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山本哲央 4年間の感謝と世界への挑戦について思いを語る/インタビュー後編

年間通して最大の目標であるインカレが終わった。トラック大会では9種目中7種目での優勝と圧倒的強さを見せた中大。その中でも特に輝きを見せたのはエースの山本哲央(経4)だ。4年間の集大成となる戦いを終え、今後自転車競技界を背負う日本屈指の大器が、ロングインタビューに応じた。4年間共に戦った仲間たち、自転車競技の奥深さ、そして五輪、ツール・ド・フランスについて―。(聞き手、構成:辻市雄大)

▲今期ブリヂストンに加入した山本

山本哲央 4年間の感謝と世界への挑戦について思いを語る/インタビュー前編  はこちら

 

大きな夢を語ってくれた。

「まずは世界基準のレベルのロードレースを走って勝つのが目標。2024年にはパリ五輪も控えているので、それまでにきっちり世界のレースを勝てるようにベースを作っていくのが今の目標です」

3年後の五輪の舞台を見据える。しかし山本の目はさらに先を見ている。

「五輪を走れれば、ツール・ド・フランスとか海外の大きいレースにも出れるんじゃないかという考えがあるので、五輪だけじゃないですけど海外の一流のプロたちと肩を並べるのが目標」

世界最高峰のロードレース大会であるツール・ド・フランス。毎年1000万人以上もの観客が詰めかける夢の大舞台だ。憧れの選手を聞くと、今年世界を沸かせた名前が次々飛び出す。

「今は今年ツール・ド・フランスで優勝したポガチャル選手であったりとか、東京五輪で2位だったウァウト・ヴァンアールトっていうベルギーの選手ですけどその人であったりとか、イタリアのフィリッポ・ガンナ選手とか」

挙げればキリがない。ただ世界の最前線で活躍する選手の走りを見て感じることがある。

「あっちは人間じゃないようなことをやってるので、まだまだ人間のできる範疇でやってる僕は弱い」

『弱さ』を自覚する。憧れで終わりたくはない。

「日本全体のレベルで見てもヨーロッパ諸国に比べるとまだまだ低い事は間違いないので。やっぱりツール・ド・フランスで戦うような選手たちと比べると全然違うなという感覚はある」

▲レース開始直前の山本(左)

さらなる高みを目指す山本にとって自転車とは

「自分の価値観とか生活感を変えてくれて、これからも変えてくれるもの。これからも大きく変えられることがおそらくあるんでしょうけど。そういう自分の生き方とかを変えてくれる道具、変えてくれるものですね」

人生を大きく変えてくれた自転車の存在。これからも山本の進化には必ず自転車が寄り添うだろう。

では山本にとって中大自転車競技部とは。

「やっぱり同期は4年間本当に一緒の空間で過ごすので、人生で忘れられないというか、ずっとこの先も関わっていくんだろうなっていう同期45人が生まれる場所」

最高の仲間と過ごす最高の時間。人数が少ないからこそ強い結束が繋がる。それは卒業した後も変わることはないだろう。もちろん同期だけではない。

▲集合写真を撮る中大自転車競技部。1番右が山本

「後輩もやっぱり沢山できて後輩先輩と関わりが増えて、長い人は3間ほんとに親と同じ位過ごすというか、親の次ぐらいには絶対に人生の中で関わる。その中で仲の良い空気、人数が少ないので凄い強いつながりが生まれるっていうのが中大の自転車競技部に入って良いことなのではないかな」

まつわるすべてに感謝した。

さらなる高みを目指して今日も自転車を漕ぐ山本。ただ時に自転車競技者でいることに苦しみを感じることがある。

「今は練習が理論的なことを言うと関節に負荷がかからないので、陸上とかと違って練習量がとにかく確保できる。特殊な競技特性があるので、他の競技と比べてもとにかくきつい」

▲インカレ、マディソンで力走する山本(右)と中村(左)

山本の『強さ』の背景には練習がある。漕ぎ続けなければ負ける世界。それは時に苦痛として選手を襲う。では何のために自転車を漕ぐのか。

「勝った時の喜びというか、特にロードでレースですね。100人200人近く出走してその中で5時間という長い時間戦って、一人が勝つという競技。その時の勝った喜びっていうのは悪い言い方で言えば、中毒性があるというか、すごい大きい喜びで達成感を感じる。そこが自転車競技の魅力なんじゃないかな」

勝利への執念。それは今年の神宮クリテリウム大会でのインタビューでも感じた。山本はその大会で2位と好成績。しかし取材エリアでは開口一番、「悔しい」と思いを吐露。山本の勝ちに対するこだわりが間見えた瞬間だった。

これからも勝利に向かってひたすら漕ぐ、ただそれだけだ。

「それまでの過程がほんとにきつい競技なので勝った時の喜びは格別」

自転車競技が盛んなヨーロッパに比べると、日本の競技人口はまだまだ少ない。ただ苦難を乗り越えた先にある歓喜には、どのスポーツにも変え難い奥深さがあると信じている。

世界の大舞台、山本が今までで一番の笑顔を見せる。いつか来るその日は、日本の自転車競技への愛が深まる特別な転換点になるだろう。

 

 

インカレトラック大会の記事はこちら

山本とブリヂストンでも交流の深い今村駿介氏のインタビュー記事はこちら

「中大スポーツ」2021年9月号では1面、2面にて自転車競技部の活躍を掲載しております。この記事では触れていない山本の高校時代についても紹介しています。詳細はこちら