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表彰台に一歩及ばすも、「中間層」に確かな手応え─第55回全日本大学駅伝対校選手権大会

▲フィニッシュ直前の阿部

2023年11月5日 愛知・熱田神宮~三重・伊勢神宮

学生三大駅伝の第2戦、第55回全日本大学駅伝対校選手権大会は目標として掲げた優勝・表彰台には惜しくも及ばず4位に終わった。昨年6区で区間記録を樹立した吉居大和(法4)が区間11位と苦しんだ一方、初の三大駅伝出走となった吉中祐太(文2)が区間4位、本間颯(経1)が区間5位に入るなど下級生が地力を発揮した。(記事:遠藤潤、日向野芯 写真:牧島駿太、二村沙羅、片岡芹菜、井口縁、功刀萌恵、琴寄由佳梨、日原優、藤本佳野、山﨑響、要明里沙)


◆大会結果◆
①駒大  5時間09分00秒
②青学大 5時間12分34秒
③国学大 5時間12分39秒
④中大  5時間12分49秒

1区 9.5km  吉居駿恭(法2)27分22秒 区間3位
2区 11.1km 中野翔太(法4)31分32秒 区間6位
3区 11.9km 吉居大和(法4)34分33秒 区間11位
4区 11.8km 溜池一太(文2)34分32秒 区間3位
5区 12.4km 本間 颯(経1)36分38秒 区間5位
6区 12.8km 吉中祐太(文2)37分58秒 区間4位
7区 17.6km 湯浅 仁(経4)51分12秒 区間2位
8区 19.7km 阿部陽樹(文3)59分02秒 区間4位

大会2日前に発表されたメンバーエントリーで各大学のエース級の選手が前半区間に多く配置された今大会。当日変更を含めた戦略に注目が集まり、溜池一太(文2)もその一人として挙げられた。大会前日の監督会見で、藤原正和駅伝監督は「中盤区間でどこかに溜池を入れようと思っていますので、投入をしたあたりでできるだけアドバンテージを取りたいと考えています」と戦略的な配置をほのめかした。

▲前日会見での藤原監督

当日変更で藤原監督は宣言通り、4区に溜池を投入。前半3区間を終え、想定通りに溜池に渡せない苦しい展開となったが、戦略が功を奏した。溜池は、区間3位・4人抜きの好走で3位まで順位を大きく押し上げた。

また、今回が三大駅伝初出走となった5区・本間颯(経1)について「暑さがあって難しいレース展開ではあったと思う。最後2㌔を絞り出せなかったのは、まだ10㌔以上のレースをした事がなかったので課題ではあると思うが、初レースで緊張してる中よくやってくれたと思う。100点をあげたい」、同じく初出走の6区・吉中祐太(文2)については「もしかしたら区間賞取れるかもというくらい自信を持って配置したので結果には驚きもない」と二人の奮闘ぶりを振り返った。

終盤の2区間は、藤原監督が「湯浅と阿部が一番練習できた」と状態の良さを語った湯浅仁(経4)が区間2位、阿部陽樹(文3)が区間4位と安定した走りを披露した。阿部は青山学院大・國學院大と三つ巴となったラストスパートに競り負けたものの、果敢に仕掛けるなど積極性を見せたレースとなり、シード権獲得となる4位でゴールテープを切った。

藤原監督が「昨年は失敗した」と語っていた出雲駅伝後の調整については、「去年失敗したので今年は抜かりなくやってこれたかなと思います。粘り強く繋いでくれたので全体の調整としてはうまくいったかなと思います。」と語り、昨年よりも良い状態で今大会に臨むことができた様子だった。

▲中盤区間の鍵となった溜池

全区間最短のスピード自慢が集う1区は吉居駿恭(法2)が序盤からハイペースで引っ張る展開。5㌔手前で青学大若林がスパートをかけ抜け出すも、「先頭集団でレースを進めて、先頭と秒差で渡すっていうことが自分の中のレースプランでした」と冷静な走りを見せ、3位で襷を渡した。箱根駅伝に向けては、「長くなるので自分としては苦しくなる」と懸念するものの、「集団で走れたら、そんなにトラックと変わらずに走れるんじゃないかな」と自己分析している1区で優勝への火付け役となることを志している。

▲納得のいくレースができたと振り返る

東京オリンピック・世界選手権3000m障害で入賞を果たした三浦龍司(順大)、アジア大会5000m入賞から僅か4日後の出雲駅伝2区で区間賞の走りを見せた佐藤圭汰(駒大)など錚々たる役者が揃った2区は、中大からもエースの1人である中野翔太(法4)が出走した。「出雲で躓いてしまった部分があって、競り合うことで自信を回復させたいというところがあったので、そういう意味では十分に及第点をあげられる結果だったのかな」と藤原監督が振り返るように、順位を落としながらも各校のエースに粘り強く対応した。

▲2年ぶりに伊勢路を駆けた中野

3区は昨季三大駅伝で無類の強さを誇った吉居大和(法4)が満を持して、今季初戦のスタートラインに立った。入りの1㌔を2分39秒というエースのプライドを覗かせる積極性で、早くも前を行く東農大と青学大を捕らえた。しかし、「区間新記録を意識して走っていた」という3㌔過ぎから徐々にリズムが狂い、順位を落とす走りとなってしまった。「僕以外はしっかりとレースの反省というか、課題と考えていたところを修正できていた印象ですし、申し訳なさが強く残る」と肩を落とすも、「自分がしっかり次を走れれば優勝を狙えてくるなというふうに思います」と強気の姿勢を示した。1月2日、先頭で戸塚の坂を駆け登る姿に期待したい。

▲箱根に向け、「1ヵ月で2区を走れる状態にしたい」と語る

3区を終えた時点での順位は7位と、あわやシード権争いにも加わるかという境地を変えたのは、戦前に藤原監督がポイントとしていた中盤区間のランナーの走りだった。4区の溜池一太(文2)は持ち前の安定感を発揮し区間3位の走りでゲームチェンジャーの役割を果たした。5区の本間颯(経1)は暑さがあり難しいレース展開ではあったが、「緊張している中よくやってくれたので100点をあげたい」と評するタフな走りを見せたかと思うと、6区の吉中祐太(文2)は国学大と最後まで並走、最終的には区間4位で駆け抜け、上位前線の3位に息を吹き返した。

▲区間5位の力走をみせたルーキー本間

▲三大駅伝初出走となった吉中

コース全体の約35%を占め、例年数々のデットヒートが繰り広げられてきた後半2区間は今年も熾烈な2位争いがあった。2年連続の7区出走となった湯浅仁(経4)は2分40秒で1㌔を通過、4㌔過ぎに国学大平林に追いつかれるも、区間2位の走りで猛追し、2位青学大との差を37秒差から僅か8秒まで縮めた。8区では終盤まで3校のロード職人が火花を散らしたが、その均衡を破ったのは阿部陽樹(文3)だった。18㌔手前で仕掛けて2位に浮上しレースに揺さぶりをかけたが、他2校の意地のスパートの前に4位に終わった。

▲出雲に続き区間2位と大健闘の湯浅

頂点を目指しつつも3位以内を目標に臨んだ今大会、一歩届かなかった悔しさはあるものの、藤原監督は「1、2年生たちが今まで大和に頼り切っていたところを『次はやってやるんだ』という思いで走ってきてくれたので、チーム全体としては大きなプラスになった」と話すように、エースを支える土台は確かに築かれつつある。残り2か月。土台がより強固なものとなりエースクラスの足並みが揃ったとき、駒大の大偉業を阻止し記念すべき第100回の栄冠に輝くのは中大かもしれない。

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