11月1日(土)、2日(日)に第103回全国学生相撲選手権大会が大阪府の大浜公園相撲場で行われる。1日目は個人戦、2日目は団体戦がそれぞれ開催予定だ。
今年度は東日本インカレ3位から始まり、金沢大会では準優勝、そして十和田大会ではついに栄冠をつかんだ。勢いそのままに迎える今大会、彼らが見据えるのは団体優勝しかない。市川主将をはじめとする中大相撲部は、その目標に向かって日々稽古を重ねている。
そんな彼らの姿を追い、インカレまで3週間と迫った10月12日(日)に練習を見学。その後、ベンチ入りメンバーに取材を行いました。彼らの熱い思いを、それぞれの言葉でお届けします。
○団体戦スタメン
先鋒 竹田連汰朗(法2)
二陣 市川太陽(法4)
中堅 山田晴ノ介(法1)
副将 田村吏玖(法4)
大将 兼田尚柔(法2)
の布陣で挑む。
<吉野一颯(文4)>(聞き手:小林想)
ラストイヤーを迎えた吉野。40分にも及ぶ取材で語ってくれた「相撲への覚悟」は誰よりも熱い。小兵ながらも「体格差を言い訳にしたくない」という信念で、鋭く踏み込み低い当たりで相手に挑む。相撲人生で得たすべてを、インカレにぶつける。
▲低く鋭くが持ち味(左)
―今日の練習はハードでしたね
「練習プラス、そこから優勝するための持続力・持久力・筋力も含めてですけど、精神的なことも考えてくださって、OBの方はじめ監督さんもいろんな考えをやってくれてるので、そこは感謝したいですね。けどハードでした(笑い)」
―たくさんの練習が必要になる
「団体戦の集中力であったりとか精神力・技を練習で養っていかないと。相撲の内容っていうのが求められてくるし、実現しなきゃいけない」
―強豪校への壁はあるか
「彼らは穴がないので、穴がないとは言いつつ、隙はあると思ってるので。そこにうまく食い込んでいけば面白いことが起きるんじゃないかなと思います」
―他大学からのマークもある
「全部研究されてると思って、それを踏まえてかかってこいぐらいの気持ちで、なおかつチャレンジャーとして挑めればいいかなと思います」
―市川キャプテンの強み
「彼は誰が見ても惚れるような肉体。恵まれているし、さらに根性があるので。なんとしてでもっていう、がむしゃらさがすごく出てるので。彼と団体戦組んだ時は何かやってくれるだろうなって、頑張ってくれるだろうなっていうのは期待をしてしまうし、彼自身も彼が勝って1勝したいっていうのはすごくあると思う」
―背中で引っ張っていくタイプに見える
「あんまり感情とかを表に出さないような子なので寡黙なイメージがあるかもしれないですけど、内に秘めてるものっていうのは、とても熱いものがあるのかなって思うんです。これは田村(吏玖、法4)も一緒で。彼も普段は感情的にはならないですけど、2―2の大将戦、金沢とか十和田とか、自分が勝った瞬間にあそこで感情を爆発させるっていうのはかっこいいなって思うし、僕も憧れるなって思います。市川がキャプテンで良かったなって思いますね」
―チームは爆発したら強い
「みんなが1つになって爆発力があったら、どこの大学も止められないと思いますし、圧勝して優勝できるんじゃないかなってすごく思いますね」
―吉野さんの起用も見どころ
「誰かの代わりに自分が入るってなった時は、代わりに確実に1点取らなきゃいけないと思ってますし、チームの雰囲気をもっと底上げしてあげなきゃいけないかなっていう風に、すごく責任感やっぱ感じますんで、そこはもしかしたらあるかもしれないですね。起用されたら僕は全力でやらせていただきます」
(取材中にも、選手たちは和気あいあい楽しんでいた)
―この明るさが良いですね
「わかります、そういう雰囲気の良さがすごくやっぱ今年はいいと思いますね」
―去年も(雰囲気は)良かったが
「去年まではもしかしたら相撲クラブだったかもしれないですね。今年は相撲部なのではと。団結力でどんな相手でも食い込むっていう相撲、そして前で相撲取るっていうのは、みんなそれぞれが考えてると思ってるので。僕だったら、何かしてくるんじゃないかって思わせたいので、人がやらないようなことをやって、それを見せつけられたらいいなって思いますね。相手の印象にも残りますし」
―自身の課題は
「最後の最後で決めきれないっていうのが、僕の課題なのかなって。特に感じたのは拓大の時のリーグ戦かな、あれは出てしまったなって。そこはどんな形であろうとも、見てる人たちを沸かせる相撲を取りたい。これは徹底してモットーとして」
―自分の持ち味は改めて何か
