今年の箱根駅伝を13位で終えた中大陸上競技部。約1ヶ月後には2020年以来の箱根予選会、そして予選会の約2週間後には全日本大学駅伝を控える。今夏は高地トレーニングや距離を積ませる練習をより強化している。エース級の選手に中間層や下級生を加えた「戦える全体層の厚さ」がこれからの駅伝シーズンには不可欠な要素となってくる。西湖で夏合宿に参加した選手たちは今どのような思い、またプランを掲げてこれからの駅伝シーズンへと挑んでいくのか、インタビューを行った。【全5回】
最終回、第5回は藤原正和駅伝監督。(取材は9月8日に行いました)
▲西湖合宿でランニングをする藤原監督
充実した上半期
3000㍍で岡田開成(法1)が、10000㍍では溜池一太(文3)が中大記録を更新するなど、躍動した上半期について「関東インカレも全種目入賞を目指して達成できて、男鹿駅伝も優勝。ホクレンと学連記録会もそこに向けて作っていた層が結果を出してくれたので、非常にうまくいったかなという印象です」と手応えを感じた様子。また、下級生の躍動についても「菅平合宿終わって、まとまって強いなというのが明確になり、男鹿駅伝や学連の記録会で結果を出してきたので、ちょっと他の世代とは違うなと感じました。それは上級生も感じていたとは思いますけど、タイムと同時に勝負強さもかなりある世代なのでなかなか面白い一年生が揃ったなという感じです」と高く評価。
アメリカで合宿を行った並川颯太(法1)、七枝直(法1)の二人についても言及し、一年生を送る意図は監督自身の経験にあったことを明かした。「僕自身が五輪に行けなくて世界選手権止まりだった。なぜ五輪に行けなかったか考えて、若年層の段階でどこの国でもいいから外を見る機会を作って『もっと英語を喋れたほうがいい』とか、なんでもいいから感じることで生き方とか行動が変わったのかな、その部分が足りなかったかなという思いがずっとあった。本間の世代と並川の世代はかなりいい練習をして帰ってきているので期待したい」と、笑顔で今後の期待を語った。西湖合宿に一年生を多く参加させた意図については、「上の世代の練習の様子を学ばせるために連れてきた」というが、「5人ぐらい予選会メンバーに入ってきてもおかしくないレベルです」と、想像以上の充実ぶりがうかがえた。
中間層の底上げ
昨年から藤原監督が言葉にしていた「中間層の底上げ」への意識について問うと、「非常に強いです。戦える人数が20人なのか25人なのか、あるいは30人なのかで大きく変わってきます。今年は25から30くらいに近づけられそうな雰囲気はあるので、非常に強化はうまくいっている印象」という。昨年は「中間層」として浦田優斗(経4)、吉中祐太(文3)を挙げており、それぞれ三大駅伝デビュー。今年中間層として期待する選手は「佐野(拓実・経4)はキャプテンとしてもう一段階突き抜けてきてほしいなというところ。本間(颯・経2)もタイムは出していますけど冠大会の強さとか練習での安定感は乏しいので、もう少し突き抜けてきてほしいかなというところですかね。逆に一年生が非常に元気なので、上級生もぼちぼちしていたらやられるぞということはかなり発破かけています」と、チームを支える主将と下級生の柱として活躍する二年生、それぞれの名前を挙げた。
チームの柱
チーム全体を支える選手としては「実業団で合宿させてもらっている吉居(駿恭・法3)に関してはかなり復調してきたので当然柱になってもらわないと困ります。溜池がもう一人のエースになったなというところで二人のエース。活躍してもらわないと困るという意味では二年生の柴田(大地・文2)、一年生の岡田ですね。学年の主軸として活躍してもらいたい。予選会は四年生の活躍が大事な大会になるので阿部(陽樹・文4)と山平(怜生・法4)、園木(大斗・法4)ですかね、この三人の頑張りが非常に予選会で重要になってくると思います」と、各学年の期待する選手の名前を挙げた。予選会から全日本に向けての体づくりは十分にできているとしたうえで、「主要区間でフレッシュな選手が必要になってくると思うので、吉居あたりを主要区間でフレッシュな状態で使いたい」と目算を立てており、区間配置のおおよその組み方については、「出遅れると駅伝にならないので、1区・2区・3区に良い状態の選手を置いて、7区・8区にできるだけ長いのに強くてフレッシュな選手を置きたい」と考えていることを明かした。また、予選会通過後に待つ箱根駅伝本戦で大きなカギとなる山区間について、上りの5区は複数準備させるつもりである一方、下りの6区は昨年浦田が走っており、加えて昨年準備をしていた佐藤蓮(法2)がいるため、大きな変化をさせる予定はないと語った。
▲主将の佐野(左)と副主将の山平
三週間後に迫った箱根駅伝予選会をはじめ、下半期も中大が注目を集めることは必然。期待のルーキーからチームの柱まで、中大は記録や順位を狙える選手が揃い、各選手の活躍が選手選考で監督を多く悩ませるだろう。駅伝シーズンがいよいよ幕を開ける。
(記事・写真:遠藤潤)