1月2日
東京・大手町~神奈川・箱根芦ノ湖
ついに幕開けしたオリンピックイヤーの2020年。そんな記念すべき年の始まりを告げたのは『超高速化』した箱根駅伝だった。
各校のスピードランナーが集った1区では優勝候補の一角であった東洋大が遅れるというまさかの事態。最後までハイペースを刻んだ米満(創価大)が区間記録に迫る勢いで鶴見中継所に飛び込んだ。そんな高速1区で、千守倫央(商1)は先頭集団に食らいつき10㌔の通過が自己ベストを上回る28分台と速いタイムで通過した。後半は集団から離されるも、自身の持てる力を出し切り川崎新太郎(経3)へとタスキを繋いだ。
▲大役を全うした千守
2区を任された川崎は持ち味の淡々とペースを刻む走りで69分1秒と事前の目標タイムを上回る走りを見せた。川崎からタスキを受け取った三浦拓朗(商2)は前半から積極的に飛ばし順位を上げた。藤原監督も「3区から反撃を開始したかった」という言葉通り、徐々に中大は順位を上げていく。三浦は終盤ペースを落とすも、前に選手が見える位置で先輩の池田勘汰(商3)へとタスキを繋いだ。
▲粘りの走りを見せた川崎
▲序盤快調に飛ばす三浦
池田は前回に続く4区出走。前回の経験を生かし、前半は落ち着いた走りで徐々に前の大学を追い抜いていく。中継所手前では東洋大に迫り15位で同学年の畝拓夢(法3)にタスキを託した。畝は「ずっときつくて本当に辛かった」と5区を振り返るも順位を2つ上げる区間9位の好走を見せ、明日の復路でのシード権奪還に向けて希望を繋いだ。
▲力強い走りを見せる池田
▲ゴールテープを切り天を仰ぐ畝
箱根全体を振り返ると、2区では学生長距離界のエース・相澤(東洋大)と今季急成長を遂げた伊藤(東国大)が互いにしのぎを削る展開となった。相澤はモグス(山学大)が2009年に樹立した区間記録を上回る1時間5分57秒という驚異の走りで塗り替えた。3区ではヴィンセント(東国大)が59分台と区間新記録を更新すると、続く4区の吉田祐(青学大)も区間新記録をマーク。さらには5区も宮下(東洋大)が粘りを見せて区間新記録を打ち立てるなど、全体的に非常にレベルの高い駅伝が繰り広げられた。
3年ぶり4回目の往路優勝を果たした青学大は5時間21分17秒でゴール。それから10分23秒遅れて中大は13番目に芦ノ湖へとたどり着いた。シード権獲得ラインとなる10位の拓大との差は2分31秒。まだまだ巻き返しのチャンスは残っている。明日の復路ではどんな熱い戦いを見せてくれるのか。選手の笑顔が輝いていることを想像しながら大手町でその到着を待ちたいところだ。
◆コメント◆
藤原駅伝監督
――レースを振り返って。監督の思い通りにいきましたか
「うちの子たちは、我々が設定していたタイムより1分くらい早く来てましたし、目指してた走りはしてくれたのかなと思います。でもやっぱり、周りが良いタイムをバンバン出してきていますので、これからまた色々考えていかなきゃいけないと思います。明日、森凪也(経2)をあえて7区に残してシードの執念を見せようと思っているので、何としても凪也、矢野(商3)で10位圏内に入りたいという思いが強いですね」
――今回の区間配置の意図や戦略を教えて下さい
「1・2区で遅れるのは、ある程度今年は仕方ないのかなと。昨年のように大エースが2人いるわけではないので。それを3〜8区でどれだけ挽回できるか。それで9・10区でどれだけキープできるかが勝負というところです。みんなしっかり突っ込んで我慢して、最後の2・3キロでもうひと絞りできるようになると良いなと思います。そこの練習を1年かけてやっていかなければいけません。4年生が1人も往路出てない中では、よく粘ってくれたかなというところですかね」
――2区で川崎選手が粘りの走りを見せましたが
「あくまで想定通りですけど、周りが良かったので、これで良いとは言えないかなってところではありますね。また本人は来年もやりたいと言っていますので、昨年の堀尾くらいは走れるようにやっていきたいですね」
ーー運営管理車ではどのような思いで5人の選手を見ていましたか
「千守に関しては、ハイペースの中よく11、12キロまで付いていったなと。そこで、離れてからも粘ってくれていましたので、1年生で今日になってからかなり緊張していたんですけど、よく乗り越えてくれたなと。2区に関しては逆に去年(川崎選手が10区で)走ってて安心感を持って送り出しましたので、そこはよく仕事してくれたかなと。3.4.5区は、反撃というところがありましたので、やはり駅伝は流れというものがありますので、想定通りではあるんですけど、全体が速いので、流れがあまりこう詰まってこないという焦りもある中で、最後突っ込んで我慢して、最後もう一度絞ろうとして絞りきれなかったのが拓朗かなと思います。池田と畝に関しては、しっかり仕事をしてくれたかなというところで、非常に頑張ってくれたと思っています」
1区 千守倫央(商1)
――1年生ながら1区起用となりましたがいかがでしたか
「箱根の2週間前の合宿で12㌔の本番を見据えた実践的な練習で、そこで自分がうまく走れて。チームで2番目で、もともとは1区か復路の8区かだったんですけど、そこで走れたので監督に1区で行こうと言われて1週間前に決まりました。1区走れたらいいなっていうのもあったので、自分が1区と言われたときはプレッシャーというか、本当に1区なんだなと緊張した部分はありました。でも、もともと1区を走りたかったので、心の準備はしていたため、そこまで驚くということはなかったですね」
――スピードランナーたちとの1区でしたが
