今年の箱根駅伝を13位で終えた中大陸上競技部。約1ヶ月後には2020年以来の箱根予選会、そして予選会の約2週間後には全日本大学駅伝を控える。今夏は高地トレーニングや距離を積ませる練習をより強化している。エース級の選手に中間層や下級生を加えた「戦える全体層の厚さ」がこれからの駅伝シーズンには不可欠な要素となってくる。西湖で夏合宿に参加した選手たちは今どのような思い、またプランを掲げてこれからの駅伝シーズンへと挑んでいくのか、インタビューを行った。【全5回】
第2回は先日中大記録を塗り替えた岡田開成(法1)と10000㍍自己ベストの大幅更新を実現した藤田大智(文2)。(取材は9月8日に行いました)
岡田開成(法1)
1人目は、スーパールーキー・岡田開成(法1)。5月の関東インカレ5000m6位入賞、6月のU20日本選手権5000m4位、そして7月末の中大記録会で3000mの中央大学記録を更新するなどまさに勢いのある1年生だ。
▲7月末の中大記録会では3000mで中大新記録を樹立
「全員が上をみて練習しているので一緒に練習させていただいて気持ちよく走れる。全員が同じ方向を向いているので楽しく走れるという感じです」3月の新入生取材の際、岡田は中大陸上競技部についてこのように語った。大学生となり約半年、自身の競技に対する心境の変化について尋ねると、「先輩が大きな目標を立て競技に臨む姿勢を見たことで自分の目標のスケールが大きくなった」と話す。結果を示した前半シーズンについては「トラックがメインだったがいい流れを作ることができた。PB更新や3000mの中大記録更新も最低限やりたいなと思っていたがもう少しやりたい部分もあった」と振り返り、現状に満足しない姿勢を見せた。
夏合宿には前半シーズンにたまった疲労を完全に抜き切った状態で臨むことができたと言う。8月上旬から始まった夏合宿を通してハーフマラソンといった長い距離への対応、ラストスパートの強化を目的として掲げ、練習に励んだ。夏合宿ももう終盤。現状について問うと「距離を踏んだことでハーフに対する自信もついた。ラストスパートも冷静に走ることで磨きをかけられた」と答え、充実さを垣間見せた。また、この西湖の選抜合宿には多くの1年生が参加しており、同期の活躍もいい刺激になっているようだ。意識する選手には並川颯太(法1)、佐藤大介(文1)、原田望睦(文1)を挙げた。「並川はずっと一緒に切磋琢磨してきたので負けたくない。佐藤も原田も調子いいのでそこも負けたくない」と語る。
▲左から岡田、柴田大地(文2)
約1ヶ月後に箱根駅伝予選会を控えている中大。これは岡田にとって初のハーフマラソンになる。「自分のペースで刻んで誰に仕掛けられても対応する走りをする。初ハーフではあるが日本人トップを目指す」と闘志を燃やす。さらに予選会の約2週間後には全日本大学駅伝を控えている。「1区は磨いてきたラストスパートを一番発揮できると思う。そこで区間賞をとってチームに流れを作りたい」と目標と希望区間を明かした。
そして最後に箱根駅伝についての思いを尋ねた。「自分は1年生ではあるが、1年生という枠にとらわれず、中央大学の主力としてチームに貢献できる走りがしたい。」と強い覚悟を見せた。「先輩方は強いが2区を走って1年目からいい経験を積みたいのでそれに向けて頑張っていきたい」と熱い思いを吐露した。貪欲な向上心を持ちながらも冷静に目の前のことに取り組んでいく岡田。駅伝シーズンも主力としてチームに貢献する走りを見せてくれるに違いない。
藤田大智(文2)
2人目は今夏はじめの網走記録挑戦会にて自身の持つ10000mの記録を約30秒近く更新し、驚異的な成長を見せた藤田大智(文2)。本人もその記録更新について「狙っていたタイムが出たので、そこで自信をつけられた」と手ごたえを感じており、良いシーズンの折り返しだったと振り返る。
今年の一連の夏合宿では、体力面に並行して「精神面の工夫」に励んでいたと語った。合宿内では普段よりも長い距離を走ることが多く、藤田は終始同じモチベーションを保つのに苦戦していた。その悩みを監督やトレーナーへ打ち明けると複数の解決策を提案された。「とりあえず10km、10km走ったら15km」と区切って気持ちを維持するなど、自身に合う方法を試しつつ練習に取り組んだことで、結果的に距離を多く踏むことができた。既にあるフィジカルに気持ちの変化を加えたことが、より練習の質を向上させることにつながった。「だいぶまとまった走りができていると周りの人からも言われることが増えた」と収穫を感じていた。
現時点で全日本インカレの出場を予定している藤田は入賞を目標に調整しており、「5000m、10000mと繋いでいき、もう1段階スピードを上げた状態で冬のハーフに向けての体を作っていく」と大会の位置づけを語った。
中大にとって久しぶりの箱根駅伝予選会。藤田は「自分だけのレースじゃない」と意気込む。「(部員の)3分の2は走れないので、その人たちのためにもチーム目標に集中していきたい」と仲間を思う気持ちを述べた。
▲5000mは約6秒、10000mは約30秒も自己ベストを更新した藤田
最後に箱根駅伝への思いについても尋ねると、「今年は絶対チャンスだと思っていて、任された区間で全体3位以内をキープして狙っていきたい」と意欲をにじませた。
前半戦の飛躍を自信に付け、現状に満足せず、意識的にメンタル面の改善にも取り組む藤田。後半戦に対しても「楽しみ」と肯定的に捉えている。今夏の努力がインカレや予選会、三大駅伝で結実することを願うばかりである。
(取材・記事:大畠栞里、大日方惠和)