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“興國のブスケツ”湯谷、大学でのプレーは「やっぱりボランチで」ーサッカー部・湯谷杏吏

2021年5月19日 

今季もJリーグのクラブユースや全国の名門校から粒揃いの選手たちが中大へと入学する中、リーグ戦で最も早いデビューを果たしたルーキー湯谷杏吏(商1)。関東リーグ第3節東京国際大戦で後半途中から出場し、大学でのキャリアをスタートさせた。プレースタイルが、同じポジションの名選手、セルヒオ・ブスケツ(FCバルセロナ)を彷彿とさせることから、「興國のブスケツ」とも評されるその才能はとどまる所を知らない。

中大のユニフォームに袖を通した湯谷

2回の挫折

サッカー人生のスタートは小学校。彼の名前「杏吏」は父親が好きだったイタリア代表の愛称「アズーリ」に由来している。兄の影響でサッカーを始めると、3年生の時にその実力を見出され、サンフレッチェ広島のジュニアユースへと加入。しかし、「半月板のけがや脳震とうになったりして思うようにプレーできなかった」と、自分の持ち味を出せずに苦戦した。プロへとつながるユースへの昇格を逃し、ここで1度目の挫折を経験する。

その後は両親が大阪出身ということもあり、名門・興國高校へ進学。目標である「高卒プロ」に向けて多くの試合に出場し、Jクラブからの評価を日に日に高めた。だが、プロ行きがかかる高校最後のインターハイは新型コロナウイルスの影響で中止。代替大会が開催されるも、十分なアピールをすることはかなわず、これが2度目の挫折となった。

卒業後の進路についてはJFLクラブから好条件のオファー提示があったものの、中大の練習への参加をきっかけに入学を決意。高校との力の差を痛感すると同時にレベルの高さにも魅力を感じたという。「3度目の正直へ」。夢のプロサッカー選手に向けて大学での歩みをスタートさせた。

興國高校でプレーする様子

得意のパスで

湯谷の持ち味は状況に応じて右足から自由自在に放たれる精度の高いパス。縦パスで攻撃のスイッチを入れるために、自主練からスピードを意識している。

さらに、「(一般的には)パスを出す前に相手の位置を見ておくように指導されるが、自分はできるだけ見ずに間接視野で相手に読まれないようにする」と、パスの質そのものだけではなく、得意のパスを通すためのこだわりもある。リーグ戦開幕前の練習でもダイレクトでテンポの良いパスワークを披露してくれた。

「(興國は)プレーに色々工夫をしないと生き残っていけない環境だった」。恩師である内野監督(興国)のテクニックを重視する考え方や、同期で寮の同部屋でもあった樺山諒乃介(横浜FM)のプレーにも強く刺激を受けたという。昨季も5人のJリーガーを輩出した部員100人を超える強豪校での競争を「工夫」で勝ち抜き、試合に出場し続けた。

入学後の練習の様子

課題は守備か

攻守においてチームへの高い貢献が求められるボランチ。そんなポジションを本職とする彼は大学で活躍するためのポイントの1つとして「守備」を挙げた。自身でも「体の強さや守備への意識が評価にもつながる」と、その重要性を理解し、現在は走りの練習にも精力的に取り組んでフィジカル面での強化を図っている。

その一方で、ただ体を強く当ててボールを奪うだけではなく、味方を動かしたり、良いポジショニングを取ってパスカットを狙うなど守備でも頭を使うことを重視。ウィークポイントを補うための工夫も怠らない。

担うは中盤の底

高校時代はダブルボランチの一角としてプレーすることが多かった湯谷。中大では4−1−2−3のシステム上、アンカーとしての出場が求められる可能性が高いが、高校1年次にもアンカーとしてのプレー経験があるため不安はないという。

だが、長所であるパスを生かすための1列前でのプレー可能性については「3年生の時は一個前でもやっていたんですけど、やっぱりボランチでやりたいですね」と一蹴。普段から遠藤保仁(磐田)やフレンキー・デ・ヨング(FCバルセロナ)などの動きを参考にしているという湯谷は、自陣から組み立てて試合を作る今のポジションにやりがいを感じているようだ。

中大のサッカーにおいてもパス回しの緩急を付けたり、スルーパスで好機を演出するなど、ビルドアップや攻撃の詰めの部分で「ゲームメーカー」としての働きが求められる。

リーグデビュー戦(4月24日、会場非公開)

大学での活躍へ

「トレーニングの中でやれていたので、使うなら今日だと思った」。(佐藤監督)チームに合流してから約1ヶ月、出番はすぐにやってきた。3節の東京国際大戦で、後半22分に投入されてから終了までの23分間プレーしたが、試合は劣勢の中で1点のリードを守り切る難しい展開。ゲームメイクやパスなど得意な部分を発揮できず、彼の本来のプレーとはかけ離れたものであった。

それでも、試合後佐藤監督は「最初からやれていたらJリーグに行っている。反省して次につなげて欲しいし、次節以降出場の可能性も十分にある」と、彼の可能性への期待を口にした。ここまで出場機会はこの1回に留まっているものの、大学でのキャリアはまだスタートしたばかり。次の出場機会にも注目したい。

高校時代にはそのパスで興國高校を初の選手権出場にも導いた湯谷。今度は「中央のブスケツ」となり、チームに勝利をもたらせるか。夢のJリーグに向け、期待のルーキーが定位置に食らい付く。

 

◇湯谷 杏吏(ゆたに あずり)◇

生年月日:2002年7月8日(18歳)

学部:商学部

身長・体重:180㌢・70㌔

経歴:サンフレッチェ広島ジュニア(広島市立祇園小学校)→サンフレッチェ広島ジュニアユース(広島市立祇園中学校)→興國高等学校

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写真・記事「中大スポーツ」新聞部、写真提供 中央大学サッカー部