「当日変更で青学の吉田圭太さんが入ってきて、ハイペースになるだろうなってのは思っていました。構えてはいたんですけど思ったよりハイペースで。でも、予測はしていたのでなんとか対応はできたかなと。後半10㌔過ぎてからハイペースになって離れてしまいました。そこから自分のペースに切り替えて最低限粘れたかなと思います」
――他校の選手との競り合いはいかがでしたか
「自分はもともとスタート前の目標タイムが1時間3分30秒で、区間10番〜12番あたりを予想していました。タイム的には1時間3分27秒で目標タイムはクリアしてるんですけど、全体的にレベルが上がってるので最低限度は走れましたけど、他の大学との力の差を感じてまだまだだなと思いました」
2区 川崎新太郎(経3)
――エース区間の2区での起用となりましたが
「12月中旬くらいに2区に決まりました。そんなにプレッシャーは感じずに走れました」
――1、2区は全体的に例年よりも早いペースでしたが
「予想してたというか、高校駅伝も見てて昨日のニューイヤーも高速になってるんで、そういう流れでは来るだろうなって思っていました。だけど、自分ができることには変わりがないので自分の目標タイムの70分て言われてて、70分切れるくらいでいければいいなって走り出しました。周りはみんな絶対(タイムが)インフレするだろうなって思ってたんで、そこに対しての驚きはないです」
――周りからの2区を走る上でのアドバイスを何か貰ったりしましたか
「堀尾さんには走る前にアドバイスを貰ったり、OBの方、今実業団で走っている方にも貰いました。監督も2区を走っているので、監督は『俺で行けたんだから、お前も行けるよ』って。堀尾さんはラストはどれくらいで止まるかとか、坂はどれくらいの力で迎えたらいいかとか堀尾さんから一番アドバイスを貰いましたね」
――今日レースプランとレースを振り返っていかがでしたか
「シードと3分っていうのがチームの目標だったのでそのチームの計画に沿った内容で帰ってきたいなっていうのはありました。最後の坂は堀尾さん曰く絶対止まるって、僕は余力残していったつもりだったんですけど、ラストはやっぱり脚力がもたなかったです」
3区 三浦拓朗(商2)
――今日のレースを振り返っていかがでしたか
「同級生(遠藤・帝京大、手嶋・明大など)たちも走っていて、二人とも区間一桁台だったので、同じ学年といえどレベルの差を感じるレースでした。前にまずはつくことを考えて行ったけれど、もう少し冷静でも良かったかなと思っています」
――監督から事前に言われたことは何かありますか
「3区からがもう一つのスタートと思って、気を固めて行くようにと言われました。運営管理車からは『お前のリズムで良いから』と。最後ペースがあまり上がらず落ちていく中で、『良いリズムだ』と自分の走りを評価されたのは自信になりました」
――昨年は直前の発熱で箱根出走できませんでしたが、今年の初の箱根はいかがでしたか
「昨年度は28分台が消えたり、風邪で箱根が走れなかったりだったんですけど、今年は自分の中で絶好調でした。今までで一番良い状態でこれたので自信を持ってスタート地点に立ちました。それでも、1区にしろ最後の5区にしろ、青学の飯田や明治の鈴木、1区の中谷(早大)など同期の活躍がすごいので今のレベルでは到底敵わないと思いました。自分もやってやろうという気持ちが込み上げてきました」
――明日の復路の選手にメッセージをお願いします
「焦らずに自分の力を出して、一歩ずつ確実にシード権に近づいて欲しいです。最後はしっかり笑顔で、帰ってきた選手を称えたいと思います」
5区 畝拓夢(法3)
――レース振り返っていかがでしたか
「東洋大の選手と一緒にスタートしたんですけど、ハイペースでそれでいきなり自信喪失してしまいました。序盤から自分が想定していたよりも速いペースで入ってって、山入ってから止まって、そこからもう一回立て直してと粘るだけのレース展開でした。下りに入る時にもハムがつりかけてて、それでうまくペースをあげられなくて順位を落としてしまった。そこは年間通して走り込みができてないのでそれが響いたのかと思います」
――周りから期待され、重圧との戦いもあったかと思いますが
「プレッシャーとの付き合い方は全然うまくできていませんでした。本当に緊張していましたし、うまく体の調子が上がってこない感じで不完全燃焼になって期待にはあまり応えられなかったですね。来年リベンジするかはまだ分からないんですけど、凪也を押さえてしっかりとエースになりたいと思います」
――今日のレースプランはいかがでしたか
「72分をターゲットにしていて、前半から突っ込むことをレースプランにしていました。それはできたんですけど、そのあとの展開が…っていう感じでした。下りの切り替えがあんまりできていなかったので、それが課題かなと思います。ずっときつくて体感的には区間15番くらいかと不安に駆られながら走っていました」
――今後、そして来年への意気込みを教えて下さい
「今年は7割方の復活って感じだったので、来年は完全復活したいです」
*池田選手は芦ノ湖に間に合わなかったため、後日コメントを掲載致します。
◆大会結果◆
往路13位 5時間31分40秒
1区 千守 1時間3分27秒 区間16位
2区 川崎 1時間9分1秒 区間17位
3区 三浦 1時間3分32秒 区間12位
4区 池田 1時間2分51秒 区間11位
5区 畝 1時間12分49秒 区間9位
◆お知らせ◆
明日、3日に選手たちは復路(芦ノ湖~大手町)を駆け抜けます。みなさまの応援よろしくお願いいたします
記事・写真:「中大スポーツ」新聞部