「僕は声かけ、雰囲気作りっていうのをすごく大事にしてて。僕が出なかった試合とかいっぱいあるんですけど、前後でも声をかけて『自分でできるから、大丈夫大丈夫』っていう風に声かけて。雰囲気やムードが壊れてしまったら、一気にやっぱ流れも悪くなってしまうので、僕の仕事はそれだと。僕も自分の相撲を磨いて、勝ちに行くっていう1番です。意識してやりたいなって思ってます」
―あっという間にインカレです
「負けられないですね、楽しみです。もう楽しみでしょうがないです。腹括りました。やってやらなきゃいけないしね、引っ張っていかなきゃいけない。1年生も良い子入ってきたんでね」
―集大成でもあります
「1年生の時からずっとですが、インカレで団体優勝、そして個人も優勝することです。ここはずっとみんなが思ってることだし、負けられないところなので。その信念を持って4年間やってきたので、ここに思いをぶつけて優勝してきます」
<兼田尚柔(法2)>(聞き手:松岡明希)
高校時代から竹田とともに切磋琢磨してきた。今年は団体戦の大将を任される勝負強い男。昨年に続きインカレ出場を果たすなど、経験も十分。
▲勝負強さが光る兼田(右)
ープロフィール、身長体重は
「身長183センチで体重130〜140キロ」
ー好きな食べ物も
「山岡家です、力の源(笑い)」
ー今日の稽古はどのくらいの強度
「今日は普段よりは結構きついですね。大体2時間ぐらいで、多分2時間以内でシャワー浴び終わってるくらいです」
(稽古場にはモニターがあり、15秒遅れで相撲を確認することができる)
ーあの導入は大きい
「すぐに確認できるっていうのは結構良くて。今何で負けたのかとか、どうやって勝ったのかとかがわかる。それがいいですね」
ーあれ見て監督からアドバイスは
「『今ってどうだった?』って言われて。やってる時って考えてられない人も多いんで、そしたら動画見て『あ、ここね』ってなるんでいいですね」
ー指摘されたところは
「今日は結構調子良くて。試合でこれできたらだいぶいいんじゃないかなっていうぐらいのいい日だったんで、多分ないと思います」
ー去年もインカレには出場
「出たんですけど、去年は膝の靭帯を切ったまま出てたんで」
ー切ったまま出てた?
「繋がって、なんかちぎれちゃって稽古で。でも痛くなかったんで普通にやってて。インカレの後に手術してっていう感じ」
ー万全の状態で出るインカレ、どういう舞台
「本当に最後、4年生だったら引退試合。年間で1番大きい試合。4月からシーズンが始まって、11月まででどう仕上げていくかの集大成の試合がインカレなんで。みんなどこの大学もそこに照準合わせてるんで、厳しい戦いではあるんですけどね」
ー稽古でこの人との取り組みは力が入るなどはある?
「やっぱり竹田(連汰朗)は高校から、高1のずっと弱い時期から一緒にやってきてるんで。勝ったり負けたりではあるんですけど、あんま負けたくはないです」
ー彼のいいところは
「向こうは結構ガンガン攻める系で、僕は受けてうまさで相撲取るタイプ。タイプが別物なんで、その分いい感じな稽古ができるんで力が入っちゃいます」
ーベストフレンド
「友達との割合は、競技中なんで全然、ライバル8割9割です(笑い)」
ー大きい人と小さい人はどちらがやりやすい
「大きい相手の方がやりやすいんですけど。自分結構このサイズでコンパクトな相撲を取るんで、ちっちゃい相手からしたら嫌だとは思うんです」
ーインカレの目標を
「稽古もちゃんとできてて、内容も良くて。なので怪我しないことだけ。いいチームなんで。それでまた挑めたらいいなって思ってます」
<竹田連汰朗(法2)>(聞き手:小林想)
本紙9月号の一面を飾った注目力士。兄は十両14枚目(令和七年十一月場所時点)の若ノ勝。
豪快な突っ張りを武器に、前へと攻める相撲が持ち味だ。先鋒としてチームに勢いをつけることが期待され、その一番が流れを左右する。個人戦でも上位進出が狙える選手。
▲本紙9月号の一面を飾った竹田
▲突っ張りが持ち味の竹田(右)
ー連続10番で相撲とっていた
「足に力が入らなくなるので、きついっす」
ー週何回練習している
「今日みたいな稽古週6ですね。週1回は授業で茗荷谷に」
ー授業日はしばしの休息か
「授業パンパンに入れてるのであんまり休めないですね。ここ(多摩)から茗荷谷なんで」
ー1年の成長は感じている
「大会で今年は結果が出てるんで、それが自信に繋がってますね」
ー引いてしまうことは課題
「全員に言われるんで、今日来てる人とかにも気を付けないと言われてるんで。意識して練習して、しかないですね」
ー突っ張り相撲が魅力的、昔から?
