなという不安しかなかったことを覚えています」

──中大野球部の第一印象は
「まず思ったのが『みんな体がでかいな』ということです。高校野球ではそんなに大きな人いなかったけれども大学に入ったらみんな180cm超えていて、縦も横もでかくて圧倒されてしまいました」

──すごかったなと感じた選手は
「古賀悠斗(令4卒=埼玉西武ライオンズ)選手です。同じポジションということもあって、投げる能力、打つ能力がずば抜けていて圧倒されました。私に、『キャッチングを教えて』と聞かれたこともあって、下の意見も聞いて自分に取り入れる柔軟さがある方なんだとびっくりしました」

──4年生との思い出は
「ピッチャー陣は特にお世話になりました。練習中にもよく話しかけてくださったり、優しくしてもらったりして大好きな先輩だったのでいなくなるのが悲しいです」

▲大好きな先輩と共に声援に応える小林(写真:高梨晃世)

──選手生活を振り返って
「貴重な経験をさせていただきました。入った当初は本当にメンバーに入れるのか、まずやっていけるのかすら危うくて、レベルの高さに圧倒されました。そこから何とか自分のアピールポイントを自分なりに考えて、『守備』をしっかり磨いて試合に出られたことは大きかったです。今まで試合に出られなかったことがなかったから、その中でもどうしたら自分を生かすことが出来るかを考えられたから、今まで経験できなかった大きな財産となり、とても濃い選手時代でした」

──学生コーチのお仕事は
「朝、本部に行って監督コーチと一緒に練習メニューを決めます。そのあとはノックを打ったり、バッティングピッチャーをしたりなど選手のサポートが仕事です。監督やコーチの目が届かないところで、選手目線ではなく監督コーチ側で、かつ選手との距離感は測りつつも、選手の気持ちもわかるから、選手とコミュニケーションを取りつつ上と下の仲介役をしていきます。試合中は学生コーチは計4人いるので、1人はベンチに入って監督が決めた選手交代を選手に伝えます。私は捕手だからブルペンキャッチャーとして、投手の球を受けて、その投手の調子を監督やコーチに伝える役職を担う予定です」

──学生コーチへの転身、決断の経緯は
「もともと大学4年間で野球を終わろうと思っていました。秋季リーグ戦が終わった後の練習で、監督やコーチから『学生コーチやってくれないか』と言われました。活動をしながら選手を続けるという選択肢もあったけれども、まずは最高学年となって自分がどのようにチームに貢献できるかを考えた結果、学生コーチをやることが今チームから必要とされていることだと考えて、学生コーチになる決断をしました」

──家族には何と伝えたか
「学生コーチをやることになって、選手はもう終わるんだということを電話しました。『もう一度メンバーとして入っているところを見せたかったからごめんなさい』と言ったけれども、お父さんもお母さんも『やりたいことを頑張って』と伝えてもらったから、悔いなく学生コーチに移れるきっかけになりました。両親の後押しで決断をすることが出来ました」

──仲間からは
「『まだやれたんじゃないか』とも言われました。キャプテン櫻井からは「学生コーチでよろしく」と、3年生から学生コーチをやっている山下拓真(経3=磐田東)からも『一緒に頑張ろう』と声をかけてもらい、頑張ろうと決めました」

──今の気持ちは
「完全に吹っ切れて、自分に与えられた立場を全うしようという気持ちです。監督やコーチからの信頼も置かれないと言われない役職とも聞いたから、監督コーチも選手を見極めて自分に声をかけてくださったのだと思っています」

──2年生捕手陣の活躍をどう見ていたか
「悔しい思いはもちろんありました。自分も試合に出たらこれ以上の活躍をしてやる!と思っていました。野呂田(漸=文2・秋田中央)と綱川(真之佑=経2・健大高崎)は1個下だけどかわいい後輩です。プライベートから、特に野呂田は毎日話すほど仲がいいから、悔しさもありましたが、そこは認めるというか。なんでこいつ出てるんだよとかはならなかったです」