「最初空手やってて。そっから相撲を始めたんですけど、お母さんが空手のグーをパーにするだけだよって言われて、そこから突き相撲やってる。自分と兄がいるんですけど、兄もそれと同じで突き相撲なんですけど、それで母にそう言われて突き相撲始まったっすね、小学生の頃に」
ーお兄さんの存在は刺激的か
「僕と違ってめちゃくちゃ強いんで。あんま気にしたことはないですけど、尊敬はしてます」
(本紙記者が秋場所、現地でお兄様の相撲を観戦したことを話すと)
「え!行った日は、誰でした?」
ー北の若さんだった
「じゃあ負けましたね。でも5勝2敗で良かったっす。自分も1回だけ場所見に行って、自分も負けたっす行った日(笑い)」
ーちなみに何日目に
「五島さん(改名して藤凌駕)に負けた、12日目」
ー大相撲は結構見られますか
「見ますね。けどあんまり上は(幕内)見ないっす。幕下らへんが結構面白い。関取になるならないが好きなんで」
ー突き押しでお手本にされてる方は
「それこそ兄貴のは結構参考にしてます」
ーお兄さんは湊川親方(元大関・貴景勝)系の突き押しが魅力
「ずっと付き人していて。兄貴は常盤山部屋で、貴景勝の内弟子で」
ーインカレ後の天皇杯にも出場予定
「初めてなので、ベスト8入りたいですね。幕下付け出しもらえるので。結構下がったんですよね、資格もらえるのが」
ー将来的にはいろんな道が
「そうっすね、色々。自分は大学行かせてもらってるので、色々な選択肢があるかな」
ーご家族が全試合観戦に来られている、ご家族は全員身長が大きい
「母も170cmくらいあるので、みんな背は高いですね」
ー家族へメッセージ
「感謝はありますね。いつも毎回全国なんて大変じゃないですか、ありがたいですね」
ー新聞はどうでしたか。
「すごい喜んでました!」
ーインカレの目標は
「インカレ団体優勝。個人は行けるとこまで行けたらいいなぐらいで。団体優勝目指してます」
<山田晴ノ介(法1)>(聞き手:髙木麻央里)
名門・埼玉栄から加入した期待のルーキー。明るい笑顔と人懐っこい性格でチームにもすぐに溶け込んだ。土俵上では鋭い技と粘り腰が光り、土俵際に追い込まれても最後まであきらめない。初のインカレでも、その勝負強さに注目が集まる。
▲ルーキーながら団体戦スタメン起用を勝ち取った
―あと2週間です
「体調に多少不安が。ちょっとずつ直していって、インカレに間に合えばいいかなって思ってます」
―インカレに向けての練習は
「入学してからずっと立ち合いをしっかり当たるように監督に言われてて、ちゃんと立ち合いは当たれるようになってきたのかなと。ずっと受けで反るだけだったので、最初の立ち合いだけでもとは。後、体重増やすように言われてて。まあそんな増えてないんですけど頑張ります、これからもうちょっと」
―今日は突っ張りの練習をしていたように見えた
「OBの方がやってみろということで昨日言われて、やってみたんですけど上手くない(笑い)。やっぱり組み相撲のほうが得意なんですが、色々練習していきます」
―感覚は違う
「全然違いますね。組みの方がやっぱり安定するんで、むずいですねー突きは」
―4年生はこれで引退です
「太陽先輩(市川主将)は高校の時被ってはないですけど、一緒で。みんなお世話になってるんですよ、田村さん、一心さん、吉野さん。なので優勝を支えられたらなと思います」
―インカレの目標
「団体戦は、優勝できるチームだと思ってるんで優勝したいと思ってます。個人戦は行けるとこまでで、団体に全力でいけたらなと思ってます」
<市川太陽(法4)>(聞き手:髙木麻央里)
主将として1年間、チームを背中で引っ張ってきた。練習でも試合でも常に先頭に立ち、仲間から厚い信頼を寄せられる存在。最後のインカレは「市川主将のために」─そんな思いがチーム全員の胸にある。誰よりもチームを愛し、仲間に慕われた男が最後のインカレで頂点へ。
▲1年間背中で引っ張ってきた
―チームの雰囲気は
「めっちゃいいですよ、竹田くんを中心にめっちゃいいです」
―練習は何をしてきた
「自分、絶対落とせないんで、ひたすら勝つための稽古をしています」
―コンディションは
「最後なんで一生懸命。100%ではないんですけど、95%ぐらいです」
―インカレの目標は
「団体優勝ですね」
―4年間の集大成です
「それ意識しちゃうと緊張しちゃうんで、意識しないのも良くないんですけど、あんまり意識しないでとりあえず優勝することを目標にやります」
▲本紙9月号を手にとる相撲部の選手たち
練習後には、選手たちが和気あいあいと談笑する姿が見られた。厳しい稽古を乗り越える中で培われた絆こそ、このチームの最大の強みだ。互いを信じ、支え合うそのチームワークは、すでに日本一といっていい。あとは大浜の地で、努力の結晶が実を結ぶ瞬間を待つだけだ。
(記事:小林想)
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