▲中大野球部を捕手として支えてきた(写真は本人提供)

──学生コーチになるにあたって意識しようとしていること
「選手とは違ったポジションだから、選手とは同じ目線ではいられないと思っている。練習メニューが辛かった時に、練習キツイと言ってしまうと選手のモチベーション維持が難しいだろうから、心を鬼にして、選手を成長させたいという気持ちを持って選手との距離感を大切にしようと思います。基本的にはバッテリーを見る学生コーチだから、捕手がより一層成長できるように練習メニュー考えたいと思うし、自分に伝えられることがあるかわからないが、あったら下の学年や選手に伝えていきたいと思っています」

──座右の銘は
「継続は力なり。これに尽きると大学時代痛感しました。プロに進む選手も毎年見させてもらって、他の選手ももちろん練習しているけれども、他の選手以上に、日が暮れるまで練習しているのが印象的で、プロに行く選手は違うなと感じました。継続することが一番だと思います。一番大切にしたい言葉です」

──中大野球部の強みは
「繋ぐという言葉をテーマに頑張ってきて、一人一人同じ方向を向いて頑張ろうと日々の練習からしています。今秋、結果として優勝はできなかったけれども、15試合戦い抜いてチーム打率も良かったし、防御率もすべての試合3点以内というチームとしては良い結果でした。一人一人の力を結集させてチームとして戦っていくという繋ぐこと、団結力が中大野球部の強みです」

──中大野球部に足りない部分は
「チャンスでの1本、ピンチでの1球の重みというのがまだ足りないかなと。東都は1部2部入れ替え戦とか日本一厳しいリーグと言われている中で1球に対する思い、執念がないとすぐにやられてしまうことを大学3年間通じて痛感させられました。優勝できていないところから1球に対する思いがまだ足りないのかなと思っているから、1球に対してこだわっていけるように頑張っていきたいです」

──期待している後輩は
「野呂田です。綱川からレギュラーを奪ったのがすごいです。キャッチャーというポジションはなかなか出られないポジションだから、2期連続レギュラーの綱川から奪うということは監督やコーチからの絶大な信頼を得ているし、その中で結果も出しています。ベストナインに近い活躍をしてくれたから来年こそは扇の要として、野呂田を中心に投手陣も引っ張って行ってほしいという願いも込めて野呂田にしました」

──期待している投手陣は
「今村(拓哉=文3・関東第一)、美又(王寿=商3・浦和学院)です。どちらもケガをしてしまいましたが、どちらもすごいポテンシャルを持っていて、球を受けた時は衝撃を受けます。この2人の活躍が必須ですし、チームを引っ張るのは4年生です。この2人には特に頑張ってもらいたいです」

──新チームの雰囲気は
「櫻井中心に元気があります。上も下も分け隔てなく、同じ方向に向かってという意識が見られます」

──新幹部はどんな人
「私の中では櫻井はもちろんですが、野手だったら聖(山本聖=文3・鹿屋中央)とかはチームを引っ張って行こうという気持ちが強く感じられて来年やってくれそうだなと伝わってきます。1,2年生の時には見られなかった聖の姿が見られているからとても楽しみです」

──3年生はどんな学年
「個の集団で、自分勝手なやつが多くて、一人一人のクセが強いです。いろいろなキャラがいて、まとめるのが難しいですが、その中でも団結力はあります。学年が上がるにつれて団結力があがってきているから、大好きな学年です。ラストシーズンはみんなで頑張りたいです」

──来年の意気込みを
「リーグ戦優勝、日本一という目標はぶれずに行きます。力がない世代ともいわれているから団結して覆したいです。学生コーチとしてチームにとってプラスになるような練習をという仕事も頑張りたいです。選手とコミュニケーションを取りながら新しい中大のチームカラーを作っていけたらなと学生コーチとして思っています。学生コーチとして頑張ります!」

◇小林 大也(こばやし・ひろや)◇
学部学科:経済学部・経済情報システム学科
出身高校:郡山高